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龍帝記  作者: 久万聖
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眠り

 祭壇の間。


 祭壇の上にリュウヤは横たえられている。


 死んでいるわけでなく、眠りについている。


 もう、三十日もの間、眠り続けている。


 小型化してリュウヤの側にいるシヴァの見立てでは、魔力の使い過ぎだろうとのこと。

 巫女姫は、眠り続けるリュウヤを見て思い出していた。


 この数年、まとまった雨など降らなかったこの地に、豪雨といっていい大雨の雨音で目が覚めた。

 珍しいことだと窓から外を見て、違和感を覚える。雨が降っているのに、岩山の居住区の周囲が濡れていない。

 そこにシヴァからの念話が届く。


 "目覚めたか、巫女姫よ。"


「はい、シヴァ様。」


 "供を連れて、大扉の前に来い。リュウヤが倒れている。"


「リュウヤが倒れている」、その言葉に急いで向かった大扉の前で見たもの。倒れているリュウヤと、リュウヤが濡れぬように覆い被さるシヴァの姿だった。


「この雨は、リュウヤ様が?」


 "無茶をしよるわ、この男は。"


 シヴァが呆れたように言う。だが、本当にシヴァが呆れているのは、本来なら倒れた時点で止まるはずの魔力の放出が続いていることだ。それは、リュウヤの魔法が未だに続いていることを意味する。


 七日後に雨が止む。


 雨が止み外に出たとき、誰もがその変化に驚愕した。

 周囲の岩肌を晒していた山々が、緑に覆われていたのだ。

 それだけではない。荒涼とした大地には草が生い茂り、その草を食む小動物たちがいる。


「何が起きてるんだ?」


 龍人族の戸惑いは、これで終わらない。


 次の七日後には木々が聳える森になり、山々から小さな川が流れる。川には魚が泳ぎ、木々には鳥が巣を作り囀っている。


 さらに次の七日後には、森の一部はさらに鬱蒼と生い茂った森となり、大型の動物が住み着く。小川が集まり大河へと変わる。大河にはより大きな魚が泳いでいる。


 そして次の七日後には、西の外れに湖沼地帯が現れる。その湖沼では水鳥が羽を休めている、のどかな風景。



 最初は戸惑っていた龍人族も、それが誰の力によるものかを理解していった。



 魔力の放出は28日目で止まっている。あとは魔力と体力の回復を待つ。そしてリュウヤの中に残る、かつて始源の龍の贄となった者たちの魂との対話。それらの魂が融合されたそのとき、リュウヤは目覚めるだろう。


「なぜ、私はなにもできないのでしょうか。」


 シヴァの言葉に頷きながらも、見守るしかできない自分の無力さを嘆いていた、



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