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龍帝記  作者: 久万聖
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アルカン

最近、夜中に更新しております

リュウヤとの話が終わり、ニシュ村に戻るとすぐに出撃準備を整える。


出撃準備を整えるとはいえ、整った時にはすでに日暮れ間近であり、出撃は翌早朝となる。


「気が逸って仕方ないな。」


シニシャが呟く。


「でしたら、(わたくし)がお相手いたしましょうか?」


妙齢の女性が、シニシャに艶然とした笑みを浮かべながら、話しかける。


「リュビツァか。頼む。このままでは、昂ぶって寝られやしないからな。」


「ええ、わかりました。」


リュビツァと呼ばれた女性は、その豊満な体をシニシャに預けるようにしなだれかかり、唇を合わせる。


「では、朝までお相手いたします。」


「出撃しなければならんのだ。あまり激しくするなよ?」


「それは、シニシャ様次第です。」


その短いやり取りの後、ふたりは寝台(ベッド)へと倒れ込んだ。









ゴランはシニシャの側近であり、セルヴィ王国への急使として派遣された。


ただひたすらにセルヴィ王国への道を、馬を駆って行く。


ただ、その向かう先は王都ベオグラではなく、オスト王国との国境に近い都市ヴァザルである。

そのヴァザルからは、奪われたコスヴォル地方が目の前に見える。


そのヴァザルに駐屯している部隊は、セルヴィ王国でも屈指の精鋭部隊。通称を"虎部隊(ティグレ)"呼ぶ。

そして、その指揮官代理を務めるのがアルカンである。


他の隊の指揮官からは"戦闘狂"と呼ばれるほどであり、戦いとなれば常に最前線に立ち、その姿はまさしく部隊名である虎そのものと評される。


そのアルカンの元に、シニシャからの使者であるゴランがやってきたのは夜明け前になった頃であった。


「隊長代理殿!ゴランが戻ってまいりました!」


「ああん?ゴランが戻ってきた?殿下の身になにかあったのか?」


そう言いながら体をを起こすアルカンの寝台には、3人の美女が裸で同衾している。


「どけ。」


アルカンに到着を知らせた兵士を押し退け、ゴランが部屋に入る。


「相変わらずだな。」


裸の美女3人が同衾しているのを見て、ゴランが呆れたように言う。


「悪いか。」


ふんっと、悪びれずに言うアルカンに、


「殿下からの指示だ。すぐに出撃しろってな。」


出撃という言葉に、アルカンの目の色が変わる。

好戦的な、彼本来の気質がその目に現れたように。


「出撃する先はもちろん・・・」


その言葉をゴランが引き継ぎ、


「コスヴォルへだ。」


その言葉を聞くと、アルカンの顔にはまさに部隊名である虎のような、見る者によっては獰猛(どうもう)そのものの笑みが浮かぶ。


「すぐに出撃準備をさせろ!」


ゴランの後ろにいる兵士に怒鳴るように命令する。

アルカンの怒鳴るような大声に、同衾している美女たちは目を覚まし、ゴランの姿を見て小さく悲鳴をあげるが、アルカンはそれにかまわず、ゴランに疑問をぶつける。


「シニシャ殿下の命令だから動くが、一体なにがあった?」


「強力な後ろ盾を得た。」


「後ろ盾だ?」


この辺りでは大国である、オスト王国相手に戦う?

俄かには信じられないことだ。そんなことができるとしたらオスト王国よりも国力の大きいイストール王国か、セルヴィ王国と国境を接しているオスマル帝国くらいだ。


だが、両者ともにあり得ない。

オスマル帝国は現在、こちら側よりもさらに東方へその力を注いでおり、抑え程度の兵力しか配置していない。抑え程度とは言っても、セルヴィ王国とその周辺の小国の兵力を合わせたよりも多いのだが。


また、イストール王国は無能な前王と、その退位に伴う混乱があり、こちらに手を回せる余裕はない。


「どこの物好きが、俺たちの後ろ盾になったんだ?」


龍王国(シヴァ)だ。」


「・・・あの国か。」


アルカンは呟く。

復活した始源の龍により龍人族は力を取り戻し、その戦闘力は計り知れない。

そして、その龍人族が臣従する謎の男リュウヤ。

いつ、どこから現れたのかわからないが、間違いなく始源の龍の復活に関わっているだろう男。

そして、龍人族以上の戦闘力を持つといわれる男だ。

それが後ろ盾となる・・・。


面白(おもしれ)え。あの国が後ろ盾になるってんなら、暴れてやろうじゃねえか。」


そして、セルヴィ王国の聖地であるコスヴォル地方を取り戻す。


アルカンは立ち上がり、ゴランの胸を叩く。


「さあて、久々に大暴れだ!さっさと行かねえと、全部、龍王国に持って行かれちまう。」


その言葉にゴランも笑みを浮かべる。


そして、ふたりは連れ立って隊の指揮所へと向かった。

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