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龍帝記  作者: 久万聖
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ラスタ村

10日ほど経ち、リュウヤらは視察に出かける。


予定は7日。


シヴァの背に乗り、まずはパドヴァへ。

ピエトロに会い、パドヴァでの身分証を作成する。

いわゆる偽装身分(アンダーカバー)というヤツである。それもパドヴァという国家承認の偽装身分だ。


パドヴァから龍王国(シヴァ)へと向かう。


パドヴァからの旅人を装うためだ。


一向の4人は傭兵という設定だ。


リュウヤとシズカは腕利きの傭兵、マテオとアルテアは見習い傭兵ということになっている。


また、シズカはその魔力を使って角が見えないようにしている。

いつでもそういうことができるそうだが、龍人族がいることがわかっている領域では、隠さないだけとのことである。


パドヴァ方面から龍王国に入るのは、ラスタ村と名付けられた開拓地を通る。


だが、あのふたりがいるのはイストール王国側から入る、アルナック村と聞いている。


直接アルナック村に行くのもよいが、名目は視察だ。そんなわけにもいかないだろう。


が、ダグやギドゥンではないが目標としているドヴェルグがすぐに見つかる。


「ドヴェルグとは珍しいな。」


近くを歩いている村人に話しかける。


「ああ、20日くらい前かなぁ。あいつらが来たのは。」


ここでマテオが話に入ってくる。


「彼らはどこに住んでるんです?この村ですか?」


「アルナック村だよ。そこで、最近は工房を開いたとか聞いたよ。」


「ありがとう。」


マテオが今回の随員に選ばれたのは、こういう村人との接触があるからだ。元農夫の彼なら、怪しまれることなく接触できる。


アルテアも、元農場主の娘ということが随員に選ばれた理由でもある。


「陛下・・・、きゃっ!」


陛下と口にした途端、リュウヤからデコピンを受けるアルテア。


「違うだろ?今はルシウスだ。」


「は、はい。」


おでこを抑えて涙目になるアルテア。ちなみに、旅姿のマントの裏側にサスケが潜んでいる。


「もう夕方になる。宿を取るとしようか。」


リュウヤの言葉に皆が頷く。









宿の調度品は質素なものだが、かなり広い。

女主人が言うには、龍王国に編入されてから人の往来が増加したため、相当な増築をしたのだという。


「だからねえ、調度品まで金が回らなくなってね。」


そう苦笑しながら話していた。


「それに、最近はドヴェルグたちが働いてくれてるんで、ずいぶんと早く建てられるようになったんだよ。」


この宿も、3日前に増築が完成したらしい。


「だから、これまで以上に稼がないとね!」


そのためにも、王様にはいい(まつりごと)をしてもらわないと、そう言って豪快に笑っている。


女主人というよりも、女傑と言う方が相応(ふさわ)しい笑い方をする。


給仕をするのはアルテアと同年代か、もう少し歳下と思われる少女たち。

あまり低年齢者を労働させるのは、感心はできないのだが、この世界にむこうの世界の認識を押し付けるわけにはいかない。


「おまたせしました。」


運ばれてきた料理は、お世辞にも見た目がいいとはいえない。

だが味はそれなりに良い。

調味料が少ないため素朴な味わいだが、それがいい。


「鹿肉、だな。」


鹿の太腿を香草で包んで焼いたものやら、筋肉を煮込んだスープやら、小麦粉を練った薄い生地で包んで焼いたものやら、中々量もある。


飲み物はパドヴァから持ち込まれた葡萄酒(ワイン)と、森に自生している果実を絞ったジュース。

当然ながら、ジュースを飲むのはアルテアだけである。


食事中、アルテアはソワソワしている。

普段、主人であるリュウヤと一緒のテーブルで食事をするなどということがない。

それどころか給仕をする立場だ。

慣れない状況に、何をしていいのかわからないのだ。

それでソワソワして周りを見てしまうのだが、すると今度は同年代の給仕の少女たちの動きのまずさにイライラしてしまう。

そして、思わず動き出そうとするとリュウヤに抑えられる。

それを食事が終わるまで幾度となく繰り返すのだった。

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