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龍帝記  作者: 久万聖
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悪巧みとエルフ女性たちの愚痴

イナサが来るまでの間、アデライードは差し出された名簿を見ている。


アデライードとしては見知った名前ばかりではあるが、彼女が招待状の依頼をした名前とは全然違う。


「これも、招待状を送った相手なのでしょうか?」


その言葉にニヤリと笑うリュウヤ。


改めて名簿に目を移す。


この名簿の中に記載されているのは、龍王国(シヴァ)に対する態度を決めかねている国々の王や有力者たちだ。


招待状を無視するか、招待を受けるにしてもどのクラスの者を派遣してくるのか。

それ次第で相手がこちらをどう見ているかがわかる。


敵となるか、中立という様子見をするのか、友好的な関係を結ぼうとするのか。


「陛下。本気でこの三ヶ国に招待状を出したのですか?」


アデライードは半分呆れ、半分楽しそうな口調で問いかける。

その三ヶ国、獣人族の国と戦争状態にある"神聖帝国"に、翼人族の国。そしてその翼人族の国と紛争を起こしつつあるオスマル帝国。


翼人族の国はまだいいが、神聖帝国とオスマル帝国は有り得ない。

獣人族と同盟を結んでいる龍王国の招待に、神聖帝国が応じるわけがないし、オスマル帝国が新興国たる龍王国の招待を受ける理由がない。


「はっきりと色分けなさるおつもりですね?」


これは質問ではなく、確認である。


「そうだ。セルヴィ王国などは、やりやすくなるだろうな。」


そう、龍王国の東方を制するのに、セルヴィ王国は明確な判断基準を得ることになる。

龍王国に敵対する国は、文字通り遠慮なく攻撃できるようになるし、友好関係を結ぼうとする国ならば、講和するなり同盟を結べばいい。


そして、自分たちはセルヴィ王国を支援するだけでいい。


「おまたぁせぇ、いたしましたぁ。」


芝居がかったフリでイナサが入室する。


この芝居がかった口調に、アデライードは眉をしかめる。


とてもではないが、好きになれる存在だとは思えないが、それでもその知性は一級品であることを認めてもいる。


それでなくては、本当の族長であるキュウビの代理など務まらない。


リュウヤとアデライード、イナサと侍女長ノワケことキュウビの悪巧みが練られていく。















☆ ☆ ☆














懇談会が終わる頃合いを見計らい、リュウヤは会場に戻る。


すると、いきなり声をかけられる。


「陛下ぁ、男どもが酷いんですよぉ〜。」


声はミーティアだが、彼女はこんな口調で話すことはない・・・、はずだった。


「うっ・・・、酒臭いぞ、ミーティア。」


ちょっと待て、酒の提供は禁止していたはず。


「酒でも飲まなきゃやってられませんよ!!」


絡み酒か、そう思う間もなく、


「なんで男どもは胸ばかり見るんですかぁ!

たしかにエルフは胸が小さいですけど、そういう種族なんだから仕方ないじゃないですかあ!!」


リュウヤは慌ててミーティアの口を塞ぎ、知った顔が近くにいないかと見回す。

いた。ミーティアの部下になった秘書官のひとりだ、


「イルマタル!」


「ああっ!陛下!!男どもに何か言ってください!!」


名を呼んだ後に気がついた。イルマタルもエルフだった。


「確かに私たちエルフは、身体の凹凸は少ないですけど、それなりに見た目はいいと思うんです!!なのに男どもときたら、胸、胸、胸!!!」


「酷いと思いませんか!!」


イルマタルの愚痴を聞いているうちに、ミーティアの口を塞ぐ手が緩んだようだ。


「わかった、別の場所で話を聞くから、ここで騒ぐな!」


強引にふたりを引き連れて、急遽用意させた部屋で話を聞くはずだったのだが、3人の後ろにはエルフの女性たちが続いている。


「ま、まさか参加したエルフ女性、全員・・・・・・か?」


ぞろぞろと入室してくる者たちを見て、絶望感というものを実感する。


これからたっぷり5時間、リュウヤはエルフ女性たちの愚痴を聞き続ける羽目になったのである。















☆ ☆ ☆












「お疲れさん、王様(おーさま)


ミーティアらエルフ女性のおかげで、すっかり遅くなった夕食の席で、ナスチャに慰められる。


「まさかこんなことになるとはな。」


「困ったものですね。」


リュウヤの愚痴に、サクヤが応じる。


懇談会と種族間交流の場の提供のはずだったのだが・・・。


「それにしても、なぜ酒が出されたんだ?」


「ああ、それな。」


ナスチャがすでに聞き出してきたらしい。


「アホな男どもが胸ばかり見てるもんだから、頭に来た一部のエルフが騒いだんだと。酒を出せって。」


その圧力に屈して、出してしまったのだとか。


「そんなに荒れていたのですか、エルフ女性たちは?」


サクヤの疑問に、


「酷いなんてものじゃない。」


"胸で女の価値を決めるな!"という真っ当な言葉ならいい。


"そんなに胸が大きいのがいいなら、牛と結婚しやがれ!!"など、不穏当な言葉が圧倒的多数を占めており、それが全て目の前にいたリュウヤに集中したのだ。


「心中、お察しします。」


とはノワケ。笑いを噛み殺していることが丸わかりである。


「リュウヤ陛下は、お胸が大きい方がお好きなんですか?」


アナスタシアが尋ねてくる。

その言葉に、サクヤがピクッと反応している。


「気にしたことがないな。胸の大きさで、好きになるなどということはない。

言葉は悪いが、胸の大小などその女性の魅力の一部でしかない。

その一部で、全てを決めるなど愚か者がすることだ。」


わかったような、わからないような顔をアナスタシアはしている。


「陛下は、お胸の大きさで相手を好きになることはない、そうおっしゃっているのですよ。」


サクヤのフォロー。

アナスタシアも理解したようだ。


「まさか、エルフの男どもも胸の大きさで騒ぐとはな・・・」


溜息ばかりが出る夕食時であった。

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