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龍帝記  作者: 久万聖
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ユーリャたちの活動

大地母神神殿に行っていたタカオらも、無事に祝勝の宴に参加し、その翌日。


援軍として来ていたイストール王国軍をはじめ、ドワーフ王国軍、パドヴァ王国軍はそれぞれの国に帰国する。


また、戦いに馳せ参じたトライア山脈以北のエルフや両アールヴたちも、(一部はこの地に留まるようだが)多額の報酬を得て帰郷していった。


そういったことがひと段落ついた昼過ぎ、リュウヤとユーリャ、ギイ、アリフレートらはこの地に建造する大地母神神殿の候補地を見て回る。


ユーリャの希望は、


「岩山の王宮に近い場所。」


とのことであるが、あまり近すぎても問題がある。

神殿への参拝者が多くなり、岩山の王宮近辺まで人が溢れるようになっては、行政的にも、また軍事的にも悪影響を生じかねない。

また、リュウヤが目指す政教分離にも、影響を与えかねないため、ある程度の距離が必要になる。

そのことを指摘されると、


「むー!」


と、ユーリャは頰を膨らませる。


「ユーリャ様、わがままを言ってはダメですよ。」


とアリフレートに窘められる。


とはいえ、ユーリャは龍王国の"宗教アドバイザー"として岩山の王宮に住むことが決まっているため、あまり離れていても困ることになる。


彼女が、なにを助言(アドバイス)するのかは謎であるが。


建材についても、ユーリャの希望する木材をメインにしたものになることが決定しており、その伐採地も定めなければならない。


ちなみに、ユーリャが木材の使用を希望したのは、


「木の方が温かみが感じられるから。」


とのことである。


これは、幼子であった時から家族と引き離されていた、その成育環境が影響しているのだろう。

その時に住んでいたのが、石造りの神殿だったそうだから。


候補地は今日決定されるわけではなく、さらに協議を重ねることになる。


建設開始は来春以降の予定とされており、それまでは岩山の王宮近辺に仮神殿を建てている。


また、ロマリア村にある神殿は改築して、孤児院へと用途を変える。

その運営には、リュウヤ個人からの資金援助がなされることになっている。

国としての援助では、政教分離に反することになりうるための措置である。


そして、アリフレートとの協議を重ね、龍王国(シヴァ)での布教活動に関する協定が正式に結ばれる。


その内容は、


•神殿関係者の公職就任の制限を設ける。


•神殿の武装、武力保持を認めない。


•強引な布教活動をしない。


以上の3点が基本となる。


最初の点については、公職という公権力を使用しての布教を禁止するためであり、2点目、3点目は布教トラブルからの、他教徒との争いを防ぐためである。


また、今回の協定は今後来る可能性がある他宗教との、布教に関する協定の基本となるものでもある。










「うーん、やることが多いですね。」


アリフレートがボヤいている。


「この程度でボヤくな。」


とはリュウヤの言葉。


「まだまだこれから、お前のやることは増えて来るのだぞ。」


これは、確実な予言である。


なにせ、"聖女派"ともいうべき宗派を立てるのだ。

本格的に忙しく、また仕事量が増えるのはこれからなのだ。


「その件について、陛下からの助言は無いのですか?」


「俺の助言?

そうだな、優秀な人材の登用と育成。それに尽きるな。」


「やはり、それですか。」


アリフレートは大きく嘆息する。


「千里の道も一歩から、とも言うからな。

まだまだ踏み出したばかりだ。

優先順位をつけて、焦らず、気長にやることだ。」


「わかりました。

そうなると、目下の課題は秋の収穫祭ですね。」


大地母神(イシス)に実りの感謝を捧げる、大地母神神殿としては最大の祭祀が「収穫祭」である。


ロマリア村と岩山の王宮前で盛大に行いたいのだが、肝心の先立つモノが無い。


「陛下・・・。」


「利息は高いぞ?」


アリフレートが最後まで言う前に、リュウヤが混ぜっ返す。


「なっ!」


絶句するアリフレートに対し、


「俺は信徒じゃないからな。」


と、にべもない。


そうは言うものの、金策の辛さはよくわかる。

今でこそ余裕が出てきたが、少し前まではこの国も金策で困っていたのだから。


「ユーリャを利用することになるが、それでも良ければ方法はあるぞ?」


ユーリャを利用するとなると、アリフレートとしては拒絶したいのだが、話を聞いていたユーリャが、


「やる!!」


即答している。


「ですが・・・。」


アリフレートが止めようとするが、


「大丈夫だよ。陛下(へーか)のことだから、ヘンなことはさせないだろうし。」


この言葉にリュウヤは苦笑する。


確かにヘンなことをさせる気は無い。

正確にはユーリャ自身には何もさせることはない。


「ユーリャに巨大な借りを作っている奴らがいるだろう?

奴らに出させればいい。」


「それは・・・・?」


誰、そう言おうとして気づく。


「総本山!」


「近々、こちらに来るそうだからな。

その時に請求してやるさ。」


リュウヤはそう言って笑っていた。




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