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龍帝記  作者: 久万聖
164/463

過去 2

昨日は、間違って今日投稿予定を入れてしまった模様。

「ここからは、戻ってきた者たちからの伝聞になります。」


ドゥーマはそう断ってから、話し始める。


出て行った者はドヴェルグが100名ほどと、龍人族が30名ほどだったという。


彼らはまず南に向かい、その後、西に方向を転じたという。

それには理由があり、元々は西に直接向かう予定だったのだが、人間種至上主義を掲げる神聖帝国があるため、いったん南に向かい、その後に西に向かうことで避けるためだ。


それと、南にある都市国家群で、持ち出した自分たちの作品を売り、路銀を作る必要もあった。


その後、一年かけてこの大陸の西の果てに辿り着いた。

旅の途中では、修理・修繕や日雇い人夫などをする事で、路銀を節約。

中には、多くはないが途中の町で定着する者もいた。

途中で定着した者たちは、自分はここで稼げばいいからと、手持ちの路銀を仲間たちに渡していた。


大陸の西の果て。


そこは肥沃な、起伏の少ない大地が広がっており、まさに理想郷に見えた。

かつての、始源の龍の加護を受けていた故郷のように。


彼らは喜び、この地を開拓して集落を作り、定住のための準備を整えていった。

この地に辿り着いた者は、ドヴェルグ60名あまりと、龍人族20名あまり。

途中の町や村で定住した者ばかりではなく、野盗に襲われたり(やまい)倒れた者たちもいた。

その者たちのため墓地を作り、遺体の代わりに遺品を埋めた。

彼らの感じた幸福は、長くは続かなかった。







「何が起きた?」


「最初は、現地の者たちとの小さな(いさか)いだったようです。」


「その理由は?」


「商習慣の違い、そう聞いています。」


詳しいことを聞きたいが、その報告をした者は、帰国して間もなく亡くなったという。

帰国した時には、すでにボロボロになっており、衰弱が激しかったというから、故郷に帰り報告した安堵感から力尽きたのかもしれない。


「ただわかっているのは、どうもダグの側が悪かったようです。」


そして、非常に些細なことでもあったので、一言でも謝罪をしていれば後の悲劇は免れただろうと、報告者は語っていたという。


「現地の者たちを見下していたか、ダグとやらのプライドが高すぎたか・・・」


「たしかに、ダグはプライドの高い男でした。」


ドゥーマが言うと、周りのドヴェルグたちも苦笑しながら同意した。


小さな諍いが、その対応を間違えたために大きな騒動になり、やがて手に負えない暴動へと発展する。

破滅へのありふれた話だ。

そう、ありふれた話。

あちらの世界でも掃いて捨てるほどの。

日本を例にとるならば、江戸時代に起きた百姓一揆などは、初手の打ち間違いから発生したものがほとんどだ。


相手に舐められまいとした態度が、誤解を招いたというところか。


「小さな諍いを、地元の有力者が仲介して治めようとして出てきたが、ダグたちはその仲介を拒否した・・・、そんなところか。」


皆が頷く。


仲介を拒否した結果、地元住民対ドヴェルグ・龍人族という構図が出来上がってしまう。

こうなってしまうと、収拾をつけるのは難しい。

やがて小競り合いが発生し、全面的な対決へと発展。

現地の有力者の仲介を拒否した以上、公正な対応など望むべくもない。

現地の有力者か統治者か。武力介入を招いてしまったことだろう。

有力者か統治者、彼らがどちらを味方するかなどわかりきったことだ。


そして、ドヴェルグ・龍人族のとっての惨劇が始まる。

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