尋問 1
長くなったので二分割しています
バルトロ、ビアージョのふたりに、アランに確認したことを問う。
結果はアランと同様、依頼人のことを知らなかった。
ならば、確実に知っているであろう者に聞くまで。
そこで3人に、リーダーを自分のところまで運ばせる。
ただ、その扱いは悪く、リュウヤの目の前にポイっと投げられたため、リーダーの男は「痛っ!」と覚醒する。
まかり間違えば、この場で殺されていたか、もしくは捕縛された後に斬首されるかしていたのだ。扱いが悪くなるのも無理はないだろう。
「な、なにをする!?」
目覚めたばかりで、頭が混乱しているのだろう。
「"なにをする"じゃねえよ、アンジェロ。」
サスケとサイゾー、デス・スパイダーの糸に絡められているリーダー(アンジェロという名前らしい)に詰め寄るアランたち。
ここで少しでも役に立つことで、自分の命を守ろうとしているようだ。
一度助けると言った以上、リュウヤは3人の命を奪うつもりなどないが、そのことは黙っておく。
仕事に誘ってくれた相手として、少し前まではそれなりに敬意を持って接していたが、自分の命を守るとなればそんなことは言っていられない。
「手荒なことをするなとは言わん。だが、喋れるようにはしておけよ。」
リュウヤが注意をする。
せっかくの証人を殺されては困る。
「わかりました!」
そこまで元気よく返事をしなくてもいいのだが・・・。
苦笑するリュウヤの前でアンジェロに掴みかかり、口を割らそうとする3人。
「ねえ、なんか必死だよね、あの3人。」
ユーリャが小声でリュウヤに呟く。
「そりゃ、ここで自分たちが役に立つところを示せれば、命が助かるだけでなく仕官ができるかもしれない。
そう考えたんだろ。」
「そうなんだ。なんかタイヘンそうだね、神殿の外の世界も。」
「生きる糧を得ることには、誰でも必死になるさ。」
なぜ傭兵になるかといえば、食えなくなったからだ。これは、盗賊になることとたいして変わらない。違いはふたつ。立身出世への意欲と、合法か違法か、それだけだ。
そして傭兵になる者の特徴は、腕に自信がある相当な力自慢というところだろう。
立身出世への意欲があるならば、僅かな機会も逃したくないだろう。
「むー。よくわかんない。」
「それでいいさ、ユーリャは。」
世俗に精通している聖女サマというのも、おかしなものなのだから。
「なにをしている!」
目を覚ました者たちがアランたちのしていることに気づき、声をあげる。
声をあげるが、身体はサスケらの糸で縛られており、身動きができない、、
「リーダーになんてことをしているんだ!」
その言葉にアランが言い返す。
「コイツは、俺たちを破滅に追いやろうとしたんだぞ!」
「そうだ!コイツの言う通りにしていたら、俺たちはみんな死んでいたんだぞ!」
「いや、依頼主のことを喋らせないと、全員死罪になりかねないんだ!!」
3人の言葉に、アンジェロ以外の者はかろうじて動かせる顔を互いに見合わせる。
どういうことなのか、話が見えない。
「依頼主が襲わせようとしていたのは、この国の王様だったんだ!!」
アランの言葉に皆が絶句する。
そんなことをしたら、たとえ未遂であっても死罪は免れない。
いや、それ以前に皆殺しにされても文句は言えない。
なにせこの国の王様は、虐殺王として知られる存在なのだ。
それがまだ自分たちを生かしている。
それはなぜか?
僅かでも価値がある、そう見做されているからだ。
その価値とは、情報。それも依頼主の情報だ。
その情報を吐かせることができれば、自分たちは助かる。だからこそ、この3人はアンジェロに掴みかかっている。
「アラン、バルトロ、ビアージョ。そこのアンジェロとかいうヤツのグループ以外の者たちを解放してやれ。」
リュウヤが指示する。
当然、慈悲からそうするのではない。
解放してやるから情報を引き出せ、暗にそう言っているのだ。
解放された傭兵たちもそれを理解している。
解放された傭兵たちは、アンジェロのグループへと詰め寄っていった。