会議
リュウヤの帰国に伴い、それまで行われていなかった論功行賞も行われる。
エストレイシアら、主だった幹部たちは恩賞を明確に辞退している。
その言い分は、
「翼人族に手を貸すように仕向けたのは自分たちであり、それによって恩賞を受けるわけにはいかない。」
ということである。
そうは言われるものの、最終決定をしたのは自分であり、そういうわけにはいかない。
武勲はしっかりと評しなければ、国としての根幹を揺るがしかねない。
そこで、代わりにエストレイシアらから聞き取りを行う。
「お前たちを評する代わりに、誰を評すれば良いか?」
と。
それに対して異口同音に出てきたのは、負傷者及び戦死者の遺族への補償の充当だった。
リュウヤはそれを了承し、その財源にはオスマル帝国からの賠償金の一部を充てることを決定する。
また、戦死者の慰霊祭を執り行うことを続いて決定し、その祭祀を軍神アヴェガーの聖女コルネリアが主催することを、この場でリュウヤから依頼する。
このことに関して、コルネリアは快諾する。
軍神に仕える者として、むしろこのような祭祀は望むところである。
「喜んでお受けいたします。」
そう返答するコルネリアの耳が、無意識なのだろうがピクピクと動き、尻尾が左右に振られている。
大役を任されたことが嬉しいようである。
その準備にかかる時間を考慮して、五日後に慰霊祭を行うことが決定された。
「後は、聖女がここにいることをいつ公表するか、だな。」
軍神に関しては、強者のところに行く習性のようなものがあり、それを求めて旅をするというからここにいても不思議はないらしい。
そして、大地母神の聖女はすでに公表している。
海神マナナスの聖女は、この地に来ることをすでに伝えているため、公表は問題なさそうである。
そうなると問題は、智慧の神エアルの聖女アイシャと、至高神ヴィレの聖女ビオラである。
アイシャの方は、翼人族を通じての来訪とする事で、軋轢を多少は軽減できるだろう。
やはり最大の問題はビオラだ。
彼女は神聖帝国の皇女でもあり、その神聖帝国は龍王国の同盟国である獣人族の国と敵対している。
下衆なことを言えば、彼女は人質としての価値も非常に高いのだ。
「どうせなら、まとめて公表してしまえばよろしいのではありませんか。」
フェミリンスの提案。
リュウヤはその提案の説明を求める。
「一人一人、時期をずらして公表していては、その度に衝撃を与えてしまいます。
ですが、ここで一度に公表してしまえば、それは一度きりですみます。」
たしかにその通りだ。
五人同時に公表すれば、たしかにその衝撃度は大きいだろうが、一人一人時期をずらして公表すれば、その衝撃を受ける期間は短くて済む。
「ならば、慰霊祭の後に公表するとしよう。」
ただ、当日というのは避けて、その三日後に公表することにする。
この日は、それで終了する。