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龍帝記  作者: 久万聖
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アリフレート

体調不良が続き、くたばっておりました

結局、この村での視察は昼過ぎで切り上げざる得なくなった。


日が高くなり、村人たちの活動が活発になるにつれ、ユーリャの周りに人だかりができてしまったのだ。

それこそ老若男女問わず、である。

昼食をとろうと店に入れば、そこでも遠慮なく村人たちが集まり、揉みくちゃにされる。


「聖女様。どうぞこれをお召し上がりください。」


と、次々に料理を持ってこられるが、とても食べられる量ではない。

それに、これではこの村でどんな物が一般的に食されているのかがわからなくなるし、特産となり得るものを調べられなくなってしまう。


「どう?私の御利益凄いでしょ?」


「ああ、そうだな。」


リュウヤにしてみれば、御利益どころか災厄でしかないが、ここはそう言っておく。

これだけユーリャの信奉者が集まっているなかで、下手なことを言えばどうなることか。


そのため、昼食を食べ終わると視察を切り上げることにしたのだ。


「甘く見てたな。」


神殿への帰途、リュウヤが呟く。


甘く見ていたのは、この世界の者たちの信仰心の強さ。


現代日本人らしく、リュウヤは自分が信心深いとはカケラも思っていない。また身近にも、一部を除けばそんな者たちはいない。

だが、この世界では信仰心が強いのが当たり前のようだ。少なくとも一般の人々は。


正直言って、相当に厄介だと思う。

この世界で、自国領のみとはいえ刀狩りのようなことができるのか?

また、宗教勢力に世俗権力を放棄させることができるのか?


そう考えると、いかに織田信長という存在が、日本史にとって巨大なものか理解できる。

信長は、そのために何万、何十万という人間を殺さざるをえなかったが、それをこの世界でしなければならなくなるのだろうか?


"陛下"


シズカが念話を通してくる。

シズカの方を見ると、その視線をアルテアらに向けている。


アルテアが心配そうにリュウヤを見ている。


「考え事をしていた。愉快とは言えないことだけどな。」


そう言ってアルテアの頭に、手を乗せた。







神殿の中は人でごった返している。

さほど広くない礼拝堂に、明らかに人口過密だろうと思うほどの人間がいて、礼拝の祈りを捧げていた。


「ただいま!!」


大きな声で帰ったことを伝えるユーリャだが、そんなことをしたらどうなるか?


「聖女様!!」


「ユーリャ様!!」


口々に歓声をあげ、ユーリャの周りに集まる。


これは人気があるのもそうなのだろうが、"聖女"という権威がそれをより一層、人を集めている。

リュウヤらはその人だかりから逃れ、壁側に避難する。

そこにアリフレートがやってくる。


「お疲れでしょう?」


その言葉に、リュウヤは苦笑しかない。やはりこの神官は、ユーリャが一緒にいるとどのような状況になるのかを知っていたのだ。


「とても、だな。」


リュウヤの返事に苦笑するアリフレート。


「それで、お前の狙いはなんだ?」


「え?なんのことでしょう?」


突然の指摘に、驚いた顔をするアリフレート。


「とぼけるなよ。俺がお前の立場なら、絶対に一人で行かせはしない。どこの馬の骨とも分からん傭兵などとな。」


傭兵などというものは、腕自慢の荒くれ者どもが多い職業だ。そういう者たちには、軍規など有って無いようなもの。戦場では略奪や暴行に勤しむものだ。特に下っ端の者などは。

言葉はとてつもなく悪いが、傭兵にとって略奪はボーナス、女性への暴行は役得なのだ。


「い、いえ、女性をお連れしておりますから、それで大丈夫かと・・・。」


この弁明、一見すると納得してしまいそうになるが、それは大間違いというものだ。

性的な欲求のはけ口として連れている場合もあるし、敗走時の(おとり)として連れている場合もある。

女性を連れているから安心などというのは、よほどの馬鹿か世間知らずくらいのものだ。


「わかりました。全てお話しします、陛下(・・)。」




まだまだ寒暖差の激しい日々が続きます。


皆さま方も、健康に留意したください

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