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龍帝記  作者: 久万聖
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ピリン村

なかなか風邪がよくならない・・・

真夜中。


リュウヤの眠っている部屋に忍び込む人影。


抜き足差し足・・・・・。


こっそりとベッドの中に入り込む。


「あれ?」


その人影は小さく声をあげる。


「いない?あれ?あれぇ??」


想定外の状況に軽くパニックになっているようだ。


そこに、部屋に備え付けられているランタンに、明かりが灯される。


「来るんじゃないかと思ってたら、やっぱり来たか。」


呆れたようなリュウヤの声。


「むー!」


不満そうなユーリャ。


「一緒に寝たかっただけなのにぃ。」


ベッド上に座り込みながら、唇を尖らせて言う。


「他人のベッドに入り込もうとするのは、いけないことだとは聞かなかったのかな?」


「むー!」


いっそう唇を尖らせ、


「一緒に寝てもいいじゃない!」


これがある程度の色気のある女性なら、とても困る物言いだがユーリャではそうは取れない。

とはいえ、同衾は流石にできない。


「お前はそこで寝てろ。俺はここで寝る。」


マントを羽織り、壁に背を預ける。


「むー!」


恨めしそうにリュウヤを見る。

それを無視して狸寝入りを決め込むリュウヤ。


ユーリャはリュウヤを指で突くが、無反応。


「むー。」


掛け布団を持って来ると、リュウヤの隣に座り込み包まる。リュウヤに倒れこむように身体を預けて、眠りについた。


狸寝入りを決め込んでいたリュウヤは、隣で規則正しい寝息を確認すると目を開けて、ユーリャを見る。


「こうやって見ると、可愛らしい女の子ではあるんだがな。」


そう呟くと、ユーリャの身体を抱えあげ、ベッドへと運んだ。







朝。


ユーリャが目覚めると、すでに旅装のリュウヤが椅子に座っている。


「さっさと着替えてこい。置いて行くぞ。」


そう言われて慌てる。


「え、いや、ちょっと待って!」


寝癖の髪もそのままに、慌てて自分の部屋に戻って行った。





朝食を済ませ、乗り合い馬車の停留所へ向かう。


ユーリャの衣服は、一応は大地母神神殿の神官として旅装姿である。


「ユーリャは、ピリン村には行ったことはあるのか?」


「あるよ。」


「どんな所だ?」


「羊や山羊や牛や馬がたくさんいたよ。」


「牧畜が盛んなのか。」


そう口にしつつ考える。


ピリン村の地形は、平地が多いのだろうか。


到着したピリン村の停留所から見える景色は、一面に広がる平原。

そして、居住区を取り囲む長大な土塁。おそらく、その土塁の裏には掘割があるに違いない。さらに出入り口は馬出しになっている。


「本格的な防衛設備だな。」


土塁のみならず、要所要所に櫓が建てられている。


ニシュ村でも思ったのだが、エストレイシアは各村を一種の出丸と考えているのではないか。そしてそれを繋ぐことで、長大な防衛線とする。

こんなことができるのも、トール族の存在や魔法人形(ゴーレム)を使役できるからこそだろう。


「前に来た時と違うなあ。」


とはユーリャの言葉。


「ユーリャが前に来たのは、いつ頃なんだ?」


「うーんと、三ヶ月くらい前かな。」


三ヶ月。


かなりな突貫工事のような気がするが、強度は大丈夫なのだろうか?

そんな疑問も浮かぶ。


「おや、聖女様ではありませんか。」


ユーリャに話しかけてきたのは、人の良さそうな年配の男性だった。


「誰か怪我人でもでましたかな?」


その男性は、土塁の方を見ながら尋ねてくる。

まだ、土塁の方では工事中なのだろうか。


「まあ、そんなところよ。」


ユーリャ自身、リュウヤらの目的を知らないため、そう答えるしかない。が、村人に疑念を持たれないようにするためには、その土塁の方へ行かなければならない。


そして、そこにいたのはエストレイシア指揮する一団だった。






この週末は、再び寒暖差が激しくなるそうですので、皆さまも体調管理に気をつけてください

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