カルドゥハル
カルドゥハルの城門は大きく、その門扉は高さ10メートル、幅20メートルに及ぶ。
総鉄製であり、その重量は相当なものになるのは間違いない。
その門扉が重々しい音を響かせて、開けられる。
その光景に、アナスタシアとリュウネは口と目を丸くしている。
「凄いです、リュウヤ陛下。」
アナスタシアが興奮気味に口にする。
その頭を優しく撫でながら、
「たしかに、壮観だな。あれだけ大きな物が動くというのは。」
そう答える。
「あんなにおおきいの、どうやってうごかしてるのかな?」
リュウネの素朴な疑問。
「色々とカラクリを施しているのだろう。
トルイらに聞いてみるといい。」
「うん!あとできいてみる。」
元気よく返事をするリュウネ。
そして、開いた扉から姿を表すのはドワーフの儀仗兵たち。
リュウヤたちから見て右側に並ぶ者たちは、カルヴァハルの国旗を。
左側に並ぶ者たちは龍帝国の国旗を掲げている。
その列の最奥部には、バトゥが待ち構えている。
リュウヤらの乗る馬車がバトゥの前で止まる。
馬車から降りるリュウヤの前には、バトゥとその妻らしきドワーフの女性が待っていた。
「よく来たな、リュウヤ。」
「来たのは、2年ぶりくらいか。
北方の領土への行幸への協力、感謝する。」
カルヴァハルに来たのは、かつてエルフに攻められていたことへの救援依頼をうけてのこと。
そして、今回の行幸はカルドゥハルを通過しないと、険しいトライア山脈を越えなければならない。
時間も、危険度も桁違いになる。
「なに、お前になら、道を貸すのはなんてことないさ。」
そんな話をしながら、互いに握手をする。
「そういえば、そちらの方は?」
「おう、忘れるところだったわ。
俺の妻イェスイだ。」
そう紹介された女性は、
「イェスイと申します、リュウヤ陛下。
夫が色々と迷惑をおかけしていると思いますが、御容赦して付き合ってくださると有難いと思います。」
この言葉にリュウヤは笑い、バトゥは渋い顔をする。
「いや、イェスイ殿。バトゥ王には随分と助けられている。
こちらこそ、末永く付き合っていただきたいと思っている。」
「夫のことをそう言っていただき、ありがとうございます。」
イェスイはそう言って礼をする。
それにしてもと、リュウヤは思う。
その体形からか、イェスイをはじめとして侍女らしきドワーフの女性たちも、どこか農婦のように見えてしまう。
そしてもう一つ。
それぞれの本にもよるのだが、ドワーフの女性は髭があると表現されることもあるのだが、この世界のドワーフの女性には、どうやら髭はないようである。
「それよりもイェスイ殿。私の方も紹介せねばならぬ者がいる。」
リュウヤはそう言うと、サクヤの腕を引いて自分の横に並ばせる。
「私の伴侶となるサクヤだ。
上に立つ者の妃としての心構えを教えていただけると、有難い。」
"伴侶"という言葉に、サクヤは頰を上気させながら、
「サクヤと申します。イェスイ様には、どうかよろしくご指導をお願いします。」
そう挨拶をする。
「いえいえ。サクヤ様は龍の巫女でいらしたのでしょう?
なら、大したことはありませんよ。
面倒なことは全て、リュウヤ陛下に押し付けてしまえばよいのですから。」
この言葉に、リュウヤは苦笑しサクヤは目を丸くしている。
「うちの人なんて、私に押し付けてばかりなのですからね。
お話によると、リュウヤ陛下は自分から仕事を請け負っているというじゃありませんか。
うちの亭主なんて、隙があれば酒を飲もうとするんですよ。
リュウヤ陛下の爪の垢でも飲ませていただきたいくらいですわ。」
一気にまくしたてられ、バトゥが頭を抱える。
「いや、イェスイよ。そろそろ中に案内せねばならんだろう。」
これ以上、愚痴を言われてはかなわんとばかりに、バトゥは強引に話を横にそらす。
イェスイの方も、これ以上の追撃の意思はないようで、バトゥの言葉に素直に従う。
こうして、カルドゥハルでの逗留が始まる。
本来なら、昨日投稿するはずだったのですが、間違って消してしまい今夜になってしまいました。