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龍帝記  作者: 久万聖
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対オスマル帝国戦 包囲網

謀略は突然訪れる。


少なくともそれを受けた側にとっては。


最初の凶報はここより南方、パルメラ王国の軍がオスマル帝国領へ侵攻を開始したというものだった。


パルメラ王国は、ビンツア王国とともにオスマル帝国の西方政策の要だった。


だから、両王国には二代続けて皇女を降嫁させてきたのだ。


それが攻め込んで来た。


無理矢理良い方向に考えるならば、皇女を含めた王族が龍王国(シヴァ)側に捕らえられ、侵攻するように強要された。


だが、オスマル帝国の諸将もわかっている。

これまで抱えて来た帝国への不満が、目に見える形で現れたのだと。


それが理解できない者が一名。


「ちっぽけな国が、帝国への恩を忘れおって!!」


カリニコスである。


そのカリニコスを冷ややかに見るバニパル。

その態度こそが、パルメラ王国の離反を招いたのだと、そう怒鳴りつけてやりたい気持ちをかろうじて抑える。


ここで、ひとつの疑問が生まれる。


「バニパル将軍。もしかしてビンツア王国も・・・?」


誰ともつかぬ呟き。

先の攻勢の際、ビンツア王国正規軍の軍装をしたものの報告はあった。

だが、それはこちらを混乱させるための策略とみていたのだが、こうなると策略などではなかったということか。


「バニパル将軍!将軍がモタモタしているから、こんなことになるのですぞ!!」


その物言いに他の将軍たちは気色ばむが、当のバニパルは黙って考え込んでいる。


モタモタしていると言われれば、たしかにそう言えるかもしれない。結果だけを見るならば。


だが、自分が到着して七日。

常識的に考えればさほどの時間をかけているわけではない。

それに龍王国軍にしても、ビンツア・パルメラ両王国に進撃したのは二十日足らず前のこと。

そんな短期間で両王国の軍を動かせるほどに、内部に食い込めたとは思えない。


ならば、龍王国はいつから我が帝国との戦いに備え、両王国に謀略や調略を仕掛けていたのだろう?


いや、そのことは今は考えまい。

それほど前から準備をしていたのなら、この程度で済むのだろうか?

まだ、謀略の種は仕込まれており、いつでも芽吹かせる用意ができているのではないのだろうか?

その場合、どこに謀略を仕掛けられるのが、自分たちにとって打撃が大きいだろう・・・。


次の瞬間、椅子の倒れる大きな音とともにバニパルは立ち上がる。


「全軍、これより撤退せよ!撤退する先はカルラエの東、ファサじゃ。」


突然の命令に、居並ぶ諸将も戸惑いを見せる。


「説明している暇はない!急げ!!」


急がせるバニパルだが、そこに緊急事態を報せる急使が天幕に駆け込んでくる。


「バニパル将軍!!カルラエで暴動が発生!

カルラエのかなりの地域は、暴徒に占拠されております!!」


その報告に、バニパルは思わず天を仰ぐ。


「遅かったか・・・。」


バニパルが至った考え通りに、謀略の種が仕込まれていたのなら、どこに仕掛けるのが一番効果的か?

それはオスマル帝国領民の中に紛れ込ませることであり、さらにいえば避難民の中に紛れ込ませることだ。


がっくりと腰を落としたバニパルは、自分が至ったことを説明する。


その説明を聞き、青ざめる諸将。


バニパル将軍の言葉通りならば、帝国領内で孤立するというありえない状況に陥ったことになる。


「いや、まだ北が空いている。」


フィロパトルがそう口にし、その言葉に皆の精気が戻った時、絶望的な報告がもたらされる。


翼人族が北方の駐屯部隊を撃破して、攻め込んで来たという報告が。



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