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龍帝記  作者: 久万聖
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クラーゲンフルト平原の戦い 中編

エナーレス候は全軍を前進させて、その兵力差を活かして押し込もうとする。


その貴族連合軍の左側面を、デュラス指揮下のイストール王国騎兵隊が抉るように突入する。


突出してきたこの騎兵隊に対し、エナーレス候は騎兵を持って抗しようとしていた。


その動きを視認したデュラスは、すかさず全軍を右回りに旋回、離脱させる。


「教科書通りの用兵だな。」


デュラス指揮下のイストール王国騎兵隊の動きを見て、リュウヤは感想を漏らす。


大日本帝国陸軍騎兵隊生みの親とされる"秋山好古(あきやまよしふる)1859年2月9日〜1930年11月4日)は、後年、陸軍大学校の教鞭をとった時、学生たちに騎兵の特徴(高い攻撃力と皆無に等しい防御力)を説明する際、素手で窓ガラスを粉砕。血まみれの拳を見せ、「騎兵とはこれだ」と示したという。


高い攻撃力と機動力を生かした一撃離脱戦法こそが騎兵最大の持ち味であり、防御力に乏しいために守勢に回ることのない運用こそが必要なのである。


実際に秋山好古は、日露戦争で当時、世界最強を誇ったロシアのコサック騎兵を相手に堅固な防衛陣地を築いて幾度となく撃退している。


ちなみに、この時に率いていたのは騎兵隊であるが、コサック騎兵を発見するとすぐに全員下馬して、陣地構築をするという、とても騎兵らしからぬ運用をしている。


だが、その秋山好古の活躍もあり、コサック騎兵を封じられたロシア軍は、決定的な一撃を繰り出すことができず、また戦況を好転させられなかったため敗戦へと向かっていくことになる。


デュラスは右旋回して本来の右翼の位置に戻る際、前方にドヴェルグ隊を発見する。

そして、そのドヴェルグ隊が持っている武器を確認する。


ドヴェルグ隊が手にしていた武器、それは投槍(なげやり)である。

戦闘用の投槍は重心が槍先に偏っている。それは、飛距離を伸ばすためだけでなく、落下していく時に貫通力を増すために硬く重い金属を使用しているからである。


その投槍を、ドヴェルグ隊は一斉に投擲する。

ドヴェルグ隊300人が一斉に投擲した投槍300本。

それは、イストール王国騎兵隊を追走してきたオスト王国騎兵隊の頭上から降り注ぎ、その隊列を大きく乱していた。それは、デュラスが態勢を整えて突撃を指示するにも十分な時間を稼いでいた。


「敵騎兵隊に突撃!!」


号令一下、イストール王国騎兵隊は敵騎兵隊に突撃し、蹂躙していく。




その一方で、左翼では戦線が膠着し始めていた。


歩兵が主力のパドヴァ軍2千に対して、貴族連合軍は歩兵を主力とした5千の兵で押し寄せてくる。


中央のドワーフ隊・エルフ隊よりも前に出ているため、孤立、包囲となりそうだったところを、両アールヴ隊の参戦により、なんとか包囲されることなく踏みとどまっている。

パドヴァ軍の右手にリョースアールヴ、左手にデックアールヴがそれぞれ位置している。


両アールヴともに、魔法を使って現状を打開したいのだが、左翼本隊ともいうべきパドヴァ軍の一部が混戦となっているため、使用できずにいる。


そして、龍王国(シヴァ)軍中央では、戦況に変化が生まれてきている。


エルフ隊の矢が尽き、ドワーフ隊・エルフ隊が白兵戦へと移行していったのである。


白兵戦となれば、数に勝る貴族連合軍が有利になる。

徐々に後退を始めていく。


それを見たエナーレス候は、好機到来とばかりに全軍をもって正面を食い破ろうと号令をかける。


「さあ、あと一押しで敵中央は崩れる。掛かれ!!」







貴族連合軍の動きを見て、


「このままでは、中央が破られてしまいます!!」


マテオが慌てたようにリュウヤに注進する。


「ここが勝負所と判断したか。」


リュウヤは呟き、


「まあ、俺でもそう判断しただろうな。」


そう続ける。


このまま中央を突破すれば、本陣までわずかな距離。

敵王を捕らえる最大のチャンスだろう。


そこでリュウヤは近衛隊の中にいる龍人族を呼ぶ。


「タカオ、お前たちで敵の中央に魔法を撃ち込め。」


その指示にタカオは不敵な笑みを浮かべる。


「我ら近衛隊も動く、そういうことですね?」


「そうだ。お前たちが魔法を撃ち込んだあと、俺たちも出撃する。」


その言葉に歓声があがる。


だが、タカオらは魔法を撃ち込むことができなかった。


彼らよりも早く魔法を撃ち込んだ者がいたからだ。


そして戦局は終盤へと向かう。

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