セルヴィ王国一行との晩餐
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「子供たちが申し訳ないことをした。」
晩餐会はアルセンの謝罪から始まった。
「いや、それを言うならば、こちらこそアナスタシアやナスチャ、ラニャもいたのに止められなかったのだ。
謝罪せねばならないのは、こちらの方であろう。」
リュウヤはアルセンにそう応じる。
その言葉にに、リュウヤの隣に座っているアナスタシアは小さくなっている。
名指しされた他のふたり、ナスチャとラニャは頭に大きなコブを作っていたが。
「ごめんなさい。」
アナスタシアは謝罪の言葉を口にし、従兄弟たちも
「ごめんなさい。」
と謝罪している。
ただ、叱ってばかりではなく、翌日から従兄弟たちにつくのは各種族持ち回りにしている。
それで、ふたりの好奇心もある程度は満たせるだろう。
そして、テーブルに並べられる料理の数々。
今日の晩餐会に参加しているハーディが持ち込んだ海産物を使用した料理が、所狭しと並んでいる。
普通に塩を振って焼いたものから、唐揚げにされた魚。
ロブスターによく似た大きな海老は、一匹丸ごと網焼きにされて各自の元に置かれている。
ようやく取り寄せることができた米と、貝をふんだんに使ったパエリア。
魚の身をすりおろし、さらに裏ごししたものを麺状にし、残った魚の骨で出汁をとって作ったスープの中に入れたもの。
カレイに似た大きな魚を丸ごと煮付けたもの。
無論、魚介が苦手な者たちのために用意された料理も並んでいる。
デザートには、卵と砂糖を使って作ったプリンが、子供たちのために用意されている。
「内陸でこのような海産物を食せるとは、まことに驚きです。」
アルセンらセルヴィ王国の面々は、驚きを隠せない。
また、これらの海産物を持参したハーディも、
「このような調理法があったとは、妾も寡聞にして知らぬ。
妾の料理人を、この地で修行させたいものじゃ。」
素直に賛辞を送る。
その賛辞に微妙な表情を見せるジルベルト。
「なるほど。この料理のアイデアはお主か、リュウヤ。」
「正確には、俺のいた世界の料理を元にした、というところだ。
手に入らない調味料や食材、香辛料もあるからな。」
醤油と山葵があれば刺身も出せただろうし、米酢があれば寿司も作れただろう。
鰹節や干し昆布、干しシイタケがあれは、より多くの出汁を取れるし、それを元にした料理も作れる。
「そうか。ならばお主が欲しがっている食材、調味料や香辛料があれば、より美味いものが作れるのじゃな?」
「まあ、そうなるな。」
リュウヤが欲しいと思っている食材や調味料、香辛料は多岐にわたる。
主食として使えるものから、お菓子作りに使いたいもの。
隠し味として使いたいものもあれば、組み合わせて使いたいもの。
「俺が欲しいものを全て揃えるのは、相当に骨が折れるぞ。」
「ほう?じゃが、それらが揃えば揃うほど、美味なものを食せるのじゃろう?」
ハーディの言葉に苦笑するリュウヤ。
「そんなに美味いものに飢えてるのか。」
そんな言葉も出る。
「お主の知識が異常なのじゃ。どれだけ恵まれた環境にいたのか、絞め殺したくなる。」
ミシュランガイド基準では、世界一の美食の都とされるのは東京だ。
そして、魚介類をはじめとした海産物を使った料理の多彩さは、間違いなく日本が一番だろう。
「その恵まれた環境を、少しでもこの地で再現したいと涙ぐましい努力をしているのだよ。」
子供たちが食べているデザートのプリンにしても、より美味いものをと鶏の飼育から始めているのだ。
「これ、甘くて美味しい!」
エレナとパヴレは声を揃えて言う。
「リュウヤよ、妾の分はないのか?」
「欲しかったのか?」
「当たり前じゃ。どう見ても甘味であろう?はよう妾にも出さぬか!」
この物言いに苦笑しながら、ジルベルトに視線を送る。
ジルベルトもその視線に気づくと、デザートを提供するべく一旦退出する。
そして出てきたのはプリンと、砂糖と卵、牛乳を使って作ったアイスクリーム。
「ハーディはプリンだけでよかったのだな。」
「なっ!?そのようなことを言うでない。
妾にもその白いものも出さぬか!」
ハーディは懇願するようでいて、高圧な態度を崩さぬ物言いでリュウヤに要求したのだった。