表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍帝記  作者: 久万聖
400/463

捕虜たちの処遇

会議翌日より、捕虜の住む収容施設の建設が始まる。


移住希望者が来ることを前提にして作られた村のいくつかを、収容施設として転用する。


3万人にも及ぶ人数となると、それなりの規模が必要であり、時間が必要になるかと思われたのだが、捕虜の中には工兵として土木作業を担っていた者が多数いたため、予想よりも捗りそうだ。


その捕虜たちを百人程度でグループを作らせ、それぞれのリーダーを決めさせる。


そして、そのリーダーたちを集めると、監督役となる者たちを引き合わせる。


総責任者は鬼人オーガ)族のヤハギ。


リュウヤとしては、モガミ、シナノ、キヌあたりにやらせようと思っていたのだが、


「彼らは先の戦いで、なんの武勲も立てられておりません。

ですので、私自身が再教育を施しますので、別の者に御命じください。」


そうモミジが断ってきたのだ。

その代わりの人物として推薦してきたのが、このヤハギである。


鬼人族としては身体が小さく、戦闘に向かない(鬼人族基準)が、土木作業をはじめとする建設とその指揮能力は高いとのことである。


技術的な指導役にはドワーフのテムルがあてられる。


女性を除いて290のチームに分けられたものを、10チームに一人の監督役がつけられる。

その監督役を紹介するが、種族もそれぞれ違うことに捕虜のリーダーたちは戸惑う。

だが、それもそう遠くないうちに慣れるだろう。


それぞれの監督役から、リーダーたちは労働条件を提示される。


日給として銀貨1枚。


基本的な衣食住は無償で提供。


五日毎に完全休日を設ける。また、休日の行動は脱走しない限りは自由。


大きなものはこの三つ。


さらに、一日1時間ほど読み書きや簡単な計算ができるようになるための、勉強が課せられる。


予想外の好待遇に、捕虜のリーダーたちは驚く。


「今はまだないが、収容施設の近くに酒場や娼館が建設される。

金を使い過ぎないようにしろよ。」


最後にヤハギから注意を受ける。


そして、捕虜たちはそれぞれの収容施設へと分けられていく。






☆ ☆ ☆






女性たちは、15歳という年齢で分けられる。


ざっと1300名の女奴隷のうち、約三割が15歳以下の未成年(・・・)であることがわかり、その者たちは女官長ウィラとリュウヤ付き侍女長ノワケことキュウビに預けられる。


16歳以上の成年者は、夢魔族ライラに預けられることになる。


ウィラとキュウビに預けられた者たちは、王宮内の大広間に集められる。


それまで見たこともない種族たちの存在に、怯えの表情を隠せない。


「貴女たちは今日から、この岩山の王宮で生活をしていただきます。

それと、我が国では奴隷は違法なもの。

ですので、皆さんは今日から自由民となります。」


突然のウィラ言葉に、集められた少女奴隷たちはそれぞれ顔を見合わせる。


その表情は信じられない、そう明確に語っている。


それもそうだろう。


いきなり自由民と言われても、理解できないだろう。


「ただし、皆さんは捕虜としての労役についてもらいます。」


その言葉に、少しざわつく。


「やっぱり、うまい話はないよね。」


「偉い人は、若い女が好きっていうよね。」


等々の会話が、小声でそこかしこでされている。


ウィラは軽く手を二度叩いて、静かにさせる。


「勘違いしているようですが、皆さんが行う労役は、侍女の仕事の補佐です。

洗濯や掃除、食事の準備の手伝い等々、多岐に渡りますが、皆さんが想像しているようなことはありません。

むしろ、そのような要求があったのならば、私たちに教えてください。

貴女たちの年齢の者と、そういうことを行うのはこの国では違法行為です。

要求したものは、厳罰に処されることになります。」


そう説明され、自分たちがそういう対象としてこの場に集められたのではないと、やっと理解される。


「それから、皆さんには給金が出ることになります。」


その給金額をはじめ、労働条件が説明されていく。


その説明を理解していくうちに、少女奴隷たちの顔が明るくなっていく。


「はい、皆さんが理解できたところで、仕事の説明をしますよ。」


ウィラはノワケらに指示を出し、テキパキと進めていく。


その手腕は、ノワケことキュウビも舌を巻くほどだった。






☆ ☆ ☆






ライラの前に連れてこられた者たち。


彼女たちにも、ウィラがしたものと同様の説明がなされる。


ただ、彼女たちへの説明には次の一点が付け加えられる。


「仕事は何をしたいのか?」


の設問である。


これに彼女たちは大きく戸惑う。


それは歳上になればなるほど、その傾向は顕著に表れている。


それは、彼女たちはそれ以外の生き方を知らなかったからである。


それこそ、幼い頃から客引きを行い、10歳を超えると客を取らされてきた。

他の仕事をする自分を想像できなかったのだ。


それだけではない。

歳を重ねても売春をせざるを得ない状況にいたということは、それなりの問題を抱えているということでもある。


本来ならば、自身を買い戻せるだけの収入を得ていたにもかかわらず、いまだに奴隷の身に甘んじている者。

騙されて金を巻き上げられたのか、それとも自身の金遣いの荒さからなのか。


騙されたのならば、ある程度の教育をしなければならない。


金遣いの荒さが原因なら、金に関する教育をしなければならない。


ライラは少しの時間考え込むが、


「まあ、いいわ。貴女たちみたいなのも、これまで何人も見てきているから、なんとかしてみせようじゃない。」


そう艶然とした笑みを浮かべていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ