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龍帝記  作者: 久万聖
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トール族

新しい種族の登場です

 王といっても、やることは特にない。


 2千人足らずの、国というよりも集落といったほうがぴったするような状況なのだ。これで王としての職が忙しいほうがどうかしているだろう。


 だいたいのところは、サクヤやギイのところで治り、リュウヤのところまであがってくる案件はない。


 なので、リュウヤは街の建設現場で汗を流している。

 やることがないからといって、ジッとしていられない。いや、ジッとしていると落ち着かないというのが正解か。

 また、ギイらドヴェルグの職人に頼んだ木材加工のための道具を試すという目的もある。なにせ、この世界には斧やノコギリは有っても、カンナやノミのような道具がない。それらの形状を伝え、試作してもらったのだ。


 リーマンショックによる影響で、会社をクビになってから様々な仕事をしてきたのが、こんなところで活きるとは思いもよらなかった。あの頃は、食べるために多種多様な仕事をしてきたものだ。日雇いの土木作業員から警備員、派遣の工場勤務もしてきた。それらの中には木材加工もあった。


「どうだい、新しい道具の使い心地は?」


 ドゥーマという若いドヴェルグが話しかける。


「なかなか使い心地がいい。量産できたら、他の国に売り出せるかな?」


「それはどうかなあ?」


 リュウヤがやろうとしているほどの木材加工を、他の国の職人がやろうとしているのか?またそこまで加工された木材を必要とする、需給があるのか?そう指摘される。


「需要と供給だな。」


 まさに資本主義経済。

 木材そのものの需要はあるだろうから、それを搬出することで現金収入は得られるだろう。それに付加価値をつけられないかと、思案したりもする。

 こうなるとやっていることは、建国というより起業である。


 "リュウヤ、侵入者だ"


 上空を巡回しているシヴァから念話が入る。


 "場所を教えてくれ"


 場所は・・・



「タカオ。ミカサを呼べ。」


 タカオと呼ばれた、リュウヤの側仕えの龍人族の青年は、リュウヤに一礼するとミカサを呼ぶために駆けていく。ちなみに、タカオは高尾山からとられており、ミカサも三笠山からである。


「リュウヤ様、お連れしました。」


 タカオとミカサが跪く。公的な場でない限り、陛下といった尊称は使用させていない。


「シヴァから連絡があった。森への侵入者だ。」


 森はあまりに広大なため、4〜5人一組で五組の巡視隊を組織している。それに、上空からのシヴァを含めて四方に巡回させている。そして一組を予備として残している。今回、予備として残っていたのがミカサ班である。


「近隣の班も行かせるが、場所的にはお前たちが行くのが一番早い。」


「承知致しました。すぐに向かいます。」


「わかっているとは思うが、戦うことが目的ではないぞ。」


 敵意の有無の確認と、侵入した目的。敵意があるならば排除するが、敵意なく、目的も無害ならばこちらまで案内させる。

 なんにせよ、ミカサ班が接触してからの話だ。

 ミカサ班を送り出したあと、そう結論づけて作業に戻った。



 2時間ほどして念話が届く。


 "リュウヤ様、シズクです"


 シズク?別の巡回班の班長だよな?

 疑問に思いながらも返事をかえす。


 "侵入者の件なのですが、勝手ながら班を再編して戻ります"


 "再編?"


 "詳しくは戻り次第お伝えします。それと、怪我人がありますので、治療の準備をお願いします"


 "了解した"


 怪我人が出るほどのことがあった。死者がいないなら、良しとしよう。

 サクヤに念話を飛ばし、巡回班に怪我人が出たことと、その治療が必要なため準備をするよう指示を出し、シズク班が戻るのを待つことにした。



 シズク班が戻ってきたのは、1時間ほど経ってからだった。

 再編したため、全員が女性になっていたが、時間がかかったその理由は一緒に連れて来ていた者たちだった。

 男女合わせて50人ほど。それだけならば、おかしなことはない。その男女、問題はその体長だった。男で約3メートル、女でも2.5メートルある。


「あれはトール族です。」


 サクヤがリュウヤに伝える。


「トール族?」


「はい。」


 サクヤはトール族について説明する。

 トール族は分類としては巨人族に属するのだという。ただ、通常の巨人族が6メートル以上あるのに対し、トール族は最大でも3メートルほどにしかならない。それでも、その巨体に見合う怪力の持ち主であり、働き者であるため、地域によっては労働力として重宝されている。


 ただ、その知能が低いために騙され、奴隷として扱われることも多いのだという。


 このトール族は、そういった奴隷という状況から逃げ出して来たのだろうか?


 トール族の様子をみると、非常に怯えた表情をしており、身体のあちこちから血が出ているようにみえる。


「戻りました、リュウヤ様。」


 シズクはリュウヤのもとにくると、跪き帰還報告をする。


 どうやら、ミカサたちが発見した時には興奮状態にあったようで、それを宥めるのに苦労したらしい。その後、シズクたちが合流、女性たちが宥めてようやく大人しくなったのだとか。ここに連れて来るのも、男がいるよりも女性ばかりの方がいいだろうと、再編したと。


「ご苦労様。」


 シズクたちをねぎらい、


「申し訳ないが、そのままサクヤを手伝ってやってくれ。」


 トール族の治療をするサクヤらを手伝うよう指示をする。


「わかりました。」


 シズクたちはそのままサクヤの指揮下に入る。


「サクヤ。」


 リュウヤはサクヤを呼ぶ。


「トール族の治療と同時に、彼らから何があったのか聞き出してくれ。」


 リュウヤ自身が聞き出したい気持ちはあるのだが、男の自分がいてはまた興奮状態になるかもしれない。だから、頼む。


「わかりました。ですが、少し時間をいただきたく思います。」


 興奮状態にあるだけでなく、元々知能が低いという。話を聞き出すのも時間がかかるのは、当然のことだろう。



 治療を受けるトール族を見ながら、今後のことを考えるリュウヤだった。


今回登場したトール族ですが、最近のある車のCMを観て思いついた種族です。

ですので、当初は登場することはなかったんですよね。

それなのに登場させたのは、リュウヤの統治する姿勢を見せるのにちょうどいいから。

それは、次回あたりから見せることができると思います。

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