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龍帝記  作者: 久万聖
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真夜中の会談、そして

リュウヤは宣言した通りに、ドゥーマらに聞いた話を包み隠さずに話す。

聞いたままに、私見を入れず。


それを真剣に聞いているシズカ。


ただ、終盤の龍人族の末路には涙を流していた。


「陛下が気になさっているのは、サクヤ様の兄上のことでしょう。」


そしてそれは、シズカの婚約者でもあるはず。


「彼と私の関係は、すでに破綻しておりました。」


サクヤの兄が、この地を出た時にはすでに破綻していた。これは、出る決断をしたサクヤの兄と、残る決断をしたシズカの立場の違いだろうか。


「彼は私にもついてきてほしいと、そう言ってはいました。ですが、私にはその計画が現実的に可能なものには見えなかったのです。」


行けばなんとかなる、その程度の計画とすら言えない計画では、行ったところで破綻するのは目に見えていたのだろう。


始源の龍の衰えとその影響が今後も続くなら、やがて自分たちもその力を失い、自らの身を守ることすらできなくなる。それなのに、この地を捨てて活路を外に求める理由がシズカには理解できなかった。まだ、この地でまとまっていた方が、身を守れるだろう。


それにシズカには、その妹であるサクヤを残して行く彼への不信感も出てきてしまった。

そのため、シズカの方から別れを切り出したという。


「ですから、私のことは気になさらないでください。」


そんなわけにいくか、リュウヤはそう強く思う。

気にするなと言いながら涙を流しているシズカを見てしまっては。


暫しの逡巡の後、リュウヤはシズカに提案する。


「行ってみるか、ダグとギドゥンの様子を見に。」


驚いてリュウヤを見るシズカ。


「俺はふたりの顔を知らない。だから知っている者の同行が必要だ。」


シズカという石を投げることで、どれだけ波紋が広がっていくか。

予想はつかぬが、やってみる価値はある・・・、かもしれない。


「はい。同行させていただきます。」


リュウヤとシズカは、早速ダグとギドゥンに接触するための打ち合わせを行った。












朝。


結局はほぼ一睡もできなかったリュウヤは、眠そうな顔で朝食会に出ている。


目的がある、もしくは結末が出てくることを考えての徹夜ならば苦にはならないのだが、いくら考えても結論が出てこないことを考えての徹夜というものは、疲労感が半端無いものだ。


「近々、森の外側の開拓地の視察をする。それに同行する者たちだが・・・。」


マテオ、アルテアと名を挙げていき、


「あとサクヤ、シズカを借りたい。」


「シズカを、ですか?かまいませんが・・・?」


キョトンとした表情を見せるサクヤ。その隣にいるトモエはリュウヤを睨む。なぜシズカなのか、そう詰問するかのような視線である。


「3人を選んだ理由だが、あくまでも非公式な視察だ。人間族の多い場所であるからには、同じ人間族であるマテオとアルテアは必要だ。シズカは、もしもの時の連絡役であるだけでなく、物事に左右されない冷静な観察力で見てもらう。」


そう言われると、トモエとしては少なくとも表立っては異を唱えにくい。


「あとギイ。ミスリル鉱石を用意してもらえないか?」


「そんなもの、どうするんじゃ?」


「開拓地に、なかなか腕の良い鍛治師がいるらしい。その腕を確かめたくてな。」


「だったら、ワシも行くかの。」


「たわけ。おまえは自分がどれだけ有名なのか知らんのか?おまえが一緒に行ったら、相手が萎縮するわ。」


「うわっはっは。」


と、ギイは愉快そうに、それでは仕方ないと肩を揺らして笑っている。


こうして、リュウヤが開拓地へ行くことの了解を得た。


後は、イストール王国へ行っていた使節団の帰還式典の段取り説明が行われた。








トモエがリュウヤに食ってかかったのは、式典も滞りなく終わった後のことである。


「なぜシズカなのですか!」


当然の質問である。シズカに話を聞かれていたと知らないのだから。


「おまえは直情すぎる。あのふたりに会った時、自分を抑えられるのか?」


それを言われると、反論できない。


「ですが!」


「そこまでにして、トモエ。」


横から声をかけてきたのは、シズカ。


「私は、知っているの。ダグとギドゥンがいることを。」


その言葉にリュウヤを睨むトモエ。


俺が話したと思っているのだろうなあと、リュウヤが心の中でボヤく。


「貴女と、エストレイシアの話を聞いたから。」


リュウヤの指示をエストレイシアに伝えた時に聞かれていた、そのことをここで知る。


「そう、わかった。」


こうなったら、シズカは梃子でも動かない。


「ですが、陛下!!わかっていますよね?」


シズカの心が壊れるようなことになれば、たとえリュウヤといえどもただではおかない。

その目がそう言っている。


「わかっている。」


こうして、とりあえずとはいえ、トモエからも視察の了解を得た。



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