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龍帝記  作者: 久万聖
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族長

「言っただろう、野性の勘は信じた方がいいって。」


 リュウヤは蜘蛛使いに声をかける。


 リュウヤの言葉に、蜘蛛使いは歯軋りの音を立てる。


 蜂使い、蟻使いのふたりがこうも簡単に負けるとは、想像の外だった。


「まだ、戦うつもりか?」


「当たり前だ!」


 ならば仕方がない。力の差を見せつけて、その心を折るしか無さそうだ。


 リュウヤはそう判断すると、蜘蛛たちに放っていた威圧を解除する。


「お前たち、アイツを殺れ!」


 リュウヤの威圧から解き放たれた蜘蛛たちが一斉に襲いかかる。


 左右から四本の糸が飛んでくる。それにより、ナゲナワグモに似た種が四匹いることを確認する。


 跳躍(ジャンプ)する事で四本の糸を躱し、木と木の間に貼られている蜘蛛の巣の上に立つ。


「馬鹿め、自分から蜘蛛の巣の上に立つとは。」


 チャンスとばかりに、その蜘蛛の巣の主に攻撃を命じる。蜘蛛の糸の粘着力にとらわれた、そう思っていたのかもしれない。


 蜘蛛の巣の主たる3メートル超えの蜘蛛の攻撃してを躱し、その上に立つ。


「なぜ動ける!」


 その言葉にリュウヤは呆れ返る。今日、呆れるのは何度目だろう?そんなことを考えながらも、この巣の主に電撃を放ち、気絶させる。


「蜘蛛の巣の糸、縦糸には粘着力が無いなんて常識だと思ってたんだけどな。」


 縦糸には粘着力が無い、それが常識なのはかつていた世界の話であり、この世界の常識では無い。だが、蜘蛛を使役しているのなら、それくらいのことは知っていると思っていたのである。


「興醒めだな。お前たちにとって蟲とは、ただの道具でしかないとは。」


 その習性を知らず、知ろうともせず、ただ使役するための道具。そして、その蟲の力を自分の力だと思い込んでいる、傲慢な愚者。


「死ね!」


 今まであえて対象外としていた、蜘蛛使いへの殺気を解き放つ。


 膨大な殺気に、蜘蛛使いが震えだす。


 樹上の蜘蛛の巣からリュウヤが飛び降りる。


 そのリュウヤに蜘蛛の糸が投げられる。巨大ナゲナワグモ(仮)から一斉に投げられたものだ。それが左右の腕に二本ずつ絡まる。


「よし、そいつを引き裂け!!」


 優勢になったと勘違いした蜘蛛使いが命じる。が、その命令が達せられることは無かった。リュウヤが腕を振るうと、四匹の蜘蛛が吹き飛ばされたのだ。


「あり得ない・・・。」


 そう、本来ならあり得ないことだ。蜘蛛の力は、人間と同じサイズにした場合、人間の数十倍以上になり、引き回されることはあっても振り回すなどということは無い。


「お前・・・、人間なのか・・・?」


「なんだ、人間に見えていたのか?」


 巨大ナゲナワグモを振り回して、戦闘不能にしたリュウヤが、悠然と蜘蛛使いへ向けて歩を進める。


 迫り来る確実な死の気配に蜘蛛使いは戦慄する。


 支配下においているはずの残りの五匹の蜘蛛も、リュウヤの圧倒的な死の気配の前に、動けずにいる。


「死ね。」


 腰の剣を抜くと、蜘蛛使いの首に振りおろす。


 金属音に似た音がして、リュウヤの振りおろす剣が防がれる。


 そこにいたのは巨大な蟷螂(かまきり)。そして、蜘蛛使いの後ろに老人が姿を現わす。


「やっと出てきたか。」


 好好爺然とした老人。


「私の孫娘が失礼いたしました、龍王国(シヴァ)の王。」


 老人は蟷螂を退かせると、リュウヤに一礼する。


「私は蟲使い一族の族長、アーグと申します。」



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