表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍帝記  作者: 久万聖
447/463

西方の状況

リュウヤは、蟲使い一族の族長アーグが来たことを確認すると、獣人族の族長たちとアレコス、マルヤーンを連れて別の場所にて協議を行う。


アレコスとマルヤーンは、ここにいていいのかと顔を見合わせるが、そのままこの場に残っている。


まずはアーグから、築城の進展状況の説明を受ける。


縄張り(城の設計図のこと)が完成し、一部の工事が開始されているとのこと。


それに関して、一部気になる報告があった。


それは、バトゥ王が治めるカルドゥハルとは違う国に所属するドワーフがやってきているということだ。

そして、工事に参加しているとのことなのだが、


「総指揮はタルヴォがとっていたな?」


ひとりのドワーフの名を挙げる。


「はい。違う国の出身であるのに、同じドワーフということで意気投合されております。」


「ほう。ならば、帰りに寄ってみるか。」


カルドゥハルとは別の国のドワーフに会う。

なにがあるのか楽しみではあるが、築城とドワーフに関する話はここで切り上げる。


そして本題である、神聖帝国との状況について熊人族グリフから説明される。


「誰かさんの手のものが、なにかやらかしてくれたらしくて、内部がかなり混乱しているようだ。

そのおかげで、こちらに手を回す余裕はないようだな。」


そのせいか、神聖帝国による経済封鎖もかなり緩んでいるとのこと。


完全に解除されているわけではないところに、神聖帝国の意地が見えているようにも感じる。


「それと、至高神ヴィレ神殿から出てきた者が何人かいたな。」


「至高神神殿から?」


少なくとも、神聖帝国帝都パルドビツェの神殿の教義では、獣人族は不倶戴天の敵であるはず。

その獣人族の地に、自分から選んで入ってくるというのは・・・。


「ついに始まったか。」


至高神神殿の分裂。

出てきたのは、いままで表に出て来なかった融和派だろう。


ようやく、至高神聖女派を立ち上げられるようになるが、その前に考えておかなければならないことがある。


「グリフ、お前たちは彼らをどうする?」


「そうだな・・・」


グリフは腕組みをして少し考え込む。


獣人族としては、長年の戦いで殺された者たちやその家族もおり、簡単には答えを出せそうにない。

怨讐の連鎖とは断ち切り難いもの。

だからグリフもおいそれとは答えることができない。


「全員、こちらに回すといい。

獣人族の国では、新たな火種になりかねんだろうからな。」


怨讐は断ち切り難い。

たとえ、神聖帝国から出てきた者たちが無関係だとしても、その国の出身というだけでその対象となり得るのだ。


そうなってしまえば、国内に火種を抱えることになる。


そしてもう一つ。


出てきた者たちの中に、工作員が紛れ込んでいる可能性。

内部から破壊工作などされては、たまった者ではない。


だから、全てを龍帝国へと回させる。


そうすれば、少なくとも獣人族の国への被害は抑え込むことができる。


「そうだな。それが一番いいだろうな。」


「ええ、それがいいでしょう。すでにピリピリしている者たちもいますから。」


羊人族サリュラがそう口にしたことで、それは決定される。


「あ、あの、陛下。」


アレコスが、遠慮がちに問いかける。


「私と、マルヤーンはここにいてよかったのでしょうか?」


「いてもらわなければならないな。いざという時、お前たちが、蟲使い一族とともに獣人族への援軍の第一陣となるのだからな。」


そのための顔合わせを兼ねていたのだと、アレコスとマルヤーンは気づいた。


そして、すでに龍帝国の一員として組み込まれていることを理解する。


「不満か?」


「い、いえ、そんなことはありません。」


リュウヤの言葉に、慌てて否定するマルヤーンだが、


「突然、そんなことを聞かされたら、そういう反応になるのも当然か。」


リュウヤはそう言って笑う。


そして、


「いや、突然のことだからな。嫌ならば、そう言ってくれ。

それは今でなくてもいい。

考えて、それで嫌ならばそれで構わない。」


その言葉に、再び顔を見合わせる。


「それでは、なぜこの場に我々を?」


マルヤーンの疑問。


「知っておいて欲しかったんだよ。

現在の、龍帝国このくにの主敵がどこか。

その相手の状況はどうなのかってな。」


「・・・・」


二人からの返事はない。


リュウヤは立ち上がると、


「アーグ。今夜は蟲使い一族の村に世話になるが、問題はないか?」


「はい。村の者たちも、久しぶりに陛下がお越しになると聞いて、張り切っております。」


「グリフ、お前たちも来るだろう?」


「酒の誘いとあれば、行かない理由はないな。」


グリフは豪快に笑い、ガルフとサリュラも、それに同意したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ