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龍帝記  作者: 久万聖
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食事会?

 ある日の夜。


 夜中に目覚めたサクヤは隣のベッドを見る。


「今夜も出かけているのですね。」


 そう呟く。


 そう、シニシャたちが帰国してからリュウヤは毎夜、何処いずこかへ出かけている。


 それが浮気などのようなものではないことは、その後のリュウヤの様子からよくわかってはいる。

 なにせ、傷だらけになって戻って来ているのだから。


 もっとも、その傷も朝の業務の頃には治癒しており、他の者にその痕跡はわからないのだが。


 ただ、そうは言っても気づく者はやはり気づくもので、長くリュウヤ付きの侍女を務めているアルテアや、同じく長く仕えているミーティアも何があったのかと気を揉んでいる。


 二人から相談を受けてはいるのだが、どうすればいいのか思い悩んでいるところなのだ。


 リュウヤに直接聞くのが一番良いのだろうが、はぐらかされた時に自分で対処できる自信がない。


 そうなると、誰かの知恵を借りることになるのだが、それができる人物は・・・・・・、いた。


 こういうときに一番頼れる存在、アイニッキが。


 そこでサクヤは、この日の昼にアイニッキの元を訪れ、その知恵を借りることにしたのだった。






 ☆ ☆ ☆






 リュウヤが、夜間に出かけていたことなど周りのほとんどの者たちに感じさせることなく仕事を終えると、アイニッキから食事に招かれる。


 アイニッキから食事に招かれるというのは、これまでもよくあったことなので、疑う気持ちなど微塵もない。


 そして、その食事会とでもいうべき場の扉をひらいたリュウヤは、そのまま黙って扉を閉め、回れ右をして立ち去ろうとして、できなかった。


 両脇をモミジとトモエにがっちりと抑えられ、正面ににこやかな笑顔のサクヤとエストレイシア、カルミラの三人に立ちはだかれて、そのまま食事会会場に押し込まれる。


 その場にいたのは、招待者のアイニッキとその夫ギイ。

 だが、そのギイはリュウヤを一瞥すると素知らぬ顔をしている。

 さらにアナスタシア。

 アナスタシアは、ごく普通に食事会だと思う思っているようである。

 さらにフェミリンス、アデライードとアルテミシア、ミーティア。

 ライラとウッザマーニに五大神の聖女も参加している。

 そしてなぜかハーディもいる。


 逃げられぬと悟ったリュウヤは、アイニッキに勧められるままに席に座る。


 そして料理を運んで来るのはキュウビとアルテア。


 わざわざこの二人を使っているのも、自分の逃走を許さないということなのだろう。


「これだけの面子を集めたというのは、どういうことなのかな?」


 ハーディがいる、ならば心当たりはひとつだけ。


「いえねえ。サクヤちゃんからリュウヤさんが夜中に出かけていると、そう聞いたものですから。

 リュウヤさんのことですから、どこかに浮気相手がいるということはないと信じていますけど、ご自身の口からはっきりと教えていただきたくて。」


 "浮気相手"という言葉に、サクヤの背後に控えるシズカの瞳がギラリと光ったように感じられる。


 シズカの瞳に肩を竦め、ハーディを見る。


「ハーディ、お前が説明すればすぐに終わったことだろう?」


 それに対して、


わらわは口止めされておるでの。」


 口止めしているのは他でもないリュウヤ自身。


「臨機応変という言葉を知らんのか、お前は。」


「知ってはおるが、妾にそれをさせるつもりか?」


「いや、いい。

 余計な尾鰭おひれを付けそうだからな。」


「よくわかっておるではないか。」


 大笑いするハーディを忌々しげに見ながら、


「ハーディ相手に、戦闘訓練をしていただけだ。」


 そう皆に答える。


「ハーディ様を相手に!?」


 驚くカルミラ。


「此奴は、五回に一回は攻撃を当てるぞ。」


 ハーディの言葉に、


「ハーディ様直属の眷属たる我ら吸血鬼ヴァンパイア一族でさえ、そのような実力を持つ者はおりませんぞ!」


 カルミラが身を乗り出す。


「騒ぐほどのことじゃない。所詮は訓練。

 相当に手を抜かれてのものだ。

 それに、俺が一度攻撃するのに奴は三度は攻撃してくる。」


 リュウヤの言葉に、今度はトモエが驚きの声をあげる。


「陛下がそこまで一方的に?!」


「大人と子供の差だな。」


 驚くトモエに、静かに答えるリュウヤ。


「そう卑下するものではないぞ。

 先程、カルミラめも言うておったであろう。

 吸血姫ヴァンパイア・プリンセスなどと言われておっても、妾に擦り傷ひとつつけることはできなんだのだからな。」


「いえ、正確にはハーディ様を前に、身体を動かすのがやっとでございます。」


 そう言って頭を下げるカルミラ。


 これでこの話が終わったと思った時、余計な言葉を言った者が現れる。


「カルミラ殿ほどの強者が手も足も出ない相手と、リュウヤ陛下の訓練とはいえ勝負。

 見てみたいものですな。」


 エストレイシアの純粋な好奇心からくる言葉。


 その言葉に固まるリュウヤと、"どうする"と言わんばかりの表情を浮かべるハーディ。


「それはたしかに見てみたいものです。」


 口々にあがる言葉。


 大きく溜息をつくと、


「わかった。どうせ今夜もやるつもりでいたんだ。

 見たい奴は、三時間後に大扉の前まで来い。」


 憮然とした表情でリュウヤは答え、皆は歓声を上げていた。



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