過去 5
捕らえられた者たちの運命は、より過酷なものだった。
ドヴェルグたちは、手足の骨折が治ると鉱山奴隷として売られた。
あくまでも"骨折が治って"であって、リハビリなどが終わってからではない。まだろくに動かすことのできない身体で売られ、ただでさえ過酷な鉱山で働かされるのだ。ろくな道具も与えられずに。
そんな身体で売られたため、その値段も二足三文とタダ同然であり、それだけに使い捨てとしてより過酷な鉱山最奥へと送り込まれた。
その鉱山で働くのは、未熟な技術しか持たない奴隷ばかりであり、落盤事故が多発しており、命を落とす者も続出している。
ドヴェルグもその例外ではなく、落盤事故により命を落とす者もいた。
その環境に耐えきれず逃げ出したのだが、逃亡に成功したのはこの地に帰り、このことを伝えた者だけだった。
その者の言葉によれば、生き残った龍人族も奴隷として売られた。
売られた先は闘技場。
傷ついた身体のまま、剣闘士と戦わされたという。
ろくに動けぬ身体で、熟練の剣闘士と戦う。
それは戦いとは言わない。
ただの嬲り殺し。
一方的に切り刻まれ、血を流させる。
単なる流血ショーでしかなかった。
いつでも殺せる状況にありながらそれをせず、それこそ猫が獲物をいたぶって遊ぶように。
絶命したときには、その姿はほとんど原形をとどめておらず、その遺体はそのまま闘技場にて、獣たちの餌となったという。
そして、龍人族が死んだ国の名を、神聖帝国といった。
気が重い。
途轍もなく。
しかも、ここで神聖帝国と繋がるのか。
「陛下。ダグとギドゥンをいかがいたしますか?」
トモエの反応を見る限り、許すという選択肢は取りづらい。いや、事実上、取れないと言ったほうが正解だろう。
一度、自ら接触する必要あるだろう。
「直接会ってみる。それからだ。」
それに気になることもある。
数人にまで減ったドヴェルグが、この地に戻ってきたのは50名だという。
これはどういうことだろうか?
増えた理由はなんなのか?
また、ドゥーマらと話し合い、ダグらと会うために鉱石を手に入れるよう依頼する。
道具を作成依頼するという形で接触をはかる。
その算段をつけて、リュウヤは退室した。