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龍帝記  作者: 久万聖
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滞在中の予定、ほぼ白紙

夕食の場で、筆頭秘書官ミーティアから今後の予定を示される。


滞在予定は10日。


6日目が戴冠式であり、それ以外は見事なまでに予定が空いている。


「自由時間ということでよいのか?」


リュウヤの問いかけに、


「予定がない以上、そうなります。」


ミーティアがそう答える。


そのやり取りに頭を抱えてしまいたくなったのが、ジゼルである。


初日が今日、最終日が10日目と考えても、7日も自由時間がある。

その間、リュウヤをはじめとする龍王国(シヴァ)の一行を、平和裏に過ごさせる自信はない。

いや、リュウヤたちが平和裏に過ごそうとしても、街中に出ればそうはいかない可能性が高いのだ。


エルフやドワーフ、アールヴやドヴェルグはともかく、龍人族には前国王派の残党が襲撃する可能性がある。


彼らは、前国王ラムジー四世の失脚の原因を、龍人族にあると思い込んでいる。

下手に街中で遭遇してしまったら、どうなるか?

街がどれだけ破壊されるのかがわからない。


鬼人(オーガ)たちも、腕自慢の輩が挑発する可能性もある。

鬼人が負けるとは露ほども思わないが、周囲の者たちが巻き込まれる可能性が高い。


夢魔族が街に出たら?


誘惑される男どもが騒動を起こしそうだ。


比較的無難に過ごしてもらえそうなのが、吸血鬼(ヴァンパイア)たち。

だが、それでももしもの時の破壊力を考えると安心はできない。


「で、ですが会談などの申し込みはなかったのでしょうか?」


その言葉に、ミーティアが答える。


「ありません、一件も。こちらから要請したものにも、返事は一件もありませんでした。」


ジゼルは思わず絶句する。


「あり得ない、そう思っているのか?」


とはリュウヤの声。


「当たり前です。この地域の国々で、最もその動静を伺わなければならないのは、龍王国でしょう?

それなのに、なぜどの国も会談を行おうとしないのか、わかりません。」


ジゼルの言葉は正論ではある。


先王の時とはいえ、イストール王国を破り、パドヴァ王国を滅ぼし、オスト王国を破る。


つい最近では、オスマル帝国にも勝利している。

ならば、軍事的に考えて龍王国は最重要国家となっているはずではないか。


だが、リュウヤの見解は違う。


「ジゼルは、俺がこの世界に来てすぐの付き合いだから、そこまで考えられないのだろうな。」


国王たるリュウヤ自身が、異世界から召喚された存在。言ってしまえば、得体の知れない存在なのだ。

そこには圧倒的な武力があり、そしてその政策により経済力もつけていくだろう。


もちろん、注意しなければならない国ではあるが、その多種族混成ぶりに、近寄りがたい存在となっている。


「消極的な理由ではあるが、接触は最低限に抑えて、龍王国の怒りを買わないようにしようと、そういうわけだ。」


得体の知れない存在に対しての関わり方は、大きくふたつ。


得体の知れた存在に変えるべく、接触を図る。

これはイストール王国やセルヴィ王国のやり方。


他の国は、遠巻きにして様子見に徹するという選択をしただけのこと。


「そこでジゼル君に頼みがあるのだが、聞いてもらえるかな?」


嫌な予感がする。


「そんなに嫌そうな顔をするな。俺たちが行動してもよい範囲を知りたいだけだ。

こちらとて、好き好んでウリエの戴冠式にへんな汚点を作る気は無い。」


この言葉にジゼルはホッとする。


「わかりました。

そのあたりに関しましては、フィリップ王子に確認して参ります。」


「よろしく頼む。」


この日は夕食を済ませた後、旅の疲れを癒すために早めの就寝となったのだった。


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