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龍帝記  作者: 久万聖
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ドワーフと馬車とイェスイ

カルドゥハルでの逗留は三日の予定となっている。


これは、いくらトンネルを通過するとはいえ、人数が多く、その荷物も非常に多いためと、なによりも馬車を通過させるのにかかる時間の問題でもある。


通常の馬車ならば、すれ違える程の幅があるトンネルも、今回の行幸のように王が乗車するような儀礼用の馬車のような大型のものとなると、一台通るとすれ違うことができず、ドワーフたちの通常の生活に支障をきたす恐れがあるためだ。


バトゥなどは、


「お前たちが通る間は通行止めにしてやるぞ。」


と言うが、リュウヤとしてはそこまでしてもらう気はない。


「ただでさえ、道を借りることで迷惑をかけているのだ。

これ以上は迷惑をかけられん。」


とはリュウヤの弁だが、バトゥにしてみれば水臭いと言いたくもなる。


カルドゥハルにしてみれば、国の南北の出入り口を龍帝国ががっちりと押さえているからこそ、交易が盛んになってきたのだ。

また、トンネルの通行料や宿場町として多くの利益を生み出してもいる。


それでもリュウヤは、けっしてその線を越えることはないだろう。


個人的な友誼と国としての関係を、混在させることはない。


だから、今回でも適切な通行料を支払ってもいる。


滞在費に関しては、バトゥから


「国賓としての招待だ。」


と言われ、カルドゥハル持ちになっているが。


リュウヤとバトゥが会談の場にいる間、忙しく動いているのはトルイ配下のドワーフたち。


これに、カルドゥハルのドワーフたちも協力して、馬車を解体して別の馬車に載せる。


それを出口に持って行って、そこで組み立てなければならないのだ。


ここで大きな問題が起きる。


カルドゥハルのドワーフたちが、馬車の構造に興味を抱いたのだ。

特に、板バネを用いたサスペンションに。


これについて色々と質問を浴びせてくるため、作業が予定よりも時間がかかってしまう。


龍帝国側のドワーフたちは、かつての仲間の興味に応えてやりたいものの、時間に追われる状況にイラついてしまう。


一部、衝突してしまいそうな場面もあったのだが、そこは偶然居合わせたスティールとアカギが割って入ってことなきを得た。


随員の総指揮を執るスティールは、手の空いている者たちを集めると、馬車一台分を残して運び出させる。


そして残った一台分を、思う存分に検分させることにしたのだ。


そうすることで、技術交流を深めさせると同時に、ドワーフたちに時間を作らせて旧交を温めさせたのである。


これは、アカギの念話を通じて事後報告としてリュウヤに伝えられる。


すると、


「旧交を温めるにも、ドワーフたちには酒が必要だろう。」


と、リュウヤとバトゥから酒が届けられることになった。


「お前んとこの王様は、話がわかるな。」


「いや、バトゥ様もさすがのものだ。」


といった会話が、あちこちでなされることになったのである。






☆ ☆ ☆






リュウヤとバトゥの会談は、挨拶程度のものでしかない。


二人の会談の本番は、翌日に行われることになっており、今日はサクヤとイェスイの会談がメインである。


そして、その場にもう二人。


アナスタシアとリュウネも参加している。


アナスタシアがイェスイに抱いた感想は、


「お祖母様みたい。」


である。


思わずそう呟いてしまったのだが、それを聞いたイェスイは、


「あら、そう思ってもらってもいいのよ。」


と、意に介した様子もなく、アナスタシアをぎゅっと抱きしめて、


「うちの子らよりも、ずっと可愛いからね。」


と言って笑っていた。


「おいおい、その息子らがそこにいるんだぞ?」


というバトゥに、


「図体がでかくなったら、仕事ばっかりで甘えてくることもなくなっちまったからね。

この娘の方が、素直に甘えてくれるだけ可愛いのさ。」


そう言って笑う。


「母上。本当に私たちが甘えたらどうなされますか?」


二人の息子であろうドワーフがそう尋ねると、


「決まってるだろ?その尻を蹴り飛ばして、甘えてないでとっとと一人前になって、立派な仕事をしろって言うさ。」


豪快に笑うイェスイ。


それにたいして、やっぱりねといった表情を見せる息子たち。


「ねえイェスイさま。わたしもおばあさまってよんでいい?」


リュウネの言葉に、


「いいよ。アナとリュウネは、今日からわたしの孫娘だよ。」


そう快く受け入れる。


その様子を見て、その場にいる者たちの笑い声が響いていた。


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