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龍帝記  作者: 久万聖
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帰路

 

 リュウヤは築城工事の進捗状況の確認のため、現場へと視察に訪れる。


 工事の総責任者であるタルヴォから、その進捗状況の説明を受ける。


 エルフの使役する魔人形ゴーレムにより、大規模な堀の掘削工事が進んでおり、またその際に出た土を盛り固めて土塁を作り、その土塁を石で補強していく。


 魔人形ゴーレムでは出来ない細かな作業は、タルヴォらドワーフの指導を受けた人間たちが行っている。


 そして、この地にカルドゥハルとは違う国のドワーフがいることの確認をすると、タルヴォはバツの悪い顔をして、


「トライア山脈のカルドゥハル西方にある、バティア王国という国の出身のマティヌスという者でございます。

 非常に優れた技術を持つ石工でしたので、報告も入れずに雇ってしまいました。」


「そんなバツの悪い顔をしなくてもいい。

 優れた技術を持つ者なら、歓迎するさ。

 だが、給料はどうしているのだ?」


「そ、それは、本人が酒が飲めればいい、そう申しておりましたので、その・・・」


 どうやら、酒の現物支給で済ましていたらしい。


「その酒代は、誰が出していたのだ?」


「それは、私が出しておりました。」


 それを聞きミーティアを振り返ると、彼女は軽く頷いて傍に控えている秘書見習いの部下に指示を出す。


「まったく、報告を入れてくれれば酒くらい用意してやったというのに。」


 そう言うと、


「これまでにかかった金を、後で報告しろ。

 それと、そのマティヌスへの給料も出さねばならんだろう。

 それについても、後で報告するように。」


 そう指示をする。


「そのマティヌスに会ってみたかったが、忙しいなら仕方ないな。

 また、別の機会にしよう。」


 そう言って立ち上がると、それとほぼ同じタイミングで酒樽が三つ運ばれてくる。


「陛下、それはいったい?」


「どうせ、そのマティヌスの酒代でお前は飲めていないのだろう?」


「は、はい!ありがとうございます!」


 そうして、リュウヤは築城工事指揮所を後にしたのだった。






 ☆ ☆ ☆






 湖西岸に着いたのは夕刻手前。


 かつて、西方を探索するための拠点としていたこの場所は、今では湖を管理する竜女族ヴィーヴルの拠点のひとつとなっている。

 ただ、ここにいるのは竜女族だけではなく、湖港の管理をするドワーフや人間たちもいて、小さな港町のような装いを見せている。


 さらには、獣人族の国に何かあった時のための軍も、小規模ながら配されており、町の外では訓練も行われている。


 その訓練は竜女族が指導しており、その光景を見ると、少なくとも表面的には種族の融和が進んでいるように見える。


 リュウヤ一行を出迎えたのは、竜女族族長ルカイヤと、なぜかこの場に出てきているサクヤ。


「出迎えご苦労、ルカイヤ。

 それと、サクヤはなぜここに?」


「はい。それなのですが、実はセルヴィ王国から使者が来ておりまして・・・」


「セルヴィ王国から使者?」


 はて、なにか起きたのだろうか?

 エストレイシアやキュウビ、ライラからの報告はなにも無かったはずだが・・・


 不思議そうなリュウヤの表情を見て、


「アナスタシアが手紙を送っていたようなのですが、その中に誤解を招く表現があったらしくて・・・」


 サクヤがそう説明する。


「誤解を招く表現?」


「スヴィのことです。」


「スヴィのこと?」


「はい。陛下の養女となり、形式的にはアナスタシアにとっても娘となったことを知らせたところ・・・」


 ここでリュウヤは誤解の内容を理解する。


「なるほど、アナスタシアが子供を産んだと勘違いしたわけか。」


 苦笑するリュウヤと、同じく微妙な笑みを浮かべるサクヤ。


「使者は多分、シニシャだな。」


「よくおわかりで。」


「どうせ、誤解だと知っていながらサボるために買って出たのだろうな。」


 あの男の行動原理、いかに自分が苦労から遠ざかるか。


「今からでは夜間の航行になる。明日だな、シニシャと会うのは。」


 そう結論を出すと、サクヤは念話にて皇宮に残る者に通達する。


 そしてこの夜は、湖港の町で一泊する。



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