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龍帝記  作者: 久万聖
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アルナック村、再び

夜明けを迎え、エストレイシア率いる総数1500人余の軍は、オスト王国へ向けて出撃する。


それを見送ったリュウヤらは、ユーリャが起きるまでアリフレートと今後についての話し合いを行う。


今後といっても、岩山の王宮の近辺への移転の時期と、なによりも布教の許可とその条件についてだ。


移転の時期については、建物の建設が進められ次第となる。


実のところ移転そのものは大きな問題ではない。

問題は布教とその条件だ。


「布教については、基本的には許可する。強制、強要がなければ、だが。」


信仰の強制・強要というと、現代では"カルト"を思い浮かべるかもしれない。

だが、織田信長登場以前の日本では、当たり前のように行われている。

例えば、Aという宗派を信仰していた村が、、Bという宗派との論争で敗れると、その村すべてがBという宗派に鞍替えさせられた。

特にそういう活動をしていたのが、日蓮宗(法華宗)である。

その活動は、安土宗論で日蓮宗が浄土宗に敗れるまで続いた。


さらに宗教団体の武装解除となると、豊臣秀吉の刀狩りまで待たなくてはならなかった。


これがヨーロッパになるともっと酷い。


カトリックとプロテスタントの争いは、日本人では想像できないほどの血で血を洗う凄惨さを見せる。


さらに11世紀末、十字軍に始まるイスラムとの争いは、現代にその火種を残す。


「はい。それはもちろん。信仰を強要するなどいたしません。」


「それともうひとつ。武装の禁止。それを守ってもらう。」


「わかりました。私に異論はありません。」


アリフレートがこの条件を受け入れたのは、理由がある。


もともと、龍王国(シヴァ)に抵抗する意志がないことに加え、たとえ戦ったとしてもすぐに殲滅させられることがわかっているからである。


無駄に信者を死なすわけにはいかない、そう考えた結果なのだが、もうひとつの理由もある。


龍王国と自分たちとの間に交わされる協定は、今後、この地に布教しようとやってくる者たちと結ばれるであろう協定の基準となるのだ。


それならば、もともと武装の意志もなく信仰の強制・強要の意志もないのだからさっさと協定を結んだ方がいい。


一方のリュウヤの方も、アリフレートが受け入れることは想定済みである。

むしろリュウヤは、アリフレートと協定を結んだ後を視野に入れている。


アリフレートと協定を結んだことを公表した後、必ず総本山はクレームを入れてくる。この協定は、総本山の意向とは関係なく結ばれたものだから。

当然、総本山は自分たちの意向に沿った、もしくはそれに近づけた改定を求めてくる。


それを突っぱねる材料、それがゾシムスの身柄である。

ゾシムスが所属する派閥がどうであれ、大地母神神殿に属する者が龍王国の国王たるリュウヤを害そうとしたという事実。しかも、その証人となる捕虜を多数確保している。


「では後日、正式に書面にして署名しよう。」


「はい、わかりました。」


リュウヤとアリフレートの間で話がまとまった頃、欠伸(あくび)をしながらユーリャが起きてくる。


「眠い〜〜。」


ほんの2〜3時間ほどで、"どうしてこうなった"と言いたくなるほどの寝癖で部屋に入ってくる。


「ああ、もう!!」


アルテアがユーリャを引き摺って、身支度を整えるべく別室に連れて行った。







朝食をとり、リュウヤらは乗り合い馬車に乗ってアルナック村に向かう。


ほんの5日。だったはずなのだけど、随分と経った気がするのは、色々あったからだろう。


やっと、本来の目的であるダグとギドゥンとの本格的な接触。


アルナック村に到着し、馬車から降りるとユーリャが思いっきり伸びをする。


「うーん、やっと目が覚めた。」


かなり揺れた馬車の中で、よくあれだけ眠れたものだと感心してしまう。


「おう、リュウヤじゃないか。」


この声は、まさかと思い振り返ると、そこにはそのまさかの人物、ギイがいた。

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