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龍帝記  作者: 久万聖
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エウドキアの帰国と新たな兆候

 至高神ヴィレ神殿の建設が始まる頃、シニシャとエウドキア、ナタリヤはセルヴィ王国への帰路に着く。


 予想以上の長居をしてしまったことを謝し、


「アナスタシアを大事にしてくださり、ありがとうございます。

 誤解からとはいえ、この国に来ることができて良いことばかり経験させていただきました。」


 そうエウドキアは挨拶をする。


「そう言ってもらえると、私としても嬉しい限りだ。」


 エウドキアの挨拶にそう応じると、傍に控えているフェミリンスから書類を受け取り、


「これは、龍帝国わがくににおける学校の教育内容をまとめたもの。

 すべてがセルヴィ王国に適合するものではないが、参考程度にはなるだろう。」


 そう言ってエウドキアに手渡す。


「よろしいのですか?」


「かまわない。我が国としても、まだ始まったばかりの制度だ。

 調整はまだまだ必要になるような、完成された代物とは言い難い。

 セルヴィ王国と、パドヴァ王国の双方からも色々と情報を交換しあえることもあるだろう。」


「なるほど。

 先日、陛下がお話になられた"互いに高め合う"とは、そういうことでしたか。」


「そのひとつではあるな。」


「わかりました。では、ありがたく受け取らせていただきます。」


 エウドキアはそう応じ、書類を受け取る。


「それから、その中には雪祭りの招待状も入っている。

 今度は、アナスタシアの他の兄弟たちも一緒に連れて来られるといい。」


「ありがとうございます。」


 その挨拶を後に、馬車へと乗り込むエウドキア。


「ナタリヤ殿にも、招待状を渡さねばな。」


 エウドキアに続いて馬車に乗ろうとするナタリヤに、雪祭りの招待状を渡す。


「ああ、シニシャの分もその中に入っているから、一緒に来るといい。」


「はい!是非とも伺わせていただきます!」


 元気な返事をするナタリヤと、それを聞いて渋い表情を見せるシニシャ。


 そのシニシャに小声で、


「手を出した以上、責任を取らねばならんよな?」


「!?」


 驚愕の表情を見せるシニシャの肩を軽く叩くと、


「それでは、また雪祭りの時にお会いしよう。」


 そう言って、その場を離れる。


「ああ、雪祭りの時にまた会おう。」


 シニシャの口調には、今度は遊ばれんぞという思いが込められている。


「お母様、叔父上様、ナタリヤ。またお会いしましょう。」


 アナスタシアは精一杯、大きく手を振って見送る。


 セルヴィ王国の一行が見えなくなると、リュウヤはアナスタシアの頭を優しく撫でる。


「寂しいか?」


 リュウヤの顔を見上げながら、


「少し、寂しいです。ですけれど、この国の方々は陛下をはじめ、皆さまとても優しくしてくれます。

 ですから、陛下が思われているほどは寂しくはありません。」


「そうか。」


 アナスタシアの表情は、嘘ではありませんと言わんばかりに明るい。


 リュウヤは、この笑顔を守らねばと思いながら、一緒に皇宮の中へと入って行く。






 ☆ ☆ ☆






 想定外のエウドキアらの来訪の余波で、溜まりに溜まっている書類の山との格闘が始まる。


「来客があったからといって、サボっていちゃいかんということだな。」


 自戒を込めて呟くリュウヤ。


「その通りですが、そのお気持ちをいつまで保っていてくださるかが、私としては心配です。」


 手厳しい秘書官長ミーティアの言葉。


 ミーティアを中心とする秘書官たちも総出で、書類の山との格闘をしている。


「ん?」


 一枚の報告書を見て、リュウヤの手が止まる。


 "神聖帝国に不穏な兆候あり"


 報告書の提出者はカルミラ。

 そして、同様の報告書がキュウビの名でも出されているのを発見して考え込むリュウヤを見て、


「おふたりを呼ばれますか?」


 ミーティアが確認する。


「呼ぶ必要はない。だが、継続して詳細な調査をするよう伝えてくれ。」


 リュウヤはそう命じると、さらにエストレイシアとモミジにも軍事行動の是非、そして作戦行動に入る場合の計画策定を進めるよう伝えることも併せて命じられる。


 それを受けて、カルミラ、キュウビ、エストレイシア、モミジらは行動に移していく。


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