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龍帝記  作者: 久万聖
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龍人族への名付け

やっと名付け。

 リュウヤからしてみれば騙し討ちとしか言いようのない、王位推戴の翌日。

 リュウヤが最初にした仕事は、役割分担と、龍人族のみんなの名付けだった。


 役割分担に関しては、それほど難しいものではない。


 なにせ、龍人族とドヴェルグを合わせてたかだか2千人弱の人口しかいないのだ。やれることは限られているし、優先するべきことを割り振るだけのことだ。


 まず、ドヴェルグたちは基本的にギイがまとめ役になり、指揮をとる。彼らがやることは、あまり変わらない。なにせ彼らが作り出す細工物が、この地における数少ない換金できる特産品なのだから。それが無ければ食料の購入ができない。将来的には、食料の完全自給としたいが、現状では購入するしかない以上、ドヴェルグたちにはそちらを優先してもらう。ただ、それでも生産に差し障りが無い人員を供出してもらい、街の建設のための開墾、開発に協力してもらう。その人員は、今のところ7〜80人になりそうだ。


 龍人族もこれまで通りに巫女姫がまとめることになる。そして龍人族は街の建設と、森の恵み(食料)の調達。食料に関しては、田畑の開墾も検討しなければならないが、そこまでは手が回らない。街の建設がひと段落ついてからになりそうだ。さらには、シヴァにも協力してもらうが、この領域への侵入者への対応という、いわば警察的なことをする必要がある。そうなると、街の建設に投入できる龍人族も50人前後となる。


 圧倒的な人手不足だ。しかも、数ヶ月後にはイストール王国の使節団の受け入れもあるのだ。


 やりたいことよりも、やらなければならないことの方がはるかに多い。


 頭が痛いことだが、さらに頭が痛いのは龍人族への名付けだ。本来なら、これはシヴァのやるべきことのはずなのだが、ネーミングセンスが壊滅的に無いらしい。先代の盟友から


「お前は絶対に名付けをするな。」


 そう厳命されたほどの。

 過去にどんな名前を付けたのか、とても興味深いものがあるがシヴァは口を割ろうとしない。

 聞き出すことに労力を使うのも馬鹿馬鹿しいので、名前を考えることにする。


 最初に来たのは依代になった少女だ。


 この子の名前は、すでに決めている。自分と、一部とはいえ魂の繋がりがあるのだから、「龍」の字を使うことにする。もっとも、この世界で漢字を使うことはないだろうが。


龍音(リュウネ)。君の名前だよ。これからはリュウネと名乗りなさい。」


「ありがとう、りゅーやさま。」


  とても嬉しそうな顔をしている。



 リュウネのような例外はあるが、基本的に男性には日本の地名を、女性には基本的に自然現象から付けることにした。

 ただ、巫女姫付きのふたりには例外として「(トモエ)」と「(シズカ)」とした。もちろん、「巴御前」と「静御前」からとったものである。


 そうやって、みんなに名前を付けていく。

 最後に残ったのが、巫女姫である。

 とても気まずそうに、リュウヤの前にやって来る。

 リュウヤは巫女姫のサポート役、そうふたりの間で話がまとまっていたのを、みんなの総意でひっくり返してしまった。しかも、リュウヤが戸惑っているところをあっさりと寝返ったのだから。


「怒って、いますよね?」


 伏し目がちに言う。

 リュウヤは能面のように無表情でいる。


「あ、あのっ、私・・・」


 慌てる巫女姫。その姿を見てリュウヤは笑いを堪えている。


「クックック・・・。」


 その様子に気づく巫女姫。


「リュウヤ様、私をからかわれていたのですか!?」


「いや、悪い悪い。ここに来るときの顔を見てたらイジメたくなっちゃって。」


 悪びれずに笑うリュウヤを涙目になってにらむ。

 そんな巫女姫を見ながら、


「昨日のことは、もういいんだよ。」


 えっ、と驚く巫女姫に、


「なんだかんだ言っても、それを受け入れたんだから。」


 本当に嫌なら、それこそ皆んなが寝た隙にでも逃げ出せばいいし、強行突破して逃げることもできた。


「それなりに、この地に愛着がわいたんだよ。」


 シヴァに言われたこともある。


 "この地をこれだけ変化させておいて、その責は負わぬのか?"


 と。


 実際に、この目で見て驚いた。あの時、自分がイメージした通りになっていたのだから。その責から逃げるのかと言われたら、逃げるわけにはいかないだろう。

 王になったと言ってもやることは、龍人族とドヴェルグの間の調整くらいだ。この先はわからないが。


「さて、君の名前だけど・・・」


 巫女姫の名前が一番悩んだ。その美貌から選ぶのか、巫女という立場から選ぶのか。


「サクヤ。それが君の名前。」


 木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)から選んだ。とても美しいと言われる日本神話の女神。水を司る女神であり、富士山の噴火を鎮めるために浅間大社に祀られている霊験あらたかな存在。


「サクヤ・・・。サクヤ。」


 自分の与えられた名を確かめるように、何度も呟く。


「気に入ってもらえたかな?」


「はい!とても!!」



 こうして、龍人族への名付けは終わった。


これからは名前で表記できる。


固有名詞、特に人名が無いと表現に苦労するものですね。

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