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龍帝記  作者: 久万聖
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戦闘訓練

 岩山の皇宮最上部、大扉前。


「初めて来ますわね。」


 そう呟いたのは吸血姫ヴァンパイアプリンセスの異名を持つカルミラ。


「そうだな。そして、この大扉の中は神域か。」


 カルミラの隣に立つ鬼姫モミジ。


「ええ。そしてこの大扉を開けられるのは、古き神以外では龍人族ら極一部の眷属のみ。」


 艶やかな笑みを浮かべる夢魔ライラ。


 大きな羽音とともにやって来たのは翼人族アルテミシア。


「恐ろしいほどに厳重な結界ですね。」


 軽く大扉に手を触れながら、アルテミシアは口にする。


 階段を登ってくる複数の足音。


「サクヤ殿らが来たようだ。」


 モミジの言葉通り、やがて姿を見せたのはサクヤたち。

 サクヤとその二人の従者たるシズカとトモエ。

 新たな龍の巫女リュウネとその従者たるシブキとツイリ。

 デックアールヴのエストレイシアと、同じくデックアールヴでありリュウヤの最側近を自認するスティール。


 リョースアールヴのフェミリンスも来ている。


 そしてリュウヤ付き侍女長の天狗てんこう族キュウビと、秘書官長であるエルフのミーティア。


 アデライードとアルテア、ナスチャの人間族に、兎人族ラニャと獅人族カイオンに、熊人族アミカも来ている。


「遅れて申し訳ありません!」


 羽音とともに降り立ったのは、竜女族ヴィーヴルのウッザマーニとラージュン。


「あら?ルカイヤ様は来られなかったのですか?」


 サクヤの問いに、


「はい。陛下のお力は、若い者たちこそが知る必要があるだろうと、そう言われまして。」


 それは、ルカイヤら旧い世代の者たちは、この地での生活にある程度の道筋をつけたら引退するということなのだろう。


「そうですか。」


 サクヤはルカイヤの想いを想像する。


 だが、その想いも長くは続かない。


 大扉を開けることを望む声がすぐに出たからだ。


「それでは、この大扉を開けましょう。」


 サクヤによって開けられた大扉の中に、皆が入って行く。






 ☆ ☆ ☆






 中に入ると、


「遅かったのお。」


 そう声をかけられる。


「ギイ!アイニッキも。」


 ギイの声に驚くサクヤ。


「ワシらはリュウヤと一緒に来たからな。

 まあ、そんなことよりも、始まっておるぞ。」


 ギイが移した視線の先では、すでにリュウヤとハーディがそれぞれ手に得物を持って戦っている。


 リュウヤの手にはギイが打った長剣が握られ、ハーディは長大な薙刀様の武器を両手で構えている。


 互いの武器の利点を考えるならば、長い間合いを保ちたいハーディと、そのハーディの薙刀を掻い潜ってふところに入り込むのを狙うリュウヤというところだろう。


 だが、目の前で繰り広げられた戦いはそんな常識など通用しない。

 なにせ、見た目には可憐な少女であるハーディが、その長大な薙刀を棒切れでも振るうように軽々と振り回しているのだ。


 一方のリュウヤも、それまで一振りしか使っていなかった剣をもう一振り抜き、双剣で対応している。


「ほう?随分とついてこれるようになったものじゃな。

 ならば、もう少し揉んでやろう。」


 ハーディはさらに速度を上げる。


「まだ速くなるのか!?」


 トモエが思わず声をあげる。


「だけど、陛下はそれについていっている。」


 モミジの呟き。


「もう、何が起きてんのかさっぱりわかんねえよ。」


 ナスチャが呆れたように口にする。


 ナスチャの言葉、それはここに来ているアルテアやアデライードのような非戦闘員共通の思いだ。

 そして、これほどのことをして備えなければならないのかと思うと身震いをしてしまう。


「終わったな。」


 シズカの言葉。


 その言葉が示したのは、リュウヤの持つ剣の先がハーディの喉元を捉えた瞬間だった。

 リュウヤの勝利、そう思った時、


「ほう。身体は温まってきたようじゃの。」


 ハーディはそう言葉を紡ぐ。


「ま、まさか!?」


 ライラの驚愕した声。


「なんじゃ、お主らもそれが見たかったのじゃろう?」


 ハーディはそう言葉を発すると、その姿が揺らいでいく。


 そして次の瞬間、強烈な光の奔流がこの神域に溢れ出す。


 やがて失われていく光の後に現れたのは、本来の姿となったハーディだった。


「さてリュウヤよ。続きといこうか。」


 そう、リュウヤとハーディの戦闘訓練の本番は、ここからだった。


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