おめかしユーリャとサクヤのミス
操作ミスで消してしまって放心してました
一方のユーリャはというと、勝手に色恋沙汰の達人認定しているレーラの指導のもと、コーディネートに勤しんでいる。
「こっちの方がいいと思いますよ。」
レーラは20代前半の女神官である。
新しく立ち上がった大地母神聖女派においては、ユーリャの身近に仕える侍祭を務める。
大地母神神殿に入ったのは10歳の頃。
ユーリャやアリフレートと出会ったのは3年前、総本山より聖女を迎えるべく派遣された一団のひとりとして、ルーシー公国の辺境の神殿に派遣されたときだった。
それ以来、この人懐っこい聖女さまに非常に懐かれている。
レーラ個人としては、状況の激変に着いて行くのがやっとなのだが、それでもこの聖女さまと一緒にいるのは楽しい。
「地味じゃないかなあ?」
レーラの選んだ服に対するユーリャの反応。
「リュウヤ陛下のお付きの方々を見るに、飾りの少ない清楚な装いが好まれると思いますよ。」
レーラも、ユーリャに付いて一緒に王宮に行ったこともある。
その時にリュウヤ付きの侍女たちを見ている。
「それもそうか。」
そう納得して着替えようとした時、
「ユーリャ。陛下が迎えに来られていますよ!!」
「えっ?!ちょ、ちょっと待って!!」
アリフレートの声に慌てるユーリャ。
「早くしなさい。」
アリフレートがそう言うが、
「慌てさせるなアリフレート。女性というのは、身嗜みに時間をかけるものなのだぞ。」
リュウヤがアリフレートを宥め、そしてユーリャに声をかける。
「応接間で、茶でも飲んで待っているぞ。」
その言葉にホッとして、いそいそと準備を整えていく。
そして10分ほどして、ユーリャはリュウヤの待つ応接間に姿を見せる。
「ど、どうかな?」
はにかみながら、リュウヤに問いかける。
聖女だとわからないように、町娘のような服装をしている。
「似合っているな。だが、急いできたのだろう?
髪飾りが少し曲がっているぞ?」
その髪飾りをリュウヤが直してやり、
「では、行こうか?」
「はい!!」
「いい返事だ。」
ユーリャの頭に軽くポンっと手を乗せ、リュウヤは歩き出し、一緒に出て行く。
その姿を見てアリフレートが、
「あまり煽らないでください、レーラ。」
「なんのことです?」
「リュウヤ陛下との外出が決まってから、随分と煽っていたでしょう?」
「ばれてました?」
「あからさま過ぎます。リュウヤ陛下は、確かにユーリャを守ってくれるでしょう。
ですが、サクヤ様という婚約者がおられるのです。」
「ですが、今回のことはそのサクヤ様がお認めになっているのでしょう?」
だから良いではないかと、レーラは言う。
だからこそマズイのだと、アリフレートは思う。
アリフレートとレーラ、ふたりはそれぞれの見解を口にすることはなかった。
「本当によかったの?」
昼食をともに摂りながら、アイニッキはサクヤに確認している。
「私が言い出したことですから。」
リュウヤが収穫祭に出ないための交換条件。
それを出したのはサクヤ自身。
「またいい子になっちゃったわね、サクヤちゃんは。」
呆れたようにアイニッキは口にする。
「え?」
サクヤはアイニッキを見つめる。
「今回のこと、周りからどう取られるか理解してないでしょう?」
「・・・・・・?」
キョトンとした顔をしているサクヤに、アイニッキは言葉を続ける。
「サクヤちゃんは、リュウヤさんがお妾さんを作ることを積極的に認めた、そう取られるのよ。」
「!!」
すでにアナスタシアという、セルヴィ王国第一王女の輿入れは為されている。
だがこちらは政略という意味合いが強く、そのことを皆が理解している。
しかし今度は違う。
「聖女」といえどもユーリャは平民。それを側室とすることをサクヤが認めた、しかも積極的にとなれば、リュウヤの近辺には自らの娘、もしくは本人が売り込みに殺到する可能性がある。
サクヤとしては、あの場を治めるための処置であったのだが、周りもそう取るとは限らない。
頬杖をついてアイニッキは、
「やっとわかったかしら?」
悪戯っぽい顔をして言う。
「ど、どうしたら・・・。」
慌てるサクヤに、
「リュウヤさんがなんとかしてくれるわよ。
このことに気づかないような、鈍感な人じゃないでしょ。」
確かにその通りだが、すべてをリュウヤに押し付けるのは心苦しい。
ただ、そうは言っても自分にどうにかできることでもない。
サクヤには、心の中でリュウヤに謝罪することしかできなかった。
メモって、重要・・・。




