表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍帝記  作者: 久万聖
287/463

雪まつりの準備

謹慎も残り10日。


身体の方は痛みもなく、元に戻ったように感じられる。


ただ、それも日常生活でのこと。

戦いとなれば身体の動かし方も、力の入り具合も違う。


試そうとするなら、やはりそれなりの強者を相手にするしかない。


だが、誰が相手になってくれるやら。


第一候補の龍人族は、そういう話題から逃げ回っている。


すると鬼人(オーガ)族か。


だが、その鬼人族も名うての強者である3人を叩き潰したからなあ。


そうなると、誰が相手をしてくれるやら。


そんなことを考えていると、扉を叩く音がする。


今日の当番である、人間族の侍女リゼッタと夢魔族の侍女メッサリーナが対応する。


来訪者はギイとトルイ。


ふたりは入室するなりリュウヤに詰め寄る。


「いつやるんじゃ!?」


「いつやるのです!?」


は?


いったいなんのことだ?


なんのことかわからないという顔をしているリュウヤに、苛ついたようにふたりが一層詰め寄ってくる。


「昨冬、次の冬から始めると仰っていたではありませんか!!」


机を叩き、トルイが大きな声で言う。


昨冬・・・。


ドヴェルグとドワーフ・・・。


「ああ、そうだったな。もうそんな時期か。」


そう言って窓からトライア山脈の方を見る。


山頂付近から少しずつ、雪化粧が始まっていることがわかる。


昨冬、リュウネやトール族が作っていた雪だるまを見て、雪像作りを含めて"札幌雪まつり"のようなイベントができたら、そんなことを話していたっけ。


「雪が本格的に降るのはいつ頃になるかな?」


このあたりのことは、トライア山脈北方に住んでいたアールヴやエルフたちに確認する必要があるだろう。


いや、この場にはトライア山脈を住処としていたドワーフがいる。


「一月半もすれば本格的に降りましょう。」


すると、雪像作りができるほど積もるのは二ヶ月後くらいか。

ならば開催は、


「三ヶ月後だな、開催は。」


リュウヤはそう口にする。


「三ヶ月後じゃな!」


言質をとったと言わんばかりに、ギイはリュウヤに顔を寄せる。


「あ、ああ、三ヶ月後だ。」


「聞いたかトルイ!!三ヶ月後に、引導を渡してくれるわ!!」


「何を言われますか!!引導を渡すのはこちらの方です!!」


リュウヤの前で睨み合うふたり。

漫画的に表現するなら、ふたりの視線の間には火花が散っていることだろう。


「細かいことは、追って知らせる。

それでいいな?」


「「もちろん!!」」


異口同音に返事をすると、睨み合いを続けながら退室するという器用な技を見せた。















昼食の時間。


リュウヤの私室に来ているのはサクヤとアデライード。


レティシアとマロツィアもいる。


そこで、先ほどのギイとトルイとの話を伝える。


「それは面白いことですわ。」


アデライードの言葉だ。


「是非とも、これを大きなイベントにしましょう!」


アデライードにしては珍しく、興奮しているようである。


こういうイベントの価値を最も理解しているのが、アデライードである。

このイベントを通じて、色々なことが行えることが嬉しいのだろう。


「昨年通りなら、冬は雪に埋もれてしまって娯楽がありませんからね。」


とはサクヤ。


そう、それだからこそリュウヤも使えると考え、札幌雪まつりのようなものにしたいと思ったのだ。


「陛下。この件、私に仕切らせていただけませんか?」


「アデライードがやってくれるというのなら、これほど心強いものはない。

だが、仕事を抱え過ぎてはいないか?」


内政の大部分はアデライードが担当している。

産業振興にインフラ整備。財務関連もアデライードが担当しており、外交交渉に駆り出されることも多々ある。

それに加えて、今回の仕事を加えることは躊躇われる。


「いえ、外交に関してはカルミラ殿が対応できますし、財務はライラ殿が。

産業振興やインフラ整備に関しては、雪の積もる中で作業はできません。」


なるほど、季節柄、できる仕事が激減してしまうということか。


なら、全てを任せても良いのだろう。


「わかった。任せよう。

俺がすることがあれば、いつでも伝えてくれ。」


「ありがとうございます。

陛下には、後ほどお願いしたいことがございますので、お時間を頂ければと。」


「謹慎中の身だ。いつでも来たらいい。」


「わかりました。」


アデライードが何を求めているか、大凡の予想はついている。

他国への招待状の発送だろう。

そこに、国王の名を入れることでイベントの箔をつける。


アデライードの方を一瞥すると、どうやらこちらが予想をつけていることに気づいているようだ。


アデライードは一礼すると席を立ち、退室していった。









2時間ほどして戻ってきたアデライードの要請は、リュウヤの予想したものと同じだった。


招待状の宛先は、イストール王国、オスト王国、セルヴィ王国、パドヴァ王国の有力者。


そして、有力商人だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ