表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍帝記  作者: 久万聖
26/463

奇跡

 翌朝、フィリップ、ウリエの両王子とともに朝食兼会談を済ませる。

 内容は、イストール王国の内部を固めたあと、イストール側から使節団を派遣。その時に友好関係を結ぶための条件を詰め、調印をする。また、イストール王国の新王即位式には、龍人族からの参列を求める。

 新王即位が先になるか、使節団の派遣が先になるか。

 それは流動的ではあるが、方向性は固まった。

 あとは龍人族のところに戻るだけだ。


 王宮の外に出ると、シヴァとふたりの龍人族が待っており、ジゼルも来ていた。

 シヴァの傍らにはかなりの量の食料がある。手土産というやつだろう。

 リュウヤたちがシヴァの背に乗ると、シヴァはゆっくりと飛翔を開始する。

 その姿をふたりの王子とジゼルが見送っていた。



 龍人族の住む岩山が見えてくると、眼下にはデュラスに率いられてイストール王国へと戻る者たちが見える。一日で立て直すとは、デュラスの手腕は見事なものだろう。



 龍人族とドヴェルグたちが待つ場所に、ゆっくりとシヴァは降りていく。その背からリュウヤたちが降りると、大歓声に包まれる。


「お疲れ様でした、リュウヤ様。」


 巫女姫が先頭に立ち、出迎える。


「ただいま戻りました、巫女姫さま。」


 リュウヤより先に帰還の報告をするふたり。

 普段、常に側に仕えていたのだからそれも当然か。


「おう、戻ってきたな。」


 ギイが声をかけてくる。


「イストールから食料と酒を持ってきたよ。」


「酒!!」


 食料よりも酒という言葉に反応する。


「今夜は戦勝祝いもこめて、たっぷり飲むぞ!!」


 ギイの言葉が引き金になり、なし崩しに宴会が始まる。

 まだ日が高いのにとリュウヤは思うが、それは野暮な言葉だろう、今は。

 始源の龍の復活と、それに続く戦闘の勝利。

 酒を飲む理由には十分だろう。

 なし崩しに始まる宴の波に、皆が飲み込まれていった。



 皆が眠りについた頃、リュウヤは大扉の前にいた。

 月明かりの中、かつては緑の大地だったという荒涼としたこの地を見下ろす。


 "何をするつもりだ、リュウヤ"


 小型化したシヴァがリュウヤの目の前に現れる。


「魔法ってのは、基本的にイメージを強く描くことで発動するんだよな?」


 シヴァの問いに直接は答えず、確認する。


 "うむ、イメージを強く描くことができれば、それこそ奇跡と呼ばれるほどの魔法を使うことができる"


 無論、その者が持つ魔力量にもよるが。

 その言葉を聞き、リュウヤは目を閉じる。



 意識を集中させ、



 イメージを強く描く。



 豊かな森を。



 豊富な水を。



 豊かな生命を。



 鳥の囀り。



 虫の鳴き声。



 巨大な木々。



 美しく清かな水の流れとせせらぎの音。



 シヴァはリュウヤの身体から立ち昇る、異常な魔力を感じとる。


 "やめろ、リュウヤ!!"


 シヴァの念話も、リュウヤに届かない。恐ろしいまでの集中力。

 やがて雨が降りだす。雨は徐々に強く、激しくなっていく。激しい雨が、岩山の洞窟に入らぬよう、同時に魔法による障壁を作り上げる。


 "天気を操るとは・・・"


 シヴァですら驚くほどの大魔法なのだろう。それほどの大魔法なら、当然のように代償をともなう。ましてや、魔力を扱うことを覚え始めたばかりの素人ならば尚更だ。リュウヤはその場に倒れこむ。

 そのリュウヤの身体が濡れないように、元の大きさに戻ったシヴァが覆いかぶさっていた。




 この日より、この世界は激しく動きだすことになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ