雪祭りの準備 申請書類の山
午前中。
二日酔いの頭を抱えながら、リュウヤは執務室の机に向かっている。
雪祭りの雪像製作チームの受付が終わり、その確認のためである。
参加するのはギイのドヴェルグチームにトルイのドワーフチーム。
エルフたちも、アンセルミを中心としたチームと、トライア山脈の北方を拠点にしているナルディルのチーム。
ん?
トライア山脈北方の者たちのチーム??
「北方の者たちも参加するのか?」
リュウヤの言葉に、ミーティアが答える。
「はい。リョースアールヴのルーディ様も参加されますし、デックアールヴからもイェレミアス殿がチームを作って参加されます。」
なるほどと思い、思考を停止しかけるが何かが引っかかる。
そう、何かが。
トライア山脈北方の者たちは、どこを通ってここに来るのか?
二日酔いて痛む頭をなんとか回転させながら、考える。
「ミーティア、もしかしてバトゥ王も参加するのか?」
北方から来るのなら、ドワーフの王国カルバハルを通ってくるはず。
そうなると、必ず何をしに行くのか聞かれるだろう。
いや、雪祭りの招待状は送ってはいる。
だから来るのは問題ないのだ。
だが、雪像作りのことを知ればどうなるか・・・。
「はい、参加申請が出されております。
それと伝言もいただいておりますが、お読みいたしましょうか?」
「いや、読まなくていい。内容は想像がつくから。」
「想像がつきますか?」
「そういう楽しそうなことをするなら、招待状より参加要請を出せ!とか、俺を除け者にするな!!とかだろう。
あと、酒をたっぷり用意しろ、とかだな。」
リュウヤの言葉に、ミーティアら秘書官たちが大笑いする。
「凄いです!全く同じ内容が書かれています!」
秘書官のひとりが口にする。
オスト王国との戦いでは、
「俺にも一枚噛ませろ。」
と押しかけてきたくらいなのだ。
何か大騒ぎできることがあれば、積極的に参加しようとしてくるだろうことは予想できる。
一層、頭が痛くなってきたような気がするが、これは二日酔いだけではないだろう。
一層痛くなった頭を抱え、参加チームの確認を進める。
龍人族からもオボロを中心にチームが組まれているらしい。
スティールもデックアールヴチームの中心となっているようだ。
リョースアールヴも、フェミリンスの付き人であるリューディアを中心にチームを組むようである。
アルナック村からはギドゥンを中心とした種族混成チーム。
他の村からも参加申請が一チームずつ出されている。
また、蟲使いたちも参加申請が出ている。
「20チームくらいか。
初回としてはまずまずだな。」
リュウヤはそう感想を口にするが、
「まずまずなんてものではありません。
予想以上というべきでしょう。」
とは、責任者となっているアデライードの言葉。
「たしかにそうだな。」
参加チームが多いということは、それだけ関心を持たれていたということ。
そして、冬の娯楽が少ないことの裏返しでもある。
「屋台などの方はどうなっている?」
「そちらの手はずも整っております。
ですが、そちらの申請を見るに、似たようなものばかりになってしまっており、懸念されるところです。」
屋台の申請書類を見ると、串肉が多い。
「冬の屋台なんだから、温かい汁物なんかもあるといいのだがな。」
そう呟きながら、腕組みをして考える。
味噌があれば、具材たっぷりの豚汁のようなものだって出せる。
麺があれば、ラーメンのようなものを・・・。
「ミーティア、午後のスケジュールはどうなっている?」
「雪祭りの雪像設置場所の視察となっております。」
「それは全てアデライードに任せる。
俺は、屋台で出せる料理の試作をする。」
そう言ってアデライードを見る。
「わかりました。それでは雪祭りの雪像をはじめとした設営は、私が一任されたということでよろしいでしょうか?」
「それでいい。」
そう答えると、秘書官のひとりに用意してほしい食材のメモを渡し、食材管理担当者の元に行かせる。
リュウヤが久々に料理の試作をすると聞き、秘書官や侍女たちは歓声をあげ、リュウヤは頭の痛みがどこかに行ってしまったかのように、味の組み立てを考えていた。