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龍帝記  作者: 久万聖
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開戦

開戦しました。

 上空から敵軍を見る。


 1万5千もの軍勢というのは、なかなかに壮観だ。

 シヴァの力を共有していることもあるのだろう。かなりの上空からであるにもかかわらず、敵軍の様子がよく見える。猛禽類並みか、それを上回る視力だろう。

 その視力を持って、敵軍を観察する。

 部隊それぞれの装備がバラバラで、全体としての統一性がない。ほとんどが寄せ集めということか。


「君たちはどう見る?」


 ふたりの同乗者に問いかける。


「装備が部隊、部隊でバラバラです。寄せ集めのように見えます。」


「私も同意見です。付け加えるならば、部隊間の連携が取れているのか試してみる必要があるかと。」


 見立ては同じか。ならば、一当てしてみるとしよう。


「これから急降下する。振り落とされるなよ。」


 ふたりに警告を発し、


 "第一陣と第二陣の間に向けて急降下しろ"

 念話にてシヴァに指示を出す。


「これから先は、念話にて指示を出すからな。」


 ふたりの同乗者にも伝える。

 ここで、イストール軍は急降下するシヴァの存在に気づいたようだ。

 地に伏せてやり過ごそうとするもの、シヴァの降下点から少しでも遠くに逃げようとするもの。中には弓矢を取って射掛けててくる者もいるが、これは極少数派である。弓矢など、シヴァの巨軀を覆う鱗を貫くことはできないが、それ以前に急降下するシヴァの周囲は気流が乱れている。人力ていどの推進力ではシヴァに届くところか、シヴァの周囲の気流によって巻き上げられる。

 地上すれすれまで急降下して、今度は急上昇する。シヴァの巨体によって生み出された衝撃波が、地上を襲う。


 "ほほう、こんな戦い方があるとはな"


 シヴァは感心したように言う。地上すれすれまで急降下して急上昇する、それだけでこれほどの効果があるとは思いもよらなかったらしい。


 "大型のバリスタや魔法使いがいると、やられる可能性があるからな。奇襲戦法としてしか使えないぞ"


 一応、注意はしておく。

 それにしても、あの急降下はなかなスリルがあって良かった。速度も100キロは楽に出ていただろうし、地球の下手なジェットコースターよりも爽快感がある。戦闘中だというのに、そんなことを考えていたのだが、なにか重要なことを忘れているような・・・。


「あ"」


 同乗者がふたりいることを忘れていた。ちらっと見てみると、放心している。まあ、仕方のないことだろう。


 "ふたりとも大丈夫か?"


 "は、はい、大丈夫です"


 ふたりとも、なんとか放心状態から立ち直ったようだ。

 ここで、リュウヤに悪戯心が湧いてくる。

 絶叫マシンに乗ったあと、そうなっている人って結構いるらしいんだよな。その近くで替えを売ってたりするし。


 "漏らしてないよな?"


 ふたりはキョトンとした顔をしている。漏らしてないよなって、なにを・・・


 "!!!"


 "そ、そ、そんなことしてません!!"


 ふたりは全力で否定しているが、顔をちらっと見たところ真っ赤になって身悶えている。

 これ以上、触れるのはやめておこう。羞恥心から真っ赤になっている顔を見れただけで、良しとする。あのツンケンした顔が、こういう表情になるのは、なかなか可愛いものがある。

 触れないでおこうとするリュウヤだが、ふたりの方はそれどころではない。戦闘中だというのに粗相をしてしまうとは・・・。しかも、リュウヤの前で。

 リュウヤはもう触れてこないが、気づいているに違いない。

 そのリュウヤが再び急降下の注意を発してくる。ふたりにとっては嫌がらせとしか思えないが、地上に近づかないとリュウヤが降りられない。自分たちはリュウヤから、シヴァの背に乗ったまま敵軍の隊長・指揮官クラスを狙撃することを命じられているが、リュウヤは降りて戦うらしい。

 急降下に対する覚悟を決めるふたりではあったが、いざ始まると声にならぬ叫びをあげていた。



 シヴァが急降下を行ったのが第三陣の正面から本隊手前にかけて。そこにリュウヤが降り立った。混乱する第三陣を尻目に本隊に向けてゆっくりと歩をすすめていく。

 リュウヤの足取りは軽く、悠然とイストール軍本隊3千に迫っていった。

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