集結
PV2千オーバー。
びっくりしました
ラスタ村に集結しつつある龍王国軍は、リュウヤの想定をはるかに超えた規模になっていた。
せいぜい3千。
それがリュウヤの想定だったのだが、現実はというと・・・。
リュウヤの近衛部隊500と龍人族100、ドゥーマ率いるドヴェルグ隊500。
テオダート指揮下の魔術師隊100。また、暫定的にテオダートの配下に組み込まれている人間族の兵士1千。
パドヴァからグィード指揮の2千。
ここまではわかる。パドヴァは現在属国扱いになっているため、軍を派遣してくるのは理解できる。その指揮官に、グィードを据えるのもわかる。
問題はここから先の、集結しつつある者たちである。
エルフ隊2500。
この地にエルフってそんなにいたっけ?
そう思っていると見知ったエルフが進みでる。
「お久しぶりでございます、リュウヤ陛下。」
たしかこのエルフの名は、
「ドルアだったな。」
トライア山脈の北側に住むエルフの部族長のひとり。
だが、山脈の向こう側のエルフがなぜここに?
いや、確かに山脈の北側の大森林も飛び地として、龍王国の領土になってはいるが・・・。
「デックアールヴの族長エサイアス殿より、大規模な戦いがあると聞き、志願者を募り馳せ参じました。」
ああ、あの影の薄いデックアールヴの族長からか。
だけど、あちらに戦いがあるなんて伝えた覚えはないのだが・・・。
ここでふと気づいて、スティールを呼ぶ。
「エストレイシアから何か聞いているか?」
「はい。族長にも伝えているから、そちらからも派兵があるだろうと。」
そう言って周囲を見回し、
「私も、これほどの者たちが集まるとは思いもしませんでした。」
なるほどと思う。
向こうのエルフたちには、彼らなりの思惑があるのだろう。
「お前たちの勇戦を期待している。」
そう伝えると、ドルアは一礼してリュウヤの前を辞する。
次に現れたのは、これまた北側の大森林から来た両アールヴの代表である。
500名ずつ、合わせて1千。
「私はイルマリと申します。我が族長ルーディより、陛下のお力になるよう命ぜられ、馳せ参じた次第であります。」
「ルーディは息災か?以前、会ったときは相当な深傷を負っていたと記憶している。」
昨冬前、エルフたちの攻勢により命に別状はないものの、かなりの傷を負っていた。
「「はっ!傷は癒えておりますが、なにぶん被害が大きかったため、その対応に駆け回っております。」
「駆け回れるというのはなによりだ。」
イルマリが一礼して辞すると、今度はデックアールヴの挨拶だ。
「カッレと申します、陛下。」
「先年の戦いの折、エストレイシアの側にいた者だな。覚えているぞ。」
「は、はい!同じ隊の末席ではございますが、共に戦う栄誉をいただきました。」
顔を覚えられているということが嬉しいようだ。
「カッレに尋ねるが、向こう側よりこれほどの援軍、頼もしい限りではあるが、統治に影響はないのか?」
トライア山脈北側の統治は、基本的にデックアールヴに任せている。
「はい。エルフたちは、労働による賠償はリョースアールヴたちにのみ残っている状況です。」
随分とエルフたちは頑張ったようだ。
「ただ、労働力のかなりの部分を賠償に回したために、収入がかなり落ちてしまっているようでして・・・。」
その分を、戦いによる褒賞で賄いたいということか。
「それと、先年の寛容な対処への感謝の機会、また陛下への忠誠を示す機会としているようでございます。」
そこまで気にする必要もないのに、リュウヤはそう思うのだが、恩を受けた側としてはそうはいかないのかもしれない。
カッレが退がると、今度はドワーフたちだ。
いや、カッレたちデックアールヴまではわかる。
だが、なぜドワーフたちが2千もいる?
しかも、それを率いるのが国王バトゥ自身とはなんの冗談だ?
「派手に遊んでいると聞いてきた。俺たちにも一枚噛ませろ。」
バトゥの背後に控えるラダに視線を送ると、疲れた顔をして大きく首を振っている。
どうやら引き止めようとしたが、引き止められなかったということらしい。
「わかった。援軍に感謝する。」
「おう!俺たちが先鋒を務めるからな、お前たちに出番はないやもしれんな。」
ガッハッハと大笑いしてバトゥは自軍の元に向かう。
リュウヤはラダを呼び止め、
「どういうことだ?」
そう尋ねる。
「アールヴとエルフたちが、通行許可を求めてきたんです。」
山脈を越えるよりも、ドワーフの国を通過した方が早いため、彼らはそうしたのだろう。
「そうしたら、あの人数でしょう?」
しかも完全武装している。
「そこで何かあったのかと聞いたんです。」
そこで今回のオスト王国との戦いを知り、去年の援軍の借りを返すと、援軍の派遣を決めたのだという。
「そこでなんで国王自らとなるのだ?」
「リュウヤ陛下が、自ら来たからですよ、前回。」
あの時は、敵であるエルフの規模がわからなかったこともあるし、リョースアールヴの状況から緊急性が高いと判断したのだが。
「向こうは王自らが来たのだ。だから今回は余が自ら行くのだ、と。」
なるほど。状況はよくわかった。だが、自ら先鋒を宣言するということは、
「もしかして、バトゥ王は血の気が多いのか?」
「カルドゥハルの歴代国王の中でも、一番かと。」
ラダはため息をついている。
「ま、まあ、よろしく頼む。」
リュウヤはそう言って、ラダの肩を叩くのであった。
輜重隊を含めると1万5千近い人員が、オスト王国に向かって出撃する。
ここでさらに合流してくる者達がいる。
その旗を見ると、
「イストール王国軍だな。」
リュウヤが呟く。
一年と少し前、実際に戦った相手の旗だ。忘れようがない。
そして、現在では友好国でもある。
イストール王国軍から、伝令の印である白い信号旗を持った者が接近してくる。
「あれはジゼルか。ならば指揮しているのはデュラスか。」
リュウヤの前に現れたのは、ジゼルであり、あの軍の指揮官はデュラスだった。
「オスト王国との戦い、援軍として派遣されました。」
ジゼルはウリエ王子からの書状をリュウヤに手渡す。
書状に目を通したリュウヤは、
「援軍に感謝する。」
そう答える。
「お前たちを扱き使えとの、ウリエ殿下からの頼みだ。覚悟しておけよ。」
「はっ!承知しております。」
ジゼルは大きな声で応じていた。
通算でも、10万超え。
読んでくださる方々に、ただただ感謝。