ナスチャ合流
「なにをしているんだ、ギイ?」
「食料の買い出しだよ。」
急な出兵のため、減少した分の備蓄食料の補充のための買い出しだという。
これは、アデライードの指示とのことだが、さすがは商人感覚を持っているというべきか。
軍の出撃が一般に知られれば、食料の買い占めが起こりその価格は上昇する。
そのため、一般に知られる前に必要量を確保するべくギイを派遣したのだろう。
だが、なぜギイだったのだろう?
他に人は居なかったのだろうか?
いや、ただでさえ人材が不足しているこの国で、軍事行動をしてしまったためにギイを出さざるを得なかったというところか。
それでも、ギイはないだろうと思う。目を離すと、間違いなく酒場に行くぞ。
そして、これは自分の失敗でもあるのだが、アデライードには視察の本当の目的を告げておくべきだっただろうか?
とは言っても、知っている人間の数を少なくしたかったし・・・。
「どうしたんじゃ?」
考え込んで、反応がなくなっていたリュウヤを怪訝そうに見ている。
「いや、少し考え込んだだけだ。このままギイを放置しておいていいものか、てね。」
「う、お目付役なら既におるわい。アイニッキというのがな。」
苦虫を噛み潰したような表情をして、ギイは言う。
アデライードも、ギイの操縦法を理解しているらしい。
「俺の方のことが終わったら、飲むとしよう。アイニッキも一緒にな。」
夕刻になるが、そう付け加える。
「アイニッキも一緒では、思いっきりは飲めんが仕方ない。一足先に飲んでいるわい。」
そう笑って別れた。
取りに行くのは夕刻と約束している。
それまでどうするか。
「遅いぜ、王様。」
声をかけてきたのは、この村に残っていた蜘蛛使いのナスチャ。
「ナスチャか。どうしたんだ?」
リュウヤの言葉に口を尖らせて抗議する。
「どうしたじゃねえっての。随分と楽しんだらしいじゃねえか。あたいもそっちについて行けばよかったかなあ。」
楽しんだとは、ゾシムス一派との戦いを意味しているのだろう。
「俺はなにもしてないぞ。エストレイシアがさっさと手配して終わらせたからな。」
なぁんだ。それはますます残念。それがナスチャの感想だった。
「そうそう。王様がいない間に、あのドヴェルグたちのことを調べたぜ。」
ユーリャよりは厚い胸を張って言う。
「何かわかったのか?」
「まあね。」
そう答えてから、
「あっちでなにか食べながら話そうぜ。」
ナスチャが指差した先には、屋台が並んでいる。
「そうだな。寝坊して、ろくに食べられなかったのがいるから、丁度いい。」
リュウヤが答えた時、お腹を鳴らしたのはユーリャだった。