表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍帝記  作者: 久万聖
147/463

獣人族の会議

 少しだけ時を遡る。


 リュウヤらより早く国都ボースに戻った五部族長は、その感想を述べ合っていた。


「あれは一体、何者なんだ?」


 言葉の主は獅人族族長リュシオン。獅子の頭と尾を持ち、戦闘能力は極めて高い。そして、獅人族の眼は相手の力量を見抜くという。だが、その眼を持ってしても、あのリュウヤという男の底が見えない。


「こんなことは初めてだ。」


 あの場に居た、七人の部族長全員でかかっても勝てない。それがリュシオンの見立てだが、そんな者が存在すること自体が、初めてなのだ。


「まったくだ。思い出しただけで怖気だってくるよ。」


 この世代で、唯一の女性部族長である猫人族シェリエが袖を捲り上げながら言う。顕になった腕は、鳥肌が立っている。

 一目でわかる猫の耳と、その瞳が特徴的な種族であり、男女問わず美形が多い猫人族だが、その戦闘能力は侮れない。

 特に暗闇での戦闘や隠密行動は非常に高い。


「戦ってはならぬ相手、か。」


 虎人族族長ガルフが呟く。


 鋭い目付きと、なによりも黒と黄色の縞模様のある体毛は、虎人族の特徴だ。


 身軽さと隠密行動は猫人族に譲るが、夜襲を得意とし、その戦闘能力は獅人族にひけをとらない。


「ワルド、お前なら戦う術を見つけたんじゃないのか?」


 ガルフから話を振られたのは、狼人族族長ワルド。


 その耳と尻尾に特徴がある種族だ。


 彼らは集団戦闘を得意とし、その連携しての戦闘能力は凄まじく、敵が同数ならば圧勝。倍に達するなら勝利をおさめるという。


「無理だな。考えるには考えたが、力の底が見えない。特に、蜘蛛使いが使役する蜘蛛を力でねじ伏せたとあっては、な。」


 しかも、同時に四体。


 一斉に襲いかかっても、単純な力で振りほどかれる。


「グリフ、あんたにできるかい?」


 熊人族は、その怪力で知られる。


「無理だな。奥の手を使って、ようやく一体ならってところだ。」


「なるほどな。そう考えると、あの蜘蛛使(ナスチャ)いは、勇敢だったのかただの馬鹿だったのか、どちらなのだろうな。」


「馬鹿だったんでしょう。」


 シェリエの身もふたもない言葉。


 ナスチャから話を聞いたラニャの報告では、使役しているはずの蜘蛛が止めたにもかかわらず戦い、惨敗しただけでなく止めた蜘蛛の離反まで招いたという。


 それを馬鹿と言わずしてなんと言えばいいのか?


「戦いを避けるなら、方針はふたつ。庇護下に入る、言ってしまえば属国になるか、同盟を結ぶか。」


 ワルドの言葉。


「属国、ねえ?」


 そんなの真っ平御免と言わんばかりの口ぶりだ。


「属国なんかになったら、やりたいようにやれなくなっちまう。」


 偽悪的な表現をするのが、ガルフ。


「ならば同盟を結ぶ、それでいいのだな?」


 グリフがまとめにかかる。


 昨夜のリュウヤの話ぶりでは、交易をしたいようだった。それならば、同盟を結ぶことは十分に可能だろう。


「かまわない。」


 リュシオンの言葉に、他の族長が頷く。


 獣人族の方針は定まった。


 龍王国(シヴァ)とは同盟を結び、交易を行い結びつきを強化する。


 そしてもうひとつ。


 移住、いや、避難場所として確保したい。

 それをどうやって認めさせるか・・・。


 その議論に移っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ