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龍帝記  作者: 久万聖
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獣人族との会談

 ナスチャとラニャが戻ってきたのは、1時間くらい経ってからだった。


 そして、二人について来た大柄な男。


 180センチ超えのリュウヤをみおろすほどの長身と、それに見合う体格。


 それはまるで巨人を思わせる。


「熊人族の族長、グリフだ。」


 なるほど。熊と言われれば納得できる。特徴的な耳と、その毛深さくらいしか、見た目ではわからないが。


「そして、いまは獣人族族長会議のまとめ役をしている。」


 "しているというよりも、やらされてるってのが本当のところだがな"と、豪快に笑う。


「たしかに、人が良さそうだからな。面倒ごとは、全て任せたくなる。」


「初対面でも、そう言われるのか。」


 グリフは再び豪快に笑う。ひとしきり笑った後、真面目な顔つきに変わる。


「強いな、あんた。」


 サクヤとフェミリンスを見て、


「そこのふたりのお嬢さんも相当だが、あんたは別格だ。お嬢さん方が強者なら、あんたは絶対的強者だな。」


 リュウヤはニヤリと笑い、グリフもまた同様に笑う。


「俺たち獣人族は、あんたたちを歓迎するぜ。」


 そう言って手を差し出し、リュウヤがその手を握った。





 熊人族族長であるグリフの屋敷に案内される。


「本来なら、もてなしの宴を開くところだが、時間がなくてな。」


 突然のリュウヤ一行の訪問であり、しかも夕刻。


 とても宴の準備はできない。


 そのため、グリフの屋敷での小規模の宴が催され、他の6種族の族長も集まる。


 それぞれ挨拶を済ませると、酒宴がはじまる。


 ただ、純粋にそれを楽しめるのは、リュウヤとサクヤ、フェミリンス、ミーティア以外の者たち。


 リュウヤたちはグリフら獣人族族長と、酒を酌み交わしつつ翌日のための下交渉を行う。


 酒が入った方が互いに本音で話せる、とはグリフの言葉だが、たしかにその通りかもしれない。あくまでも獣人族相手には。


 虚飾を廃したやりとりは、互いに大きな実りがあるものとなった。




 宴の後、リュウヤはサクヤとフェミリンス、ミーティアらと、ここで得た情報をまとめていく。


 箇条書きにすると、


 今いる場所は、いわば関所のようなもので、かつてアカギらと遭遇して戦闘になった教訓から、むやみに森に入らないようにするために作られた。


 今回、族長達が集まっていたのは、蟲使い一族が戦闘行為を行っているという情報を得たため、その対応を間違えないようにするのが目的だった。


 獣人族は、同族であるはずの人間に迫害された蟲使い一族を匿っていたことがある。


 蟲使い一族は、蟲により良い環境を与えるために森に入った。


 獣人族の国は、その西方にて国境を接している「神聖帝国」なる国と交戦中であり、やや不利な状況にある。



 これらが、ここで得た情報になる。


「蟲使い一族が離脱した後も、良好な関係にあるようです。」


 蜂蜜や、森で取れた木の実、動物の肉や毛皮を取引していたという。


「互いに人間による迫害を受けた仲間、そんな意識があるのかもしれないな。」


 だが、一番気になるのは「神聖帝国」なる国のことだ。


 人間至上主義とでもいうべき教義の至高神ヴィレを崇拝する国。そのため、各種族と交戦している。


「北方の"白の教団"に似たものを感じるな。」


 あれも、自分たち以外は邪教としていた。


 龍王国(シヴァ)も、人間以外の種族が多い。敵対することも考えるべきだろう。


 だが、そうは言っても建国期にある龍王国としては、すぐに戦うことは避けたい。そう考えると、獣人族の国と同盟を結ぶべきだろう。


 そして、それを獣人族も望んでいる。


「方針は決定だな。」


「獣人族との同盟、ですね。」


「そうだ。獣人族と同盟を結ぶ。そして、神聖帝国の情報収集もする必要がある。」


「それは、デックアールヴたちに?」


「すでに、情報収集をしているかもしれないがな。」


 そう結論を出すと、各自退出する。


 明日、さらに西に向かい、獣人族の国都ボースにて、改めて族長との会談を行う。


 旅の延長をすることになりそうだと、そう呟き眠りについた。

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