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龍帝記  作者: 久万聖
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謀略は淑女の嗜み

今までの投稿分の修正をしました。

 デュラスがアデライードより、今回の計画を聞かされたのは今日の午後になってからだった。


 その内容を聞いて唖然とさせられたが、その計画に基づく準備を急速に整える。


 オータン伯爵邸急襲部隊と、王宮防衛部隊に分ける。


 また、急襲部隊はその後、王宮外に待機。叛乱軍が王宮に迫ったとき、内外から挟撃する。王宮防衛部隊は自ら指揮するとして、急襲部隊の人選を進める。


 この人選、能力よりも人間性を重視する。部隊外に漏洩させては計画が台無しになってしまう。


 そうやって編成された急襲部隊が、オータン伯爵邸急襲を成功させた。オータン伯爵は捕縛。他にも数名のラムジー四世派貴族を捕縛する。


 そして、オータン伯爵邸から脱出に成功したラムジー四世派貴族たち。彼らは私兵を率いて王宮へと進軍する。


 その私兵の内情を後に知ったデュラスは、呆れ返ることになるのだが、この時点で内情を知ることはない。ただひとり、アデライード以外は。



 ラムジー四世派貴族軍の内情。


 決行を明日の早朝と定めていたにもかかわらず、成功の前祝いと称して酒を振る舞っていた。


 この報告を受けたアデライードは、さすがに苦笑したという。


 酒に酔った私兵集団がまともな行軍などできるわけもなく、隊列は無茶苦茶。隠密行動が必要であるにも関わらず、大声で叫ぶ。千鳥足になっている者もいるために、迅速な行動がとれない。


 アデライードがラムジー四世派に対して行ったこと。


 それは、


「ラムジー四世陛下をお救いし、復権させるのは正義の行動です。是非とも協力させていただきたい。」


 豪商である生家の繋がりを活用して、気心の知れた商人を送り込んで煽ったこと。酒の差し入れをさせたのも、その商人繋がりで行わせたのだ。


 自分の想像以上にうまく行き過ぎて、呆れるくらいだ。


 オータン伯爵邸で、今、蜂起するしかない、そう煽らせたのも、もちろんアデライードの手によるものだ。


「馬鹿の周りには、馬鹿しかいなかった。そういうことかしらね。」


 ラムジー四世という馬鹿王には、それに相応しい馬鹿貴族しか集まらなかった。


「まったく、ラテール五世はどこに目をつけてたのかしら?」


 彼女の辛辣な呟きは、自らの父にも及ぶ。


 名君の誉れ高いラテール五世だが、アデライードの評価は異なる。


 無能なラムジー四世を後継にしたことだけでも、大きなマイナス評価だが、名君と呼ばれるラテール五世が何をしたのか?


 たしかに領土は守り、その威を周辺国に示したかもしれない。だが、国内はどうか?


 産業振興をしたわけでもなく、農地を広げたわけではない。国が栄えたのは、ラテール五世の治世が良かったのではなく、国民の努力の結果でしかない。


 彼の王が行ったのはただ、倹約を押し付けて国庫を潤しただけでしかない。


 そして、彼女にとって問題なのは、次期国王ウリエは聡明ではあるが、守旧派の域を超えないことだ。


 それでは自分の才覚を発揮できない。


 だからこそまだ見ぬ彼の国の王に期待する。


 だがそれも、この馬鹿げた騒乱を鎮めてからのことだ。報告を受ければウリエは、さぞや必死になって売り込んでくれるだろう。自分では御すことのできぬ姉を。


 彼女はデュラスを呼ぶと、叛乱軍の情報を伝える。


 デュラスが功を立てること。それは自分の明るい未来を確かなものにするのと同義。


 アデライードは、自らを縛る王族という鎖を断つべく、謀略を巡らすのだった。


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