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龍帝記  作者: 久万聖
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ラスカリス候の苦悩

王都グラーツ。


エナーレス候をはじめとする貴族連合軍が敗北を受け、講和派であるラスカリス候が宮廷内をまとめあげていた。


ただ、そのラスカリス候が懸念しているのが、主戦派の残党が蜂起することだ。

そのため、主戦派の残党には監視をつけている。

そして、懸念することはもうひとつ。

それは、リュウヤを襲ったという者が本当に存在するのか?また本当にオスト王国の者なのかという点だ。


それに関しては、捕虜となっているエナーレス候も幾度となくリュウヤに確認をしようとしたのだが、襲撃のことは教えられても、襲撃者の名前は教えられなかった。


これは、リュウヤが徹底して情報を遮断したことによる。


この犯人の名前を伝えれば、口裏合わせをされる可能性がある。その判断から、名前を隠している。

エナーレス候のように、捕虜となっている者ならばいいのではないかという声もありそうだが、貴族連合軍の捕虜は200人強と多く、当然ながら貴族として国を守るための教育を受けているだろう。

脱走された挙句に、名前を伝えられて偽装されては困るのである。


エナーレス候は、リュウヤがどういう条件を突きつけてくるのか、その想定から入らなければならない。

そのため、腹心の講和派貴族を集めて議論を開始する。


出てくると予測されるのは、


・領土の割譲。

特にコスヴォル地方は、まず間違いなく要求される。

このコスヴォル地方は仕方がないかもしれない。いや、この地域は抵抗運動も頻繁にあるため、手放したところでどうってことはない。抵抗運動を抑えるコストを考えれば、手放した方がいいくらいだ。

それに、おそらくはセルヴィ王国が領有することになるだろうが、あの国の国力ならばたかが知れている。

必要ならば、いつでも取り返すことができる。

そうなると、城砦都市フィラハ以北の割譲が、龍王国(シヴァ)相手なら現実的なのだろうか?


・賠償金の支払い。

これは、龍王国の戦費を含めた額となるだろう。

その場合、どれほどの額が必要になるだろうか?


「最初の出兵時の費用が、だいたいの目安になるかと。」


そう発言したのは、財務にいた貴族であるエーリッヒ・イザーク伯爵。

伯爵の爵位を持つが、領地を持たない貴族のひとりである。


そのイザーク伯爵によれば、あの2万5千の出兵の費用は、金貨5千枚分ほどだという。


相手の総兵力が2万前後なら、賠償金はそのあたりになるか、あと1千前後の上積みが必要か。


捕虜になった者たちに関しては、各家で身代金を用意してもらうことになるだろう。


・責任の追及。

これは、どこまでを責任者として追及するべきか。

一番手っ取り早いのは、現国王を退位させることだ。

最も、こちらは「敗戦の責任」ということで、さほど難しいことではない。

そうなると、次の国王を用意しなければならない。

順当に考えれば、現国王アリボ2世の長男ジギスムントになる。

20歳とまだ若く、能力は未知数だが仕方がないだろう。


大きな問題はその3点。

ただ、この3点の履行を保証するために人質を送る必要があるだろう。


その人質に誰を選ぶか。


国王の子というのが一番だろうが、次期国王とするジギスムントにはまだ子がいない。

すると、アリボ2世の子からとなる。

王弟か王妹か。

早急な人選と、それに付き従う者(こちらは貴族の子弟となるだろうが)の人選をしなければならない。


斥候の報告では、リュウヤの親卒する本隊と、コスヴォル方面からくる敵部隊は、明後日にグラーツに着くという。


残された時間は少ない。

その少ない時間で宮廷内をまとめ上げなければならないのだ。


ラスカリス候は、自派閥の貴族を総動員して、反対派や中立派貴族の説得にあたらせていた。

この世界の貨幣とその価値ですが、だいたい


陶貨・・・1円


銅貨・・・100円


大銅貨・・・1千円


銀貨・・・1万円


金貨・・・100万円


となります。

なので、オスト王国が最初に動員した2万5千人の戦費は、現代日本に換算すると約50億となります。


他に、贈答用や褒賞用の白金(プラチナ)貨や真銀(ミスリル)貨があります。

こちらは、あくまでも贈答用や褒賞用なため、一般に流通はしていません。



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