グィード
龍王国に到着した翌日より、アデライードは精力的に行動している。
スイウからも報告を受けているが、それはリュウヤが呆れるほどの行動力を発揮している。
時折見かける姿はとても活き活きとしており、まさに"水を得た魚"のようである。
「どんな報告書が出てくるか、楽しみだな。」
リュウヤは呟くと執務室へと戻り、グィードを待つ。
エストレイシアから、「最近精彩を欠いている」と報告を受けたため、執務室に来るように伝えている。理由は想像がついている。
扉をノックする音がする。
ミーティアが確認する。
「グィード様が参られました。」
中に入れるように伝えると、グィードが入ってくる。
向かいの椅子に座るよう促す。
「最近、精彩を欠いていると報告があったが、何かあったのか?」
「そのようなことは・・・」
「ない、と?」
リュウヤの問いに、言葉が詰まる。
「不満か、使節団に選ばれなかったことが。」
さらりと、リュウヤは巨石を投じる。
知っていた。グィードは使節団に参加したがっていたことを。そして、それを知っていてあえて外したのだ。いくつかの理由をもとに。
「使節団に参加したとして、お前は何をしたかったのだ?」
「それは、ユリウス殿下の補佐を。」
「補佐をしてどうする?」
「助言や、会うべき人物を・・・」
「会うべき人物を、お前が決めるのか?」
「はい。」
しばしの沈黙の後、
「お前は、ユリウスを傀儡とするつもりなのか?俺には、そうとしか見えないのだが?」
リュウヤの言葉に、グィードは絶句する。
グィードにはそんな気はさらさらない。
だから余計に、リュウヤの言葉に絶句してしまう。
「お前がべったりとユリウスについている、そのことが周囲にどう見られるのか、考えたことが無かったのか?」
自分はパドヴァのためにしている、その信念のもとに行動しており、他者もそのように評価していると、勝手に思っていた。
「視野が狭くなっているのではないか?」
そう言われると、そうかもしれない。
「グィード、お前には明日よりパドヴァへ行ってもらう。」
驚いた顔をするグィードに、リュウヤは言葉を続ける。
「お前が考えていたパドヴァに必要ことと、現実にパドヴァが必要としていること。そのすり合わせをしてくるといい。ピエトロにはすでに伝えている。」
「わかりました。」
そこまでお膳立てされていては、断ることもできない。
数人の者を連れてパドヴァへ行くこととなった。