ガールズトーク?
「ねえ、起きてる?」
ベッドの中から、ビオラに声をかける。
「はい。」
それに対して、ビオラの短い返事。
「ビオラは、なんで陛下にお仕えしようと思ったの?」
「それは、至高神の言葉を聞いたから。」
「それだけ?」
「・・・・。」
そう言われて返答に詰まるビオラ。
「私はねえ、一目惚れ!」
あっけらかんと言うユーリャ。
「龍王国に来たのは、大地母神様の言葉があったからだけど。
でも、陛下を初めて見たら、大地母神様はこの人に会わせるためにそう言ったんだって、なぜか確信したんだよね。」
直接的な面識を得たのは、リュウヤがロマリア村を訪れた時。
「陛下は知らないと思うけど、パドヴァ王国から帰還した時にこっそりと見てたんだ。」
ユーリャは起き上がると、窓の外に視線を移す。
「トール族のみんなを労ってる姿を見て、とっても優しい人なんだなあって。」
懐かしそうに振り返るユーリャの顔を、ビオラは起き上がって見ている。
そのユーリャの顔は、とても良いものであるように見える。
「でもね、実際に会ったら私を子供扱いするんだよ?」
頰を膨らませながら、憤慨したように言う。
今のユーリャの表情は、十分に子供っぽいと思えるのだが、言わないでおく。
「さっきみたいに、指でおでこをパチンとするし・・・」
そこで言葉が一旦、途切れる。
「でもね。最後は笑って許してくれるんだよね。」
嬉しそうなユーリャの表情。
まるで猫の目のようにころころと変わる表情に、ビオラは自分にない物を感じる。
「ビオラと同じ部屋にしたのも、仲良くなるきっかけにしなさいってことだろうし。」
そのことは、ビオラも感じ取ってはいる。
ただ、自分からどう動けばいいのかがわからなかったのだが。
「ビオラはどうだったの?
初めて陛下に会ったときって。」
そう問われて、初めて会ったときのことを思い出す。
馬車から降りようとした時、突然、至高神の声が頭に響き、気を失ってそのまま倒れこんでしまった。
そして気づいた時には、自分が怪我をしないようにだろう。
抱き抱えられていた。
「とても力強くて、温かかったです。」
「?」
説明を求めるユーリャの視線。
「抱き抱えられていましたので・・・。」
「えっ?!ええーーーっ!!!」
絶叫するユーリャ。
「まだ、私、そんなことされてないのに・・・!」
ジト目で睨まれ、ビオラは慌てて弁解する。
「わ、私が気を失って倒れたので、それを陛下が受け止めてくださったのです。」
その弁解に、
「まあ、いいわ。
それで・・・」
ユーリャはビオラのベッドに移って躙り寄る。
「どうだった?どんな感じだったの、陛下の腕の中って。」
「お、大きくて、力強くて、とても温かくて、とにかく安心できました。」
「いいなあ、ビオラ。
・・・・ん?」
ユーリャは、ビオラの顔が夜闇の中でもわかるくらい紅潮していることを確認する。
ビオラとしては、自分をそんな風に抱き抱えたのは父親以外にいなかったことを思い出し、今更ながらに異性にそのようなことをされたのだと、恥ずかしさから紅潮してしまったのだがユーリャにそれはわからない。
「ビオラ、顔が紅くなってる。
もしかして・・・」
「えっ!?」
「ビオラも陛下のことを・・・」
「え、え、いえ、あの・・・」
一層、躙り寄るユーリャに後ずさるビオラ。
「さあ、言いなさい、ビオラ!
陛下のこと、どう思ってるの?!」
ビオラを射程距離に納めると、ユーリャは一気に襲いかかる。
「や、やめてください!」
両手を前に出して、身を守ろうとするビオラ。
その両手をかいくぐり、ユーリャの手がビオラの胸に触れると、その動きが止まる。
そしておもむろにその手を、自分の胸に当てる。
「・・・私より大きい・・・。」
ユーリャは再びビオラを見ると、
「正直に言うまで寝かさないからね!」
八つ当たりも含めて、ユーリャは再びビオラに襲いかかったのだった。
そして翌朝、アナスタシアがリュウヤに抱き上げられて寝室まで運ばれたことを知ったユーリャは、絶叫することになったのだった。