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龍帝記  作者: 久万聖
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龍帝

五大神の聖女のお披露目。


岩山の王宮前の広場を見下ろすバルコニーに、リュウヤが聖女たちを連れて姿を見せると、予想を遥かに超える人々が集まっていた。


前日の慰霊祭を含めて、今日も休日にしたからだろうか?

だが、それほど広報した覚えはない。


まさかと思い、一瞬だけ後ろに視線を送ると、キュウビとライラがとてもいい笑顔を見せている。

さらに自分から見て左端にいるアデライード、右端にいるエストレイシア、ともにとてもいい笑顔である。


捕虜や軍に動員をかけたのが後者、口コミで周知徹底させたのが前者なのだろう。


盛大に行って、周辺諸国への波及を狙っているということか。


リュウヤらが出てきたことに気づいた民衆が、大きな歓声をあげる。


それに軽く手を挙げて応える。


そして、リュウヤらに続いて五人の聖女がバルコニーに姿を現わす。


右端のエストレイシアの前に、軍神アヴェガーの聖女コルネリア。


左端のアデライードの前に智慧の神エアルの聖女アイシャ。


リュウヤの右隣、フェミリンスの前に至高神ヴィレの聖女ビオラ。


リュウヤの左隣のサクヤの前に、海神マナナスの聖女シャーロット。


リュウヤの前に大地母神イシスの聖女ユーリャがそれぞれ立ち、群衆に向けて手を振る。


本来なら、中央に来るのは至高神ヴィレの聖女であるビオラのような気がするのだが、ユーリャがそのポジションを譲らなかったため、リュウヤの前になっている。


聖女たちが現れたことで、一層大きな歓声が湧き上がる。


ここでリュウヤの演説が入るわけだが、群衆との距離やこの歓声で聞こえやしないだろうから、手を抜いてもいいかと考えた時、


"それは甘いぞ"


聞き覚えのある念話が直接、頭に入ってくる。


頰を痙攣らせながら、リュウヤは空を見上げる。


そこには、予想通り龍が悠然と空を飛び、岩山の王宮の上空を旋回している。

しかも二体。


「シヴァとハーディか!」


"ほれ、そんなことを言わずと、早く演説をせい。

我らがお前の言葉を届けてやるぞ"


なんという嫌がらせか!


リュウヤのボヤキに、ハーディが早くせよと急かす。


恨み言を言いたくなるが、リュウヤにとっての問題は新たに起きる。


それは、シヴァとハーディの姿に群衆が気づいてしまったのだ。


こうなるとどうなるか?


「うちの王様を祝福するために、聖女さまだけでなく龍もやってきた!」


こんな声が、彼方此方で上がっているのが予想できてしまう。

いや、あがっているのではなく、キュウビの手の者があげさせていることが理解できてしまうのだ。


それを継続させないために、リュウヤは渋々、演説を始めたのだった。






☆ ☆ ☆






演説で何を言ったのかは、よく覚えていない。


ただ、何か余計なことを言ったらしいことは、その後の皆の様子からわかる。


特に、群衆が自分のことを、


「龍帝陛下!」


と絶叫していたような気がするが、気のせい・・・だと思いたい。

そんな中二病みたいな呼び方を、自分から提案したとは思いたくない。


そして、アデライードが用意した原稿に沿った内容を言っていたと思うのだが、なにやら皆の生温かい視線が痛い。


「何か、変なことを言ったか?」


小声でサクヤに確認するが、


「いえ、立派な演説でしたよ、リュウヤ様。」


サクヤは、自分に関することはかなり贔屓目で見るから、あまりアテにできないだろう。


今、側にいる者たちの中で客観的に見ることができるのは・・・


「フェミリンス、演説の内容はどうだった?」


「立派な内容でした。たとえキュウビ様やライラ様の仕込みが無かったとしても、皆を熱狂させるに足る演説だったと思います。」


絶賛、ということらしいが、さて、自分はなにを言ったのやら。


あとで確認する必要がありそうだ。


それにしても、


「龍帝か・・・。誰が言い出したやら。」


その呟きにユーリャが反応する。


「それね、私たちが考えたんだよ。聖女たちが仕えるのが、ただの王様じゃダメだろうって。」


なるほど、それをキュウビらが広めたのか。


それに、シヴァとハーディも一役買ったということだろう。


リュウヤは思わず嘆息したのだった。

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