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龍帝記  作者: 久万聖
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本交渉開始

王宮内に入る人員は、ここでさらに絞られる。


リュウヤ、シニシャ、デュラス、バトゥに、フェミリンスとタカオ、スティール、ミーティア、コジモが王宮へと入り、他の者たちは別に容易された場へと案内される。


また、アンジェロ・ローレンツ以下の襲撃犯たちは、オスト王国へと引き渡される。


ラスカリス候に案内される王宮内の調度品の数々、見事な物なのだろうが、どうもドヴェルグやドワーフの職人が作成した物を見慣れていると、それほどの物とは思えなくなってしまっている。


それは飾られている絵画や彫刻などの美術品でも同じだ。

これは、リュウヤの審美眼が向上したというところなのかもしれない。


それにしても、王宮内の調度品はもちろん、飾られている美術品の数々を見ていると、なにか美術館に来たかのような錯覚をしてしまう。

ヨーロッパあたりでは、かつては王宮だった所を美術館にしていたりもしているのだから、あながち間違いではないだろうが。


「リュウヤ陛下は、美術品に興味がおありなのでしょうかな?」


リュウヤの様子を見ていたイザーク伯が話しかける。


「絵心がないから描くのはダメだが、鑑賞するのは好きだな。」


リュウヤのような歴史好きには、美術品とは歴史の息吹きが感じられる代物でもある。

2005年の愛・地球博のイタリア館でみた「踊るサテュロス」は、2000年もの間、海底にあったとは思えない物であり、その躍動感に心震えたものだ。


一枚の絵の前で、リュウヤの足が止まる。


「どうしたリュウヤ?」


バトゥが問いかける。そして、リュウヤの視線の先にある絵を見る。


「ほう。技巧は稚拙だが、見るべきものはあるな。」


バトゥの感想に、


「ああ、上手いとは思わぬが、何か訴えかけてくるものを感じる。」


リュウヤが応じる。


「どのあたりに、そう感じるのでしょうか?」


ラスカリス候が話に加わる。


「どこにと言われても困るが、あえて言うならば筆の力強さだろうか。

ただ、殴り書いたように見えなくもないが、それがまた面白い。」


「本人はそれを意図してはおらんのかもしれんな。

ただ思うがままに描いたのかもしれん。

しっかりと基本を学ばせれば、大きく化けるかもしれんぞ。」


「本人にその気があるなら、ギイに推薦してもいいな。」


ラスカリス候は大きく頷き、


「では、本人に希望を聞いてみることにしましょう。」


「その時は、作品をひとつかふたつ持ってくるように伝えてくれ。

それをギイに見せて判断してもらう。」


「わかりました。」






このやりとりを、不審な目で見ているのがシニシャである。


まだ、これから講和を結ぶための舌戦が待っているはずなのに、なぜか和気藹々としたやりとりが行われている。


たしかに昨日の交渉で、最大の懸案であったコスヴォル地方の問題は片付いた。

だが、まだまだ問題はあるのだ。

例えば龍王国(シヴァ)とオスト王国の国境問題。

国境問題なんてものは、コスヴォル地方の帰属問題並みに荒れてもおかしくはない。

なのに、なぜこんなに穏やかな対話ができるのか?

タチの悪いトリックにでもハマってしまっているのではないか?そんな気がしてならない。




シニシャの疑念をよそに、ラスカリス候は交渉の場となる大広間にリュウヤらを案内する。


案内された大広間には、オスト王国側から10名が既に席についている。


これに、自分たちを案内してきたラスカリス候とイザーク伯が加わり、講和の本交渉は開始される。

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