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龍帝記  作者: 久万聖
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アルナック村 市場(マルシェ)

最初の接触を果たした後、アルナック村の市場(マルシェ)を見て回る。


農作物に関しては、それなりに自国産の物が並んでいる。移住してきた人間族やエルフたちの努力の賜物だろう。


それでも、それ以上に多いのはやはりイストール王国の物産だ。


これに関しては仕方ない部分でもある。

少しずつ国としての形を整えている龍王国(シヴァ)に対して、伝統ある地域大国たるイストール王国では、その生産量は比較にならない。

それに、イストール王国との国境付近の地域では、王都ガロアをはじめとする都市部に運び込むよりも、こちらに持ってくる方が、より高く売れるということも影響しているのだろう。

しかも、両国間の取り決めにより、互いに関税や通行税を取らないことが定められ、簡単な手続きで済むことも大きいだろう。


こちらから売れる物は、やはり森の恵みたる果実や野生動物の肉やそれを燻製にしたもの。それに川魚を干したもの。木材に木製の加工製品。


建国より1年そこそこで、自国産の物がここまで並ぶようになったことを素直に喜ぶべきなのだろう。


昼食は、市場に出ている屋台の料理を見繕って取ることにする。


子羊(ラム)の肉を串に刺して焼いたものに、成羊(マトン)肉を煮込んだシチューのようなもの。そして黒パンと、最近、入手が容易になり出したという茶。

茶の入手が容易になり出したのは、アデライードの肝いりで大量に入荷しているのが原因である。


イストールではその渋味と苦味から敬遠されているため、それらを格安で購入しているのだ。

アデライードとしては、この茶をこちらで流行らせたいようなのだが、現状ではリュウヤとその周辺くらいしか飲まれていない。


茶に関してリュウヤは、こちらで栽培できないかと考え、苗木の入手を検討している。

苗木を入手、栽培できるなら紅茶を生産できるのではないかと考えてのことである。


「苦いです・・・。」


アルテアの素直な感想。紅茶ならば、少しは苦味が抑えられて万人受けするだろう。


「ナスチャ、お前は茶を飲むのはやめた方がいい。」


「言われなくても飲まないよ、こんな苦いの。」


ナスチャは毒づくが、リュウヤが彼女に飲むことを止めたのは理由がある。彼女の使役する蜘蛛は、茶に含まれるカフェインを摂取すると酔っ払ったかのような行動をとるという。

ナスチャが茶を飲むことで、悪影響がでるのではないかと危惧したのだ。もっとも、ナスチャの方に茶を飲む気はないようだが。

ちなみにサスケは現在、マテオが寝ていた木に登って休んでいる。


「目が覚めます。」


とはマテオである。カフェインの作用で目が覚めたようだ。


「茶に含まれる成分には、意識を覚醒させる作用があるからな。」


実際に、戦乱期の中国や戦国時代の日本では、わざと濃く煮出した茶を眠気覚ましとして用いていたという。


「軍に採用するかな。」


夜戦などに重宝するだろう。


その苦味で飲めないアルテアに、代わりの果汁を混ぜた水を買ってくる。


「今日はここで一泊するか。そして明日は、最近編入されたニシュ村に行く。」


たしか、馬車に同乗していた恰幅のよい女性がその村から来ていたはずだ。


「私はここに残るよ。」


とはナスチャ。


「あのドヴェルグたちの様子を探る必要があるだろ?」


一理ある。特に、あの兄弟の様子は少しでも多くの情報がほしい。


「滞在資金はあるのか?」


「ああ、それはしっかりと貰って来たさ。アデライード様に。」


さすがアデライード。気がきく。

アルナック村の市場調査も兼ねて送り出したのだろう。

それだけでなく、ナスチャを通して蟲使いたちに何に需要があるか、彼女の買い物から判断したいのだろう。


さすが商売人と言うべきか・・・。


「先に宿をとって、夕刻まで見て回るとしよう。」



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