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龍帝記  作者: 久万聖
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城と都市建設

海神神殿建設現場への視察の翌日、シニシャは帰国する。


「近いうちにまた来る。」


そう言い残して。


そしてマリーアと双子は、今しばらくこの地に残るようである。


リュウヤはシニシャを見送った後、新しく造る城について、ドワーフのトルイと細部を詰めるため、執務室で議論している。


そこに加わるのは、文官としてサクヤとアデライード。

そして、武官を代表してエストレイシアとモミジ。

建設の専門家としてプシェヴォルスク王国の公使でもあるエミリアと、ドワーフ王バトゥが招かれている。

さらに、軍神(アヴェガー)の聖女コルネリアが参加している。


バトゥへの挨拶もそこそこに、リュウヤとトルイはテーブルいっぱいの大きさの図面を広げてみせる。


「これは・・・」


築城予定地を一緒にまわり、ある程度の知見を持っていたエミリアでさえ、声を失う。


暫しの時間が流れ、


「これは、本当に城か?」


バトゥがうめくように口にする。


「一応は、そのつもりだ。」


「それにしても、城というには巨大過ぎないか?

まるで、巨大な街のようじゃぞ?」


ギイも疑問を呈する。

そのギイの言葉で気づいたように、アデライードが発言する。


「城を中心にして、新たな都市を作るおつもりですね?」


「さすがだな、アデライード。

お前の言葉が正しい。」


アデライードはリュウヤの意図を正確に把握したようだが、そんな者ばかりではない。


「巨大な都市を造るということは、遷都なさるおつもりでしょうか?」


エミリアのその言葉にサクヤが反応し、リュウヤを見つめる。


「将来はともかく、今のところ遷都は考えていない。」


リュウヤの返答に、


「新たな柱を立てるおつもりですね?」


アデライードが確認の言葉を向ける。


リュウヤは大きく頷き、


「トライア山脈北方の、飛び地にも造る。」


そう宣言し、説明を行う。


今回造るのは、獣人族の国との国境付近。

獣人族への支援の拠点というだけでなく、交易の拠点であり、獣人族が避難する場としての機能も持たせる。


そうすることで、龍帝国(シヴァ)第二の都市として国を支える柱とするのだ。


「造る理由は、もう一つあるんだけどな。」


「そのもう一つの理由とは?」


バトゥの質問。


「人が増え過ぎた。それも一気に。」


リュウヤは簡潔に答える。


元々、龍人族とドヴェルグを合わせて3千人あまりしかいなかったのだ。


それが、パドヴァ王国との戦いや、エルフとの戦いを経て、近隣から流れてきた者が増加。

特に、オスト王国の内乱による戦火から逃れるためにやってきた者、そしてオスマル帝国との戦いで得た捕虜たちにより、岩山の皇宮を中心としたエリアの人口は数万にまで膨れ上がってしまった。

それもごく短期間で。


その人口問題を片付けるために、最も有効なのが第二都市建設なのだ。


建設現場では多数の人手が必要であり、その人手をアテにして商人たちが集まっていく。

人・金・物が自然と集まりやすい状況になりやすいのである。


北方の飛び地に造るのは、もう一つの理由が付け加えられる。

北方から南方への人口流出を食い止めるという目的だ。


他に理由をつけるなら、北方領域の統治機構の設立でもあり、北方の交易の拠点でもある。


さらに言えば、北方に造る都市と岩山の皇宮とを結ぶ街道を整備することで、トライア山脈に拠点を置いているドワーフ王国が中継点となり、利益を共有することにもなる。


「カルヴァハルの産品を中継する龍帝国にも、大きな利益があるがな。」


ガッハッハと、バトゥは大笑いする。


「俺たちにも大きな利益のある話だ。

人手が必要なら言ってくれ。出来るだけのことはしてやろう。」


「頼りにさせてもらうよ、バトゥ王。」


バトゥの申し出に、リュウヤが答える。


「ですが、ドワーフたちだけでは、二つの都市を造るのには手が足りないのではありませんか?

北方の都市建設は、統治するためには早い方が良いでしょうし。」


アデライードが指摘する。


「北方に関しては、人手にアテがある。」


「アテ、とは?」


「ルーシー公国だ。」


リュウヤは説明する。


甘蕪(あまかぶ)の栽培と、それから取れる砂糖の生産にはもう少し時間がかかる。

さらに、輪栽式農業を定着させるためにも時間が必要だ。


その間の収入の確保のために、出稼ぎに来てもらうのだ。


「ナジェージダ公女には、話を通してある。」


ナジェージダ公女は、ルーシー公国公使として滞在している。


「すると、今夏の北方への行幸は、都市建設地の選定も兼ねているということでしょうか?」


アデライードはこのあたりの理解がとても早い。


「そうだ。お前たちには、そのための随員の選定も頼みたい。」


そのリュウヤの言葉に、一同は頭を下げて了承の意を示した。


会議を解散すると、リュウヤを呼び止める者がいた。


振り返った先にいたのは、軍神の聖女コルネリアだった。

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