表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍帝記  作者: 久万聖
132/463

不審な人物

 湖の西岸に、物資の集積基地が急ピッチで建設され、食料をはじめとする物資と、人員が集合している。探索期間は、10日の予定。


 この集積基地、今回はあくまでも探索隊用のものだが、探索後には本格的なものとして整備されることが決定している。


 その集積基地へ渡る前日、リュウヤはギイの妻アイニッキを訪ねていた。


「あら、リュウヤさんどうされたのかしら?」


 アイニッキは、微笑を浮かべてリュウヤを迎える。


 迎えいれられた部屋には、トモエとシズカも居る。


「ふたりと同じ要件、でいいのかしら?」


 リュウヤは頷く。そうトモエとシズカ、ふたりにここに来るように"念話"にて指示を出していたのだ。


「貴女に頼みたいことがあって来た。ふたりにも協力してもらいたい。」


「サクヤちゃんのことね?」


「はい。」


 リュウヤは協力してもらいたいことの内容を、アイニッキに話始める。






☆ ☆ ☆







「私にそれが務まるかしら?」


「補佐は、私とシズカが行います。ですから、是非ともお力添えを。」


 リュウヤの提案にトモエが真っ先に乗り、シズカも同調するようにアイニッキに頭を下げる。


「そこまで言われたら、引き受けるしかないわね。」


 アイニッキはそう言って、リュウヤの依頼を引き受ける。


 それを見てリュウヤは感謝の意を述べて、退室した。


「サクヤちゃんも、随分と気を使わせちゃってるのね。」


 退室するリュウヤの背中を見ながら、アイニッキが呟いていた。





 出発当日。


 対岸の物資集積基地に向かう船団を見送る者たちの中に、アイニッキとその後ろに控えるトモエとシズカがいた。


「うまくいったかしら?」


「はい。船に乗るところまで確認しました。」


「リュウヤ陛下にも、念話にて連絡いたしました。」


 トモエ、シズカが報告する。


「後は、リュウヤさんに任せましょう。」


 岩山の王宮に戻り、いなくなったサクヤの代わりをしなければならない。


「ふたりとも、しばらくは苦労をかけると思うけど、よろしくね。」


「「はい。」」





 リュウヤは対岸の集積基地に着くと、用意された部屋へと入る。


 そこは、簡易的な会議室であり、今回の探索隊の主だったメンバーがリュウヤの到着を待っていた。


 リュウヤの側近として宮廷魔術師ヴィティージェと秘書官ミーティア。親衛隊からタカオら5名。


 この地へも巡視をしていた経験のある龍人族のヒサメとオボロ。かつての班長クラスを随行させることに反対意見もあったのだが、エストレイシアが押し切った。


 リョースアールヴから7名。フェミリンスがその中に入ったことに、周囲は驚いていた。


 デックアールヴから5名。スティールが中心となる。


 ドワーフからアリギバを中心に10名。彼らは測量を行うことも求められており、探索後はこの地に留まり、開発計画を立案する。


 今回の探索隊で最大数になるのが、森の人とも呼ばれるエルフたち20名。ギュルヴィが中心となる。また、彼らエルフは、探索後にはドワーフと協力して開発計画を立案するだけでなく、地図の作成という大任を任されている。


 そして、人間族が15名。パドヴァの元貴族の子、コジモが中心となるのだが、コジモはまだ15歳であるため、補佐としてヴィティージェの弟子ベニードがつけられている。

 今回の探索隊に、ドヴェルグたちは参加していない。


 また、他にも補給隊として100名ほどが集積基地に詰めている。


 リュウヤが着席するのを待って、皆が着席する。


「目的は皆、理解していると思うが、改めて確認する。」


 それぞれに印刷された計画書が配られており、皆が改めて確認する。


「質問はありますかな?」


 進行役を務めるヴィティージェが確認する。


「相手が敵対しなければ、受け入れるということでしょうか?」


 ギュルヴィの発言。それにリュウヤが返答する。


「そうだ。相手が敵対行動を取らぬかぎり、こちらからは手を出さない。」


「相手が死んでいる可能性は?」


 コジモの問い。


「その可能性は、もちろんあるだろうな。だが、今回は生きていることを前提として行動する。」


「そうそう出会えますかな?」


 アリギバの言葉。森の一部、西方とはいうもののその面積は広大であり、出会えない可能性がある。


「その心配は不要だろうな。」


 リュウヤは左手に乗っかっているデス・スパイダーの幼生を撫でながら続ける。


「優秀な道案内がいるからな。」


「まさか、その道案内というのは・・・。」


「そう、デス・スパイダーだ。」


 そこでリュウヤは皆を見る。


「気づいてなかったのか?この基地を囲むように、少なくとも10匹はいるぞ。そのうちの1匹は、俺の研究施設にいたデカイ奴だ。」


 リュウヤのその言葉に一番大きな反応をしたのは、エルフたちだった。ともすれば、恐慌状態になりかねないのをリュウヤが一喝する。


「落ち着け!敵意があるなら、とっくに攻撃してきておるわ!」


 そして、次に大きな反応をしたのは、左手に乗っかっているデス・スパイダーだった。


「気づいてたの?」


 とでも言うように、リュウヤを見上げている。


「呼ばなくていいぞ。呼んだら、パニックになるからな。」


 デス・スパイダーの疑問を肯定する。


「質問はもう無いようだな。出発は明日、早朝だ。しっかりと備えておけ。」


 リュウヤの言葉が、解散の合図となる。



 会議室から皆が去ると、アルテアがリュウヤのもとに来る。

 リュウヤは、戦闘能力の無いアルテアを連れて来る気はなかったのだが、本人の強い希望から同行を認めた。

 そのアルテアが、リュウヤに言いづらそうにしている。


「不審な人物が見つかったのですが・・・。」


「不審な人物?」


「はい。」


「身元は確認したのか?」


「確認したのですが、それが、その・・・。」


 アルテアは、一層言いづらそうになっている。


「わかった。その者のところに案内せよ。」


「は、はい。」


 アルテアに案内された部屋にいたのは・・・。



 サクヤだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ