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龍帝記  作者: 久万聖
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雪祭り最終日

雪祭り最終日。


この日の昼に、優秀作品賞が決められる。


招待客による無記名投票によって決定されるのだが、リュウヤら龍王国(シヴァ)関係者に投票権はない。


これは不正を防ぐ意味合いがある。


そして投票は、皆の前で投票箱に入れ、全員が投票した後、一票一票読み上げていく。


投票総数は、国として来ている者たちが16票。

来賓として来ている商会の分が20票。


そして、アルテアの弟妹たちが一票の、合計37票である。


投票開始の一時間ほど前、リュウヤはキュウビと話し込んでいる。


雪祭り前に仕込んだ仕掛けが、そろそろ発動する頃合いだ。


「また、悪巧みですか?」


揶揄うような口調で、そう言って近づいて来たのはサクヤ。


「雪祭り前に仕込んだ仕掛けが、そろそろ発動する頃合いだからな。

その打ち合わせをしているのさ。」


リュウヤの答えとキュウビの笑顔に、サクヤも微笑む。


「そうですか。では、すでにオスマル帝国の飛竜騎士とやらがこちらに接近していることも、御承知なのですね?」


知っている。

つい先ほどキュウビから報告を受けている。


それへの対処をすでにタカオらに命じており、それをいつ発動するかのタイミングを計っている状況である。


そしてもうひとつの策の発動を、キュウビと協議しているのだ。


そこにエストレイシアやフェミリンス、カルミラ、モミジ、ライラ、アデライードがやってくる。


「また、悪巧みですか?」


とはフェミリンスの言葉だ。


「私たちも、その悪巧みに参加させていただきたいのですが。」


エストレイシアが、これまた人の悪そうな笑顔をリュウヤに向ける。


「そうだな。お前たちも参加する資格がある。」


リュウヤはそう答えると、皆が一斉にリュウヤとキュウビが協議しているテーブルにやってくる。


そして、そのテーブルを囲んで色々と策が練られることになる。






☆ ☆ ☆






「陛下、そろそろお時間でございます。」


アナスタシアが、時間になっても出てこないリュウヤを心配して呼びに来る。


「もうそんな時間か。」


リュウヤは皆を見渡し、


「では、行くとしよう。」


そう言って立ち上がり、歩き出す。


それにサクヤ、フェミリンス、アデライード、キュウビが続き、エストレイシア、カルミラ、モミジ、ライラは別行動を取る。


それぞれの役割を果たすために。






☆ ☆ ☆






発表会場となる大広間には、雪像作成の各チームが招かれており、また来賓たちも投票のために集まっている。


名を読み上げられた来賓から投票をしていき、それが終わると、投票箱の中からサクヤが一枚ずつ取り出してリュウヤに渡し、それをリュウヤが読み上げる。


そして、残り一票となったところでギイのドヴェルグチーム、トルイのドワーフチーム、ドワーフ王バトゥのカルバハルチームが8票で並んでいる。


「出来過ぎな状況だな。」


それがリュウヤの今の感想である。


優勝候補と目された3チームが同数で並ぶ。

盛り上がるには最高のシチュエーションだろう。


「陛下、これが最後です。」


サクヤから最後の投票用紙を受け取り、記入されたチーム名を見る。


「ロマリア村のチームだ。」


これで三者同票となり、会場はどよめく。


「アデライード。この場合はどう決着をつけることになっている?」


雪祭りの実行責任者であるアデライードが答える。


「申し訳ありません。このような事態は想定しておりませんでした。」


その言葉を受け、


「そうなると決選投票か、三者同数による共同優勝か・・・」


そう呟いて思案に入りかけたリュウヤに、


「再投票とか同時優勝とかは無しじゃ。

最初の投票で勝てなかった以上、これ以上は辞退させてもらう。」


ギイが宣言する。


「ならば、俺も辞退させてもらう。」


バトゥもギイに続く。


「単独で優勝する気しかなかったからな。」


「お二方が辞退なさるのに、受け取ることはできません。」


トルイもふたりに続く。


「三者の意思は理解した。ならば、今回は優勝は無しということだな。

だが、次回のテーマはどうする?

本来は優勝者が決めることになっていたが、最多得票者はお前たちだ。

三者で決めるといい。」


そう言われて3人は互いに顔を見合わせ、そして頷く。


「それなら決めているぞ。」


バトゥがはっきりと口にする。


「ならば、そのテーマを発表してくれ。」


バトゥはニヤリと笑い、


「結婚だ。来年の雪祭りの前に、リュウヤ殿とサクヤ殿は式を挙げると聞き及んでいる。

ならば、それこそ次回に相応しいテーマだろう?」


その言葉を聞いて、リュウヤの頰が引き攣る。


「同意じゃ。これ以上ないテーマじゃ。」


「お二方に同意いたします。」


視線をそっと部下たちに移していくと、皆が大きく頷いている。


「わかった。ならば、次回のテーマは"結婚"としよう。」


リュウヤが引き攣った表情で宣言するのを、廷臣たちやフィリップ王子、アルセン王子らは愉快なものを見るような表情でいた。


そして、祭りの締めくくりとなる「終夜祭」へと、進んでいく。

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