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龍帝記  作者: 久万聖
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ダグとギドゥン

ドヴェルグたちは、森の外周部の集落に宿をとる。


彼らは一階の食堂で夕食を摂りながら、


「本当にここは、"始源の龍の住まう地"なのか?」


彼らが知るこの地は、荒涼としたオアシスが点在する土地だった。

それが今は、緑豊かな森に覆われた地に変貌している。

森の周囲も、あの小麦畑を見るに実り豊かな土地となっているようだ。


「始源の龍が復活したというのは、本当みたいだな。」


「どうする、ギドゥン?」


ギドゥンと呼ばれたドヴェルグは、腕組みをしたまま何も答えない。

しばらくして、


「後続の者たちが来るまでに、情報を集めよう。」


あとは、後続の者たちが来てから話し合うしかないだろう。

そう結論づける。

他の者たちも、それ以外にできることはないことを理解している。

方針が定まると、彼らは夕食をたいらげて、それぞれがあてがわれた部屋へと入っていった。




同じ頃、リュウヤはサクヤと夕食をともにしていた。

今日は珍しく、ふたりだけである。

これはサクヤの方からの申し入れで、普段であればトモエやシズカは確実に参加していたし、最近ではアイニッキも参加している。


「それに立ち入ることは、俺にはできないな。」


ギイとアイニッキのふたりの息子のことを聞かされた、リュウヤの反応である。


まず、リュウヤはそのふたりを知らない。

そして、ふたりが出て行ったのが、自分がこの世界に来る遥か昔であることも、関係している。


出て行った者たちを受け入れられるかと問われれば、リュウヤとしては受け入れるのも(やぶさ)かではない。

だが、ドヴェルグや龍人族の中には拒否する者が居てもおかしくはない。


当時、サクヤはリュウネと同じくらいの年頃だったそうだから、受け入れることに抵抗はないかもしれないが、サクヤよりも上の世代の者たちはどうだろうか?

例えばトモエやシズカのふたりは。

この場にふたりが居ないということが、全てを示しているようにも見えるのだが、サクヤはどう感じているだろう?


そして、リュウヤが立ち入れられない最大の理由が、リュウヤ自身が親子の情というものが薄い環境で育っていることだ。


母親は自分を捨てて駆け落ちし、父親はその事実を受け入れられず、多額の借金とリュウヤを残してあの世とやらに旅立った。

そんな親子の情の薄い環境にいた自分が、ギイとアイニッキと、その息子たちの関係に立ち入ることができるとは、到底思えない。


「ふたりのことは気に留めておくが、仲介はできないだろう。」


仲介はできない、その部分に、サクヤは不満を感じたかもしれないが、変に期待を持たせるよりはマシだと思う。


「わかりました。あと、ふたりの名前ですが・・・」


長男はダグ、次男がギドゥンと伝えられた。




リュウヤにとって、一番苦手なものが「親子の情」であり「家族問題」だったりします。


あちらの世界において、リュウヤが一番求めながら、ついには得ることができなかったものですから。

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