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龍帝記  作者: 久万聖
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セルヴィ王国との条約締結

セルヴィ王国とのコスヴォル地方譲渡交渉及び、攻守同盟、国交の樹立が正式に成立する。


コスヴォル地方譲渡と、それに付随する条件。


1.龍王国(シヴァ)は条約成立後、速やかにコスヴォル地方をセルヴィ王国に引き渡すこと。


これは、既に事実上引き渡されているものを、形式面でもセルヴィ王国に引き渡すというものだ。


2.セルヴィ王国はその対価として、公金貨500枚を支払うこと。


これに関してリュウヤは当初、受け取りを拒否していたのだが、アデライードから、


「相手の矜持(きょうじ)を傷つけてはなりません。」


と諭され、受け入れることになった。


セルヴィ王国にしてみれば、どう取り繕っても龍王国が主たる兵力と見られてしまっており、少しでもその見方を薄めたいのだ。


その意を汲み取り、リュウヤは受け入れることにしたのだが、セルヴィ王国の財政に負担をかけない額をと、要求を示したところ、公金貨500枚と定められた。


3.コスヴォル地方に所蔵されている書物を複製して、龍王国に引き渡すこと。


原本(オリジナル)を持ち帰る気はないが、図書館の充実のためにも、書物は欲しい。


活版印刷機と紙を持ち込み、複製することに。


また、セルヴィ王国本国にも持ち込み、書物の複製をする。

こちらは、単なる収集というだけでなく、アナスタシアの教育のためにも必要ではないかという配慮もある。

日本に住んでいるとなかなか理解できないのだが、自分の生国の歴史を知らないというのは、かなり馬鹿にされることなのだという。


現代地球ですらそうなのならば、この世界の、特に王族となればその傾向はより強くなるだろう。


コスヴォル地方譲渡の条件は、以上となる。


そして、攻守同盟の要件。


これはかなり片務的な要素を取り入れている。


その骨子となるのは、セルヴィ王国が攻撃を受けた場合、龍王国は自動参戦する義務を負うのに対し、龍王国が攻撃を受けた場合、セルヴィ王国にはその義務がない。


日米安保条約によく似た内容である。


ただし、日米地位協定のようなものは結んでいない。

そのため、龍王国軍がセルヴィ王国領内を許可なく通行・通過することはできないし、セルヴィ王国領内で龍王国軍の兵士が罪を犯せば、その処罰権はセルヴィ王国にある。


そして、国交を樹立するにあたり結ばれる修好条約。


その内容はというと・・・。


関税自主権を互いに持つこと。

犯罪者の裁判権・処罰権は互いの国が持つこと。

犯罪者の相互引き渡しなど、多岐に渡る。


これらを7日あまりの期間で、よくまとめ上げられたものだと感心する。


これも、アデライードという優秀な人材のおかげだろう。

相手、セルヴィ王国にとってはやりづらかったであろうが。


その証拠に、


「あんたの所は、新興国だから武に偏っているとばかり思っていたんだがな。」


と、シニシャが愚痴をこぼしている。


事実、どのような大国であっても、勃興期は武に偏っているものであり、アデライードのような内政・外交の天才を部下にしている事例は多くはないのだ。


リュウヤとアレクサンダルが互いの書面に署名をして、これらの条約は即日発効される。


これにより、龍王国は東方国境の安定を、セルヴィ王国にとっては西方国境の安定と龍王国という後ろ盾を得たことになる。


セルヴィ王国とオスト王国の間は、必要ならば両国がなんらかの条約を結ぶことだろう。

そのための下交渉を、どうやらこの期間に行っているようだ。


両国の状況を考えれば、少なくとも中立条約か相互不可侵条約くらいは結ぶに違いない。


オスト王国は先の戦いの傷が癒えておらず、またセルヴィ王国には単独でオスト王国と戦う力は無い。


また、セルヴィ王国が龍王国の後ろ盾を得たとはいえ、龍王国がオスト王国から人質をとっている状況では、セルヴィ王国が戦おうとしても龍王国によって止められるであろう。

それは逆も然り。


ゆえに、セルヴィ王国は周辺諸国をまとめるために動くことになるだろう。かつて、シニシャがリュウヤに伝えたように。


そして、オスマル帝国の進出に備える。


一方でオスト王国は、まずは先の戦いの傷を癒すことに専念することになろう。

そして、弱体化した今を好機とみて、攻勢をかけてくる国々もあるだろう。


それらに対処するには、セルヴィ王国との和平が必要なのだ。


両国の利害を考えるならば、和平以外の手段はない。


署名が終わると、リュウヤとアレクサンダルは握手を交わす。


一斉に拍手が湧き起こり、署名式は終わりを告げる。


沸き起こる拍手の嵐の中で、アレクサンダルはリュウヤの前で初めて父親としての顔を見せる。


「娘を、アナスタシアをよろしくお願いします。」


その言葉にリュウヤは、


「私にできる限りのことは、いたしましょう。」


そう答えた。


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