トモエとの話
「ひと息入れよう。」
リュウヤが提案する。
話し始めてからかなりの時間が経っている。少し休憩を入れた方が良いだろうとの判断である。
リュウヤ自身が疲れたということもある。
ここまで精神的にくる話になるとは思いもしなかったのだから。
ただ、休憩といってもドゥーマらはこの部屋から出ることはできない。彼らが帰着していることは秘密なのだ。
そのため、リュウヤはミーティアとアルテアを呼び、ウィラへの伝言と食料と飲み物を持って来るように命じる。
また、リュウヤはいったん席を外すと執務室へと戻る。
フェミリンスに状況説明と、改めて後事を託すためだ。
そしてもうひとつ。
こちらがとても気が重い。サクヤの兄、シズカの婚約者だった者の話を確認しなければならない。
誰に確認するか?
サクヤとシズカふたりのことを良く知っており、尚且つドヴェルグたちのことも知っている人物。そんな者はひとりしかいない。
"トモエ、至急、執務室まで来てくれ。可能な限り、サクヤには内密に"
念話にてトモエを呼び出す。
サクヤ付きの者に、サクヤに内密にという無理難題をかろうじてクリアして、トモエが執務室に姿を現わす。
「陛下、サクヤ様に内密とは如何様な用向きでございましょうか?」
トモエの言葉にはトゲがある。特に"サクヤに内密"というところに。
"内密ということは、夜伽でもさせようというのか"
そんな解釈も成り立つのだ。そして、トモエは明らかにそう捉えていた。
だが、トモエのそんな内心はリュウヤの次の言葉で吹き飛ぶ。
「サクヤの兄、シズカの婚約者のことを知っているか?」
「む、無論、知っております。」
「これから話すことは内密のことだ。」
そう言ってから一言、
「ダグとギドゥンが、森の外周部の集落にいる。」
リュウヤの言葉の意味を理解するのに、トモエは長い時間を要した。
「・・・・・・、あの・・・、ふたりが!!」
理解したトモエの言葉には、多分に怒りの要素が込められている。
「落ち着け!」
リュウヤの一喝で、トモエは冷静さを取り戻す。
「申し訳ありません。」
謝罪こそしているが、怒りは隠せてはいない。
「ですが、そのふたりがいることは確かなのでしょうか?」
それに、リュウヤはあのふたりを知らないはず。
「目撃した者がいる。そして、俺に報告をしてきた。」
ここで、ドゥーマらが先行して帰着していることを教える。そして、彼らから話を聞いたことを。
「お前の様子を見ると、まだ誰にも話はできんな。」
「はい。それが無難かと。」
それだけではない。集落からくるドヴェルグの情報の遮断をしなければならない。
「トモエ、エストレイシアのところに行って、集落にいるドヴェルグの情報を遮断するよう伝えてくれ。」
「わかりました。この後、陛下は?」
「まだドゥーマたちから話を聞かないと、な。」
「私も同席したいところですが、避けた方が良いですね。」
私では秘密にできそうにありませんから、そう言って退室する。
リュウヤは大きくため息を吐くと、フェミリンスに後事を託し、ドゥーマらのいる部屋へと向かった。